掌中の珠4
その後の探索は情けないかな、スライムの引率によって順調に進展し、やがて最奥部へ到着した。目の前には道中よりも光り輝く宝箱。十中八九、魔法の鍵が入っている。やっとこさ目的の場所に辿り着いた訳なのだが、当然お約束が待っていた。お宝前の中ボス戦。ガイア鍵を手にした瞬間、背後に気配が現れた。唐突なイベントではあるものの、皆くるだろうと予感はあったはずだ。特に驚いた様子もなく堂々と振り返った。
現れたのは骸骨剣士。どうやって埋まっていたのか、地面の中からボコボコと1体、2体・・・4、5、6。敵の数は思ったよりも多かったようだ。動揺とまではいかないが、3人の気配が引き締まった。武器を手にして警戒を強めた。どう打って出るか見物である。
やはり踏み出したのはローグ。彼が先陣を切るのはいつものこと。素速さが高く、攻撃力も申し分ない。切り込み隊長として凱切だ。不安材料を上げるとすれば、その速さを活かすべくやや軽装であること。ガイアの様に盾を持っているわけでもない。といっても、多少の傷ならば自身の回復魔法で治癒できていしまう。さて、6体の骸骨剣士を相手にどう立ち向かうのやら。ということで、いつもであれば素直に開戦なのだが、今回は邪魔が入った。迷いに迷ったストレスだろう、ガイアがのっそりとローグに並ぶのであった。
「俺も行くぞ。バラッバラにしてやる。」
暴力的な発言と表情が一致していない。
「随分と嬉しそうだね。」
「そう見えるか?」
「笑顔が眩しいくらいだ。」
「そいつはどうも。」
2人仲良く突っ込んでいった。
一方で残された一人と一匹なのだが、一匹の方はやることがない。できることがないと言った方が正確か。あの混戦に巻き込まれては、潰されて帰ってくるのがオチだろう。対してもう片方の居残りはというと、隣で魔法の詠唱を始めた。ぶつぶつと呪文を呟き発動の準備をするのだが、これまで訊いたことのない文言が並んでいるような気がする。毎度ティナの呪文に耳を傾けているわけではないから勘違いの可能性もあるが、はてさて。
前線のローグとガイアは注文通り、こちらに寄せつけぬよう骸骨共を引き付け、2対6で戦っていた。珍しくいい勝負をしている。普段であれば簡単に片づけてしまうのだが、さすがは中ボス。どうやら苦戦している模様。手を抜いて遊んでいるかは定かでないが、まだ2対6で戦っていた。危ない局面はないものの、打開する動きも見受けられない。お膳立てが整った。