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掌中之珠19

 談笑と昔話を経て、空気が緊張感を帯びた。本題に突入する。

「『旅の結界』をお借りしたいのですが。」

「ふむ。もう・・・そんな時期か。急がずともまだ準備に割く時間はあろうて。誰も主等を急かしたりはせんぞ。」

王といえどいかなる状況にも対応する為か、手の届く所に刀が立て替えてあった。細く長く、その(さや)に目を奪われる程に美しかった。宝飾の類ではなく、実戦向きの日本刀だろうか。

「近付きながら考えるのも悪くないかと。」

「左様か・・・・・・」

王冠は被っておらず、やや癖のある白髪を肩まで伸ばし、さらにしわを増やすように目を瞑っていたクライン王だったが、

「あい、分かった。もう何も言うまい。我々の成せなかったことを託す若い者に祈ることしかできぬというのはやはり心苦しいが、もはや我々の世代にはどうすることもできない。寝床と食事はこちらで用意する。一晩休み、明日出立するといい。」

「ありがとうございます。」

ローグに倣って、我々も深々と頭を下げた。




 大食堂にて―王を守る為に選ばれた精鋭隊には見えなかった。人数も多くない、というか数える程度。ローグ一行が偶然立ち寄らなかったらどうするつもりだったのか。どうなっていたかは火を見るよりも明らか。どうにかなる突破口など皆無。どう見ても勝ち目ゼロで負け戦もいい所。

 それと一般人がいない。見かけないとか少ないとかいうレベルではなくゼロ。配膳係も老兵だった。さすがに鎧は身につけていないが、一般人では首回りがあれほど太くなることはない。古傷の見えるものもいる。明らかに皆、引退した年齢ではあるが、どういうことだ―同じ疑問をガイアがローグにぶつけていた。こいつはいったいどういう訳だと。この違和感は見過ごせない。食事と適量の酒を飲みながらローグは静かに、けれどもはっきりと、自身の決意を示すかのように語り出した。やはりローグは全てを知っていた。ローグの(はかりごと)だった。

 ほとんどの兵とクラインの民は既に避難を済ませていた。先の話に出てきた旅の結界なるものが鍵を握っていて(いずれ使うことになるので詳細は後述)、残っているのは王と老兵のみ。言い方は失礼だが、王も含めて全員爺さんだ。

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