異端邪説⑦
竜族が動き出す。何の為に?知れたこと、数が増えすぎてる竜国だけでは手狭になったからだ。そこで目を付けたのが人間族の国。広く美しい。そして未開の地が多い。正しくは、人間では拓けぬ大地がほとんど。人には不向きな美しすぎる奇跡の星。
「目的は違えど、手段は同じみてぇだな。気が合いそうじゃねぇか、ドラゴン共と。」
「もぅ・・・呑気なこと言わないの。」
「ところで、あのジジィは何しに来たんだ?ローグに挨拶したかったらしいが―」
「お、俺に?どうしよう・・・お茶菓子あったかなぁ。」
「ローグまでそんなこと・・・そんな訳ないでしょう。人間界を戦場にはできない。だからさっさと竜国へ乗り込めと言いにきたのよ。それと、稽古でもつけにきたのかもね。」
「ああ、確かそんなことほざいていたな。何者だ、ギードというのは。」
「ロアンヌ―私の故郷の元村長よ。私がまだ小さかった頃の法術の先生。私を竜国へ連れて行ったのもギード、竜族の侵攻を防ぐ結界を人間界に張ったのもギード、姿を変えて私にバレないように変装していた私の育ての親。ついでに言えば、大昔、魔導士ひとりで魔王軍を壊滅させた人よ。」
その通り。どっちが化物か分からなかった。悪魔か死神かと思ったよ。そして奴の張った30年前の結界を竜族がいまだに破れないのだから。とはいえ、とうとうその結界が剥がれかけている。
「だから俺達にどうにかしろと、と。勝手なもんだ。」
「ラスボスみたいのがぞろぞろいるとなると、ちょっと厳しいな~。一匹でもあの調子だし。」
「その辺りも含めてギードに話を訊きましょう。無策でどうにかしろという人ではないわ。さ、ガイア。回復するわよ。」
「強かったぞ、あのジジィ。」
「そうでしょうね。今でも5分以内なら世界一の魔導士よ。」
ギードの言ったことに嘘はなかった。
「やれやれ・・・・・・覚えてやがれ。」
柔和な表情で復讐を誓うガイア。その後は素直に治癒を受けていた。
その翌日も翌々日もギードは現れなかった。退屈というよりも寂しそうなガイア。その間2組のパーティーが魔王城に挑んだが、ガイアはいつもみたいに遊んだり様子見することもなく、あっさりと決着をつけて送り返してしまった。少々可哀相ではあるが、これが現実。用なし、興味なし、眼中になし。中ボスの働きとしては言うことなし。そして3日目、ようやくギードが再び姿を見せた。まるで待ち焦がれた恋人を迎えるみたいに立ち上がり、歩み寄るガイア。近付きながらにんまり笑うのだから、ギードも薄気味悪く感じたことだろう。
「おう、待ってたぜ。稽古、つけてくれよ。」
実に嬉しそうなガイア。素直かつ純粋に強さを追い求める姿勢や良し。ギードが応えぬはずがない。
「構わんよ。ただその前に、魔王殿に挨拶させてもらおうかの。」
対してガイア。俺を倒してから行きな、とでも言って通せんぼするかと思ったが、世の中ギブアンドテイクということは承知しているらしい。快く道を開けた。
その日はローグも起きていたから、ギードの気配を即座に察知した。下の階まで迎えに降りたのはティナで、ローグは食堂にて座して待つ。緊張の面持ちで、お茶も用意して(なお、茶菓子はなかった模様)。もちろん骸の仮面など部屋に置いていきた。
トントンと扉がノックされ、外からティナが戸を開けた。通されたギードは片手を挙げながらローグの方へ歩いていく。
「お邪魔するぞぃ、魔王殿。」
ローグは立ち上がり、軽く会釈した。現在ローグのジョブは人魔融合ノヒトではなく、魔王。魔王たる者、魔族である必要はない。竜族でも人間族でも、資格を有する者なら転職可能。資格―そんなものは簡単で、魔王から後継者とみなされること、もしくは魔王を倒すこと。また第三の条件としては、転職の司祭に認められること。ラスボス戦の後、転職の館を訪れたローグは魔王への転職を希望した。その際にギードが提示した条件―




