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百年河清2





 ど~して神殿の行き方を村人に確認しなかったのか。

「ねぇ、ティナ、あとどれくらいで着く予定?」

「わからない・・・」

「地図だとどの辺だろう。半分くらいかな?」

「わからない、方向はあっていると思うんだけれど・・・こんな森の中だなんて訊いてないし・・・」

半ベソかきそうなティナ。回りも本人も不安は募るばかりである。方向があっているの根拠も薄いだろう。まぁ、心配するな、確かに方向は間違っていない。直に建物も見えてくるだろう。ただその前にやっとというかやはりというか、モンスターが姿を現した。ガイアでさえもどこか面倒臭そうな顔をしている。待ってましたよりもやれやれが色濃い。魔界における緒戦。我々の現在地を思い知る戦い。

 敵さんは三体。全身を灰色のフードで覆った人型は明らかに魔導士タイプ。全体魔法でも唱えてくるか。ティナみたいなやつが問答無用に飛んでくると思うとぞっとするが。もう1体は西洋甲冑を身にまとった戦士タイプ。いつもならガイアが1対1(さし)でやらせろなんて言いだしかねない敵だ。3体目は恐竜か。人間界ではトリケラトプスという名称だったはず。にわかに信じがたいくらいデカかった。ベアーウルフを踏み潰せそうな足の太さだった。

 さて、どう出るか。どう動くか、どう組み立てるか。ローグが前に出る。やはりうちの切り込み隊長は勇者。このスピードが通用しなければ黄信号。出直しも考えるべきだ。標的は魔導士か、鎧か、恐竜か。結論的には3匹まとめて面倒を見ることとなった。

 特大煙幕。3体全てを巻き込んだ真っ白な煙。そして我々は逃げだした。飯を食いながら打合せでもしていたのか、3人の息はぴったりだった。ティナがスライムを抱え(やっと・・・)、ガイアが風呂上がりのタオルを肩に掛けるみたいにティナを担いだ。そして後方を誘導するのはローグ。敵との距離や位置関係を考慮しつつも、目指すべき方向を見失わない。やればできるではないか。それとも偶然か、火事場で何かが吹っ切れたか。とにかく3人に戦う意思は一切なし。この作戦によくぞガイアが納得したものだ。ゴーマ神殿まで逃げて、逃げて、逃げまくるらしい。

 ちなみにガイアの大剣はローグが預かって、身軽になったガイアがティナを担ぎ、逆さのティナがどうにかスライムを落とさずに掴んでいる。俯瞰(ふかん)で見るとえらく珍妙な一行だ。尤も、森の中では空から見つけることはできまいが。


 運は良かった。加えてローグの作戦が見事に的中。20分も進むと神殿と思われる屋根の一部が木々の隙間から覗いた為、心強い目印ができた。これがあればさすがに迷わない。そして問題のモンスターはというと、ローグの囮作戦が上手くはまってくれた。ひょっとすると、クライン王の直伝かもしれない。自分達の居場所とは異なる位置に煙幕を発動する。獲物と勘違いした付近のモンスター共が煙に群がる。そちらに注意が及んでいるうちに、息を潜めつつ先を急いだ。ひとまず頭脳戦はローグの完勝だった。煙を感知したモンスター共は煙の内部まで突っ込んでいく奴はいなかったが、律儀なのか警戒心を備えているのか、煙が晴れるまで首を長くして外で待っていた。そんな様子をしめしめと遠巻きに観察しながらゴーマ神殿を目指した。


 


 ゴーマ神殿に無事辿り着けたことは、(ひとえ)に作戦勝ち。結果、周辺モンスターのレベルがいかほどのものかという不安要素は残ったが。試し斬りに取っておくとしよう。

 魔界の神殿ということで妄想が膨張していた部分もあったが、想像していたよりもずっと普通の、少し大き目の宿屋の様なありきたりの建物だった。入口には見張りもおらず、神殿内には抵抗なく足を踏み入れることができた。

「ごめんくださ~い。」

果たしてティナのこの挨拶が適切なのかは分からないが、ひとまず返事はなかった。受付らしき場所も見当たらなかった。幾つかの扉が見えるが、その先に誰かいるのだろうか。

「誰もいないみたいね。」

「ローグよ、どうする?」

「奥に進んでみよう。そんな広い神殿ではなさそうだし。」

大丈夫、この奥に目的の人物がいる。

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