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掌中之珠21

 ティナも席に戻り、3人プラス一匹で食事を続ける。ティナも席に戻り、3人プラス一匹で食事を続ける。

「オーボンヌか・・・いいぜ、望む所だが―」

ガイアも名とその所在地は知っているようだ。遅かれ早かれその内にという準備は心に秘めていたのだろう。

「この城は空にして平気なのか。見た所、爺さんしかいねぇ。いつザルバックが仕返しにくるとも限らんぞ。」

器用に、喋りながら手の届く範囲の皿を全て平らげたガイアが、珍しく真っ当な意見を述べた。

「大丈夫、当分は大人しくしていると思う。ザルバック王が攻めようとしてもギルガノフが反対するはずだ。モンスターもいないだろうしね。それに万が一攻撃を受けても、クライン王が跳ね返すさ。」

「王様独りでか?」

「十分さ。昼間のレベルのモンスターなら問題ない。」

「おいおい、マジかよ。どっちが化物か分からねぇな。」

「本当だ。」

アッハッハッハ―

「化物とは誰の事じゃな?」

「うわーーーーー!!!」

後ろにクライン王が立っていた。


 「ローグよ、相も変わらずひどい方向音痴のようじゃの~。」

動悸の収まらないローグに対して、ティナが譲った隣の椅子に座して畳みかけるクライン王。気付いた兵士が慌てて駆けつけるも笑顔で気遣い不要と断った。

「ええ、全く治る気がしません。」

「こちらのお嬢さんに地図を渡しておいた。まぁ、3人揃って地図がダメらしいがの、だっはっはっは。」

豪快に笑うクライン王の横でティナはうつむき、ガイアは目を瞑って自信満々に頷いた(なぜだ?)。

「オーボンヌに着いたら、まずは東だ。ゴーマ神殿に向かいなさい。道のりは厳しいが、お前達であれば辿り着けるであろう。その後で北の魔王城。地図ではまず右、その後で上じゃぞ。」

まるで幼子に教えるみたいに地図をなぞりながら教えてくれた。

「くれぐれも急くなよ。」

「はい。」

頷き、頭を撫で、邪魔したなと席を立つクライン王。いいのかと言うガイアとティナにいいんだと言うローグ。別れが辛くなるよな。別れてから辛くなるよな。

「ローグ、お前ぇの言ったことは本当だったな。全く気配を感じなかった。あんな簡単に背中を盗られたのはいつ以来だか・・・」

嬉しそうに頷くローグだった。




 翌朝、出発の時。遠目には姿見にしか見えなかった。時空騎士の旅の結界なんて仰々しい名だからどんなものかと構えてみれば、連れて来られた部屋にはローグの背丈を同じくらいの大きな鏡が置いてあるだけだった。

「さて。そこの旅の結界がオーボンヌに繋がっておる。魔王城に程近い村。くれぐれも気を抜かぬようにな。」

見送りにはクライン王がわざわざ・・・ではなく、術者がいないと旅の結界は鏡のままだ。姿見の前に立ったクライン王が刀を抜くとガラス面が水色に光り出した。鏡の反射機能が失われ、結界が起動したということなのだろう。随分と、いささかあっさりしすぎなくらいに旅の用意が整ってしまった。そして柄にもなく、こういう時に空気を読めるのがガイアという男である。

「良さそうだな。んじゃ、俺から入らせてもらうぞ。ほれ、スラ坊、行くぞ。」

まずはガイアがスライムを摘まんで(だから・・・)鏡の中に入っていく。続いてティナ。ガイアと異なる点はちゃんと挨拶ができること。クライン王に礼を述べて、水色に吸い込まれていった。

 小部屋に2人きりとなったクラインとローグ。ほんの一瞬、昔に戻る。

「それでは先生、行って参ります。」

「無茶はするなよ。逃げることも戦略の一手。目的の為に手段を選べ。」

「はい。」

3年前と同じ、送る言葉だった。右手と右手で握手を交わす。その時よりも細く小さく、乾いた手に別れが遠くない可能性を悟り、大きさと力強さに己の役割の(すえ)(かた)を知るのだった。涙を秘めたいってきますとただいまを、あと何遍繰り返すことができるだろうか。

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