掌中之珠16
三人(プラス一匹)合流。早速、嬉しそうにティナが話し掛けた。
「もう、ローグ。ちょっと位は私達に話しておいてくれても良かったんじゃなくて?」
瞬く間に立場が逆転、ティナが大きくローグが小っちゃくなってしまった。
「ごめん、ごめん・・・誰に訊かれているか分からなかったからさ。宿でも両隣の部屋に監視役が泊まっていたみたいだし。」
そういうことだったか。こいつらが一滴も飲まずにさっさと眠るには、それ相応の理由があったという訳だ。3人共飲もうとしなかったから、私以外は皆、気が付いていたのか。
「別に構わんさ。それよりローグ、久々にあれ(・・)、やれよ。敵さんも大勢で歓迎してくれているしよ。さっさと片付けて飯食いに行こうぜ。」
何だ。何かするつもりなのだろうか。切札でも持っているのなら早く切った方がよい。ざっと200。一国を滅ぼすべく育成されたモンスターを相手にするのだから。勇者が頷いた。
「勇者の名のもとに命じるは、モンスターの殲滅とクライン城の死守。遥かなる時の力をもってその身を捧げよ。」
大声を上げるでも、誰某に報告するでもなく、覚えたセリフを復唱するみたいに静かに口にした。ローグの宣言と共に3人が武器を構える。するとどうだろう、3人の武器が輝きを帯び始めた。長く生きていると知識ばかりが増えてしまって、自分の触れたことのないアイテムでも一目で分かってしまう。入手経路は曖昧だったが、店売りではなくレアドロップ枠だったと記憶している。どちらにしろ3人には早すぎる代物。
片手剣:ゴッドブレイカー。大剣:斬竜刀。ロッド:レッドスノー。200に迫る大軍を前に引くどころか、不安要素も吹き飛んで意気揚々とザルバックを裏切った。モンスター軍団の前衛はゴブリン。人型モンスターなどと呼ぶと人間族は気を悪くするかもしれないが、『小鬼』なんて称される。はっきり言って雑魚の代表格だが、塵も積もれば何とやら。数が数だけに油断は禁物だ。
ゴブリン一派も我々を敵とみなしたようだ。城を目指した行進から、標的を定めた突進に切り替わった。叫び声と砂埃を舞い上げて襲い掛かってきた。対してこちらは大剣をもってガイアが歩み出る。敵との距離を残しながら、天地を分かつように宙をぶった斬った。その刃からは黒色の刀気が発せられ、距離を縮めてくるゴブリンどもを蹴散らした。離れていたため致命傷とはいかない敵も多かったものの、揃った足並みを崩すには十分な威力だった。隊列の乱れに付け込むように、続いてローグが敵陣の懐に潜り込む。そして目にも止まらぬ早業で小鬼どもを仕留めていった。中には亜種のブラックゴブリンやメイジゴブリンなんかもいたように見えたが関係ないらしい。普段とは明らかにレベルが違う。雑魚とはいえ、およそ100体のモンスターを数秒で一掃してしまった。お次は地下道でも一戦交えたベアーウルフ。その数ざっと50。どんな手を使ったかは不明だが、よくぞこれだけ手懐けたものだ。
室内と屋外でやり方を変えるかと思いきや、ベアーウルフ50匹に対して勇者と戦士は正面切っての戦いを挑む。小細工なし。しかし全く工夫を施さない戦い方でいとも簡単に打ち取っていく。ザルバック地下道での戦闘は何だったのかというくらい、あっさりかつ着実並びに無傷で数を減らした。武器に秘密があることは分かるのだが(秘密も何も、場違いな武器)、いつ、どこで、どうやって手に入れたのやら。まだ早すぎる。それと力の解放。ローグの特殊能力か武器の力か、両方か。発動条件がありそうだが、そんな仕組みは訊いたことがない。調べ物が増えてしまったが悪い気はしなかった。導かれる結論を楽しみに待てる幸せは誰しも子供の頃に経験していよう。
さて、私も参戦するとしようか。目の前で仲間が一騎当千の勢いで敵を薙ぎ倒していく姿を見ると、年甲斐もなく力が湧いてくる。ちょっと本気を出せば、やる気を出せば、その気になれば、私も火くらいは吐けるのだよ。




