異端邪説②
「ガイアには中ボス役を担ってもらう。」
そう前置きしたローグ。中には10体のモンスターが整列していた。全ては魔王様の為にと言わんばかりに大人しく、次の命令を待っているようだ。レベルとしてはラストダンジョンの中ボス相当。どいつもこいつもすこぶる強そうだ。もちろん実際に強いのだが(スライムなんてイチコロだ)。
「なるほど・・・な。それで俺の力試しってことかい。俺も舐められたもんだ・・・・・・いいぜ、全員まとめて―」
小声で呟きながらガイアが大剣の柄を握った所でローグが両手を振った。遭難者が助けを求めるように大袈裟に。
「ちょ、ストップ!ストッープ!!」
ティナは声を殺して笑っている。
「違う、違う、早とちりしないで。逆、逆!戦うんじゃなくて、一緒に戦う仲間を選ぶんだ。」
何匹かのモンスターは首を傾げていた。
汗だくローグの説明によると、中ボスの設置にもルールがあって、魔王城の中ボスの数は固定で3。多くても少なくても駄目。配置場所は自由で、登場のさせ方にも縛りはない。各階に配置してもいいし、城門前に構えさせてもいい。各場所に1体ずつ置いてもいいし、1ヶ所に3体まとめてもよい。ガイアの仕事場はここ、魔王城1階の大広間、通称闘技場。ここにやってくる勇者一行を返り討ちにしていくことが、ガイアに課された任務となる。
「要らねぇよ、ひとりで十分だ。」
「ルールなんだもん。決まりだからさ、2体選んでよ、お願いだからさ~。」
ごねる幹部に困り果てるボスといった構図がかれこれ10分間・・・くぁっとあくびをするモンスターも。そこで見かねたのか飽きたのか、ティナが救いの手を差し伸べた。
「もう~・・・仕方ないわね。いいわ、私が選んだげる。どれがいいかな~。」
「ちょ、おいっ、ちょっと待て。分かった、自分で、俺が決める!」
な訳で問題解決。渋々、ガイアが共闘するモンスターの選定を始めた。
魔王配下の最強クラスのモンスター達と言って差し支えあるまい。ローグは中ボスを階層ごとに配置するのではなく、一気に3体登場させるつもりらしい。つまりはガイアとモンスター2体を、この1階の闘技場に中ボスとして固定する。ガイアと共闘する中ボスを選ぶということでなかなかに重要な局面のはずなのだが、はてさてどうなることやら。ただ、ガイアがどんなに適当に選んでもハズレはないはずだ。
やれやれと頭を掻きながら、ゆっくりと闘技場を回り始めるガイア。とりあえずは選んでいる風に見えるが、ガイアにはモンスターに関する知識がない。外見の趣味で決めるしかない。1番攻撃力の高ぇ奴はとかHPの高ぇ奴はとか、ガイアも一言訊けばいいのだが。
闘技場にモンスターを召喚したローグはもちろん、ティナもここに並んでいる魔物達に関する知識を持っていた。ガイアが迷うに際して助言もできたはずだが、ローグもティナも見てるだけ。2人共にモンスターの特徴は熟知しているだろうに。そりゃ、下手に口出しすればうるせぇとか黙ってろなんて文句が飛んでくる可能性も考えられるが、うまいことやって特技やステータス等を伝えてやれば参考になっただろうて。黙って、2人並んでガイアの姿を目で追うだけだった。どれを選んでもガイアにとってマイナスとなることはない、それが沈黙の源だろうか。
トロルキング、ダークプリースト、ケルベロスナイト、ヒュドラ、鉄巨人、黒鬼、ドラゴンゾンビ、白魔女、死を司る者、魔道装置。以上10体。
話は少し飛んでティナのお仕事について。ティナの役職は言うなれば復興大臣。ヴァグナードの命によってモンスター軍団が襲撃を開始する。町や城の住居に限らず、橋や神殿、森、山、遊歩道等々。魔王からの指示はひとつ―派手にやれ、ただし誰ひとり殺すな。
モンスターにとって、人の命に興味はない。餌にならない生物に価値はない。それよりも欲望のまま、衝動に任せて暴れている方が本能に則していてずっと楽である。とはいえそれでも人にも被害は出る。モンスターを止めんと挑む者もいる。その手当、回復がティナの仕事。目立たぬようにそっと、さっと。また、バレないようにモンスター達に指示も出す。もう十分、引きなさいと。
世界各地で混乱の世を作り上げ、人間族の殺意のベクトルを全て魔王軍に向けさせること。これがヴァグナード魔王軍の第一手であった。




