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掌中之珠13

 走る抜ける隙間はなし。ベアーウルフが3匹。どうやって切り抜けたものか―不用意に煙幕を張ればその霞の中から太い腕が出てきて不意打ちを喰らうかもしれない。3匹いては背後を取ることも難しい。ティナの魔法に頼りたい場面ではあるが、この密閉空間では避けたい―その時だった。

「あーーーーーっっっ!」

突然ガイアが大声を上げた。そして独り言のように

「盾、置いてきちまった。ま、いいか。」

本当にどうでもいい。大して値の張る盾でもあるまいて。しかももはや使い物になるまい。ちょっとへこみ具合を見たくはあったが、全くもって騒々しい。そんなことで驚かせるんじゃないのと言わんばかりに、ティナが杖でガイアの頭をこつんと叩いた。そしてそのままその杖でその先を示すのだった。

「ほら、飼い主様のご登場よ。」


 「偵察に行かせた一匹が戻らぬので様子を見に来たが・・・」

飼い主はザルバック王国の陸軍部隊長を名乗る男だった。ベアーウルフ3匹をお供に、地下道にいるはずのもう1匹を探しにきたという。はじめは何者か分からぬ者同士で警戒しあっていたが、ローグに届いたザルバック王からの手紙を見せると、あっさりこちらの正体を信じてもらえたようだ。もう少し疑った方が賢明ではと思えてしまうほど。連れていた3匹のベアーウルフはそのまま奥へ、仲間の元へ向かわせて自分は堂々と我々の前を歩き始めてしまった。あまりに無警戒。あの手紙にそれ程の信頼の証が示されていたのだろうか。背後から襲われるとかそういうシミュレーションは念頭に置いていないらしい。敵やもしれぬ3人組(スライムは目に入っていただろうか)に対して、背中を晒して進んでいく。全幅の信頼を置いていると言わんばかりに、まるで無防備の状態で自国の庭を案内するのだった。余計なお世話ではあるが、周辺諸国からのそれを全くもって放棄しているはずなのだが、現代のザルバックは。




「既に閉門の時刻故、明日、改めて城を訪れるが良かろう。」

城下町の外れに通じていた地下道を抜けると、そう言って町の宿まで手配してくれた。城の高官であることは確かなようで、彼の顔で全ての手配が整った。その日は酒も呑まず、軽く食事を摂って早々に床に就いた。どうやら隣にも客が止まっていたようで(私は気にならなったが)、気を遣ったのかもしれない。ザルバック王への謁見と城下町の探索は明日以降。


 国でも町でも観光地でも、どこかを初めて訪れる際は、歴史や現状等を可能な範囲で調べておくのが下準備。というのは一個人の考え方の様なので(少なくとも3人には当てはまらない)、私の方で少々解説をば。

 ザルバック王国は反転攻勢の国。長年に渡って他国からの侵略を忍んできたことは先述の通りだが、既にその立場は逆転。ザルバック王国は周辺各国、諸地域に恐怖を与える存在と化していた。手を結ぶとか友好条約、国交締結どうこうの話はない。訊こえてくるのは支配、占領、当地。現国王のザルバックⅥ世は、幼少期に受けた他国からの侵略を決して忘れないとして、富国強兵を公言している。かつてザルバックが受けた傷、流した涙、失った命、確かに存在した未来と希望。復讐を果たすまで終わることはない、手を緩めることはない、と。

 こんな物騒な発言をすれば他国が黙っていなさそうなものだが、平和に慣れた国は自ら平和を手放そうとはしない。非戦闘国の立場を維持しようとする。援助はすれども、直接は関与しない。非難はしても、自ら手を出すことはしない。我、関せず。攻撃対象とならぬよう息を潜める。それと同時並行に粛々と進めるのは攻撃を受けた際の対策。時と金に費やすのは自国の防衛力強化。防衛費、国防費という奴だ。

 何故、そんな国を放置するのか。

 何故、そんな国に呼ばれたのか。

 何故、そんな国がモンスターを飼育しているのか。

 3人の思惑やいかに。やはりローグしか中身を知らぬ手紙の内容が気になるのだが。

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