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異端邪説➅




 「ガイア!!」

ローグとティナが闘技場に駆け付けた。そのど真ん中でガイアが仰向け。大の字で転がっていた。


 重たそうに大剣を振り下ろしたガイア。無論、剣が重いのではなく、ゴムボールの抵抗。それでもどうにか振り切ったガイアの大剣が、ギードの正面の光の球を十程砕き散らした。

「どうにか面が拝めたぜ。」

ゼェーゼェー言いながら道を拓いたガイア。

「ふむ・・・ちと用事を思い出した。また次の機会にな・・・」

そう言ってくるりと振り返ると、静止を保っていたゴムボールが大暴れを始めた。おい待てと左腕を伸ばすガイアを遮るように闘技場の上で、下で、横で・・・壁にぶつかっては跳ね返り、天井にぶつかっては跳ね返り、床にぶつかっても跳ね返る。ガイアを狙っているのではなく、ギードの退出を邪魔させない時間稼ぎに見えた。それでも、容赦なくガイアにダメージを与え続けた。


 「いったい何が・・・勇者は?2階か?」

完全に混乱状態の魔王と、闘技場の崩壊具合から客人の顔までは推理できたティナ。

「ギードが来たのね。」

「ああ・・・・・・」

むくりと上半身を起こすガイア。

「ギード?」

ローグの混乱は増すばかり。

「上へ戻るぞ。お前ぇから色々と話を訊かなきゃならねぇようだ。」

「分かったから動かないで。回復魔法を―」

「いや、しばらくこのままでいい。このままにしておいてくれ・・・」

身体よりもプライドがズタボロだろうて。意地を張らずに『黒の壁』を自分に回せばよかったのだ。白魔女と魔導装置は無傷。手を出すなと言った手前、身の安全まで面倒を見たつもりだろうか、白魔女なんかは随分と感情が高ぶっていた。ガイアを仲間として認めたようだ。よほど人間よりも人間らしい。いや、ガイアの行動に触発されたと、そういう事にしておきたい。




 ギードの名を知っていた者、今し方知った者、全くもってちんぷんかんぷんな者。そんな3人が食堂の席に座った。魔王はほぼほぼ訊いているだけ。ガイアが問い、ティナが答える形式で話は進んでいった。

 大前提として、ギードは味方。無条件で全面的に魔王軍に加担して、というわけにはいかないが、少なくとも敵ではない。ガイアに稽古をと言ったのも、あながち(でたらめ)ではなかった。それどころか本心で、親切心だった。ギードの正体というか、職業(ジョブ)が天導士ということは間違いない。転職の館で勇者一行の手助けをしていることも、以前と変わりなし。そしてギード曰く、魔導士の頂点ということだが、法力、齢、殺めた数。どの項目をとっても上の者には違いない。

 そうそう、大事なことを忘れていた。ギードは前魔王に仕えた中ボスのひとり。ローグがガイアに説明した通り、中ボスは3人(匹)という決まりがある。ヴァグナードで言えばガイア、白魔女と魔導装置。先代は同族と骸、そしてギードを選んだ。その理由は、ギードを敵に回したくなかったから。配下に置いたというよりも手を組んだ。戦力として味方にできなくとも、敵対しなければいい。魔竜をもって、そう言わしめる実力者である。もしも50若ければ世界を思い通りに動かすことも可能だったかもしれないが、あまり自分から世の中をどうこうしようという性格ではない。

 もしもローグが起きていたら、ギードは魔王に何を話すつもりだったのか。何をするつもりだったのか。経験値の浅い勇者共では歯が立たないとみて、代わりに魔王を倒しにきたか。人間界への干渉を控えるよう交渉に来たか。それとも暇潰しに本当に挨拶に来ただけか。その答えはティナが知っていた。


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