掌中之珠10
『やればできる』というのはローグ一行にも当てはまるようで、特に迷うことなくザルバック地下道の入口に到着した(そりゃ地図を前にあれだけ下調べしたんだ、そうでなくては困る)。昼過ぎに出発し、今や日は傾き、辺りは薄暗く見通しも悪くなってきた頃の到着。その間ずっと歩き続けても疲労の色を見せない3人はさすが、やはり一般人とは根本的に違う。お察しの通り入口の扉には鍵がかかっていて、魔法の鍵を入手してからでないと通ることができない。
腐敗に目をやられ、異臭に鼻をもがれる覚悟で挑んだが、ザルバック地下道は意外にも手入れが行き届いていた。水銀灯で照らされた地下道は外よりもよっぽど見通しが効いた。最悪、地下水膝まで浸るケースもありうると頭を過っていただけに嬉しい誤算であった(その場合はガイアの肩にでも無理矢理乗るつもりだった。泳ぎは苦手だ)。床も舗装されていて、外よりもずっと歩きやすい。足への負担も軽減される。これだけ金をかけて整備しているのだから、封鎖などせずに開放すればいいものを。逆に封鎖して追い〃閉鎖、埋めてしまうのであれば、小綺麗にしておく意味はない。けれどもそれは即ち詰まる所、裏があるということ。都合の良いことばかりではないということ。整備された封鎖施設に何の疑問も抱かない程、素直で一直線な3人ではなかった。
「ずっと使われてねぇにしては随分ちゃんとしているじゃねぇか。」
ガイアが靴底で床をカンカンと鳴らした。退屈だった旅路にひと騒動起こりそうだからだろうか。どことなく顔がニヤついている。
「鍵はちゃんとかかっていたから、一般の人は入れないはずだ。」
その感情はローグにも伝染する。
「つまり一般じゃない人がこの地下道を管理しているのね。」
ティナの総括した通りだろうな。誰が、何の為に。その答えのひとつは、すぐに向こうからやってきた。
ここはモンスターの飼育場である可能性が高い。その証拠ですと言わんばかりに、向こうの角から四足歩行の獣が歩いてきた。お呼びになりましたか、というタイミングである。十分とは言えないが戦えるだけのスペースはある。逆に言えば戦闘回避は難しい。出てくる敵、全てと遣り合わなくてはならないようだ。
維持費もばかになるまいて。封鎖するくらいならば、閉鎖して潰してしまえばよかろうて。王都ザルバックには何かある。何かを企んでいる。そこに首を突っ込み、巻き込まれるのが勇者のお仕事・・・のひとつなのかもしれない。面倒な役目であまり華やかではないな。
地下道に棲みつく、もしくは飼われているモンスターは『ベアーウルフ』。名前の由来は単純明快、クマのように大きな体を持つ狼。その能力たるやイカサマに等しい。一言で言えばズルい。熊の怪力に狼の俊敏性。体が大きい分スピードが落ちるとか、細やかな動きと引き換えにパワーは控えめという道理は引っ込んでいる。何かを犠牲にして、どこかに弱点がという可能性は考えられるが、大怪我をしかねないモンスター。動ける範囲の限られたこの地下道ではあまり遭遇したくなかった。




