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百年河清⑧

 ローグもガイアに並ぶ。2人共、ティナから一歩下がった位置。ガイアは盾の握りを確かめ、ローグも半身・居合の構えという奴か。ティナを力尽くで止めるのではなく、万が一の事態に備えていた。何より2人の目が殺気に満ちている。ドラゴンの目つきよりもよっぽど質が悪い。

 「ここはあなたの棲む世界ではないはず―」

「・・・・・・その魔王をこれから倒しに行きます―」

「・・・・・・私の転送魔法で送りましょう―」

「・・・ええ、竜神族の国には何度かお邪魔していますから。」

情けないことに野郎は目を丸くして、ぽかんと口を開けていることしかできなかった。ティナは人間族の言葉を喋っていたが、ダークドラゴンは獣の鳴き声。スライムに竜族の言葉は理解できない。しかし娘は滞ることなく会話を進め。男共があたふたまごまごしている内に転送魔法でドラゴンを消して見せた。

「ねっ。」

『ね』の意味は不明だが、ローグとガイアはパチパチと拍手で称えていた。


 2階へ上がりながら会話が弾む。

「ティナは竜族の言葉が喋れるんだね。」

「いいえ、喋れないわよ。」

「喋れねぇって、お前ぇドラゴンの奴と話してたじゃねぇかよ。」

「何となくよ、な・ん・と・な・く。私は人間の言葉しか喋っていなかったでしょう。」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ねっ。」

緊張感ゼロ。頼もしいを通り越して畏怖すら覚える。そして3人が3人共、何かを隠している(人のことは言えないが)。直前のティナに関してもそう。嘘はついていないが、うまく2人をかわしていた。ティナは竜族の言葉を訊くことができるようだが、本人の証言通り、話していたのは人間族の言葉のみ。それをダークドラゴンが理解していたのだろう。ちょっと頭を働かせれば推理できそうなことだが、2人は気付くまいて。であ、どうしてティナが竜族の言語を訊き取れるのかということだが―それを明かすのはもう少し後になりそうだ。


 「お、ラッキーじゃねぇか。ここからは魔王の所まで一直線みてぇだぞ。」

階段を昇りきると、1回と同じ構造の部屋が広がった。その奥には次の階段と、やはり待ち受ける中ボス。魔族が一匹立っていた。遠目からではその表情は読み取れないが、それでもようやく引き締まった。普通の組織であれば、緊張感がないととっくに(たしな)められていた。距離を縮めていくにつれ姿がはっきりしてくる。上下スーツで決めた骸骨。白と黒のコントラストがなかなか乙・・・なんて冗談交じりに考える余裕もなかった。我々の失敗は2つの思い込み。1つ目は、力試しがこちらの意図したタイミング、よ~いどんで始められるという先入観。2つ目は中ボスが1体、単騎だという勝手な妄想。決めつけは多くの場合、それなりの修正を伴う。此度(こたび)とて例外ではない。

 大部屋の中心から煙が上がる。城壁に擬態し、勇者達を囲うように待機していた二十数体、三十数体の骸骨共の攻撃は単発に非ず。これだけ周到な中ボスが攻撃を一発で終わらせるはずもない。煙に巻かれた標的に追撃の連撃が突き刺さる。威力よりも回転を優先し、次々と繋げられる砲撃は骸の臆病さを表すかのようにしばらく続いた。不意打ちと呼ぶにはあまりに計画的かつ慎重かつ手慣れている。敵さんからすれば、いつも通りの戦いの終わらせ方だったのだろう。幾つものパーティーを鎮めてきたのだろう。

 三者三様。ローグは埃を嫌うかのように口元から下をマントで覆い、ガイアは巨大な盾を地面に突き立て、ティナはロッドに光を灯して天井に向けていた。各々、白と黒と桃色を発光してパーティー全員を包んでいた(何色も発していないのは青色だけ)。煙が霧散した後の3人の姿は、中ボス連中に対して無傷であることと、レベルの差を見せつけた。

「いきなりだもんな~・・・」

「中途半端な攻撃しやがって・・・」

「ちょっと頭にきちゃった・・・」

感想から伺えるのは感想ではなく余裕。瞬時に状況を判断し、皆を守り、相手の戦力を推し量るものが3人。そこにあるのは勝利の確信、のはずなのだが、普通は、だのにどうしてこの馬鹿共は・・・・・・

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