百年河清1
【仲間モンスターとして勇者に同行するスライムと、百年河清】
多くのパーティーを見届けてきた村人にとって、今更ローグ達は珍しくも特別でもないのだろう。村外れから勇者一行が登場したって、村の日常に何ら変化は生じなかった。
ちなみに、クラインの民は一斉に城へ帰っていった。ザルバックからの危険が無くなったとみて、クライン王も旅の結界を起動したままにしたようだ。水色の光が消えることなく残っていた。結界から小屋の外までちょっとした行列ができていて、それでも結界を使った転送には慣れていたクラインの民は、滞りなく姿を消した。
人が減り、日常を取り戻したオーボンヌは静かな村だった。村人は少なく、高く大きく騒がしい建造物も見当たらない。小さな村で、首を1周回せば村の全貌を見渡すことができた。隅から隅まで探索するのにも時間はかかるまい。
「ティナ、クライン王から地図を貰っているんだよね。」
さぁ、どうする、何から手をつけるか考えるまでもなく、ローグがティナに確かめた。
「ええ、お預かりしているわよ。私達に使いこなせるかは分からないけどね。」
ぺろりと舌を出して、いたずらに首を傾げるティナ。
「よし、行こう。これからゴーマ神殿に向かう。そこで力の解放を行い、魔王城へ乗り込む。」
力の解放―最終試練を前に勇者とその仲間達が得られる希望の光と言えば訊こえはいいが、最後の拠り所。頼みの綱。蜘蛛の糸。現時点でローグは勇者、ガイアは戦士、ティナは魔法使い。このジョブがどう進化するかは分からない。同じジョブでも進化先は十人十色。クライン王のように時空騎士という特殊ジョブになる勇者もいれば、こう言っては酷だが、強戦士という平凡な、微細なパワーアップに終わる戦士もいる。こればかりは才能というか、持って生まれた星に願いをかけるしかない。
そういえばローグが使った能力、勇者が命じるとか何とか―あれも力の解放だったのだろうか。
村を出る直前、ひとりの村人に声を掛けられた。
「神殿に向かわれるのですか?無事に儀式が済みましたら、必ず武器屋をお訪ね下さい。」
これはもう強武器、有用アイテムで間違いなかろうて。各人に最適な一品が手に入ろう。
「ありがとうございます。必ず伺うようにします。」
ローグが答え、我々は村を出た。情けないかな、その時はその者がオーボンヌの人間ではないということを夢にも思わなかった。
さて、方向音痴が3人という前代未聞の大問題も然ることながら、まずは敵さんの状況だ。ここは魔界。強くて当然、レベルが高くて当たり前。これまでとは世界というか、次元が異なる。ベアーウルフが恋しくなってしまうかもしれない。ガイアですら正気を失いかけたのではという不気味な薄紫の空が嫌でも魔界に降り立ったことを証明していた。魔王のお膝元のモンスターに果たして対抗できるだろうか。この辺の雑魚にヒィヒィ言っているようでは先はあるまいて。




