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アデリーナ様の用件

 醜悪な笑顔のクセに本人は爽やかだと思っているのでしょうか。いや、アデリーナ様の苦笑の件ではありませんでして、用件を尋ねに来た師匠の顔のことです。


「仲が良さそうだね、お嬢ちゃん方。僕も仲間にいれて欲しいよ」


「師匠は永遠に独りですよ」


「君はいつも辛辣だよね。そもそも僕にはマイアという妻に、シャマルという息子がいるんだよ」


「どっちも偽りの関係じゃないですか」


「本当に辛辣だよ。僕の心を常にぐいぐい破壊していくのはどういうつもりなんだい。仮にも僕は君の師匠なんだよね?」


「教わったことなんて皆無ですよ」


「どんな親に育てられたら、こんなお嬢ちゃんになってしまうんだろう。シャマルを見てごらん。人の心が分かる、良い子に育ってるよ」


 ここで気付きます。珍しくシャマル君がマイアさんのいる大広間でなく、師匠の控える前室に居ました。


「えっ、師匠、忘れたんですか? シャマル君と血は繋がってないし、何ならシャマル君の方が歳上ですよ?」


「もうね、君は本当に心を抉り倒してくるよね」


 師匠は打たれ強いので、これくらいじゃ倒れないことを知っていますよ。


「はいはい。メリナさん、麗しい師弟愛の確認は後で2人きりでしなさい。すみません、マイアの所まで案内して頂けますか?」


「うん。分かったよ。でも、金髪のお嬢ちゃん、今ので師弟愛を感じたんだったら、君もおかしいよ」


 アデリーナ様は人見知りなところがあるので、師匠に何も返答しませんでした。



 師匠の案内で大きな扉を開いて大広間に入ると、マイアさんが出迎えてくれました。後ろにはヤナンカとルッカさんも控えています。



「やっちゃったねー。アデリーナがーワットちゃんを誑かせたのかなー」


 まずはヤナンカがのんきな声を出す。状況は把握しているみたい。こいつも有能さをたまに見せてきます。


「朝から皆に死相が出てんだから、アディちゃんは関係ないわよ」


「ふーん」


 フロンが反論しますが、ヤナンカは関心なさそう。


「で、ワットちゃんの所からは退いたようだけど、撃退したのかしら?」


 マイアさんの魔力感知の範囲と正確性は相当ですね。ここからだと、土に遮られて私には聖竜様の位置も分からないと言うのに。


「巫女さん、ストロングだもんね」


 昼前にあれだけ傷付いていたルッカさんもいつも通りでして、少し安心しました。



 簡単な会話を終え、どでかい円卓が魔法で用意され、イルゼさん以外の皆が席に付きます。薄汚れた現聖女だけは壁際に自ら移動したんですよね。

 さて、マイアさんは長く生きただけあって、とても気が利きます。スライスされたハムやら、果物やらも並べられていて、私は大変に満足です。



「それで、彼らをどうしたものかって話ですか?」


 マイアさんがアデリーナ様を見ながら訊きました。ここを訪問した理由が私にはないことはお見通しなんですね。


「どうこうするのは手段が1つだけなので、相談など必要御座いません」


「あははー。メリナしかないかー」


「ねぇ、巫女さん頼りになるわよね。アイシーよ」


「なんで、皆で私を見るんですか」


「そこの2匹がヤられて、アディちゃんも本調子じゃないんだから、あんたしかいないじゃん」


「不本意ながらの選択で御座います。本来であれば自分の未来は自分で切り開くものなのでしょうに」


 ……と言うことは?


「私……今から殴り込んできて良いんですか?」


「いいよー」


 許可を頂きました。ヤナンカに何の権限があるのか分かりませんが、ここ数日の怒りをぶつけて良いのだと思うとちょっと嬉しい。


「ウェイトよ、巫女さん。待ってれば、ここを通るんだから」


「はい! ぶっ殺してやります!」



「では、アデリーナさん、貴女の用件は?」


 マイアさんが再びアデリーナ様を見ます。


「フォビとシルフォの関係についてで御座います」


「んー?」


 ヤナンカとマイアさんが顔を見合わせる。それから、マイアさんがアデリーナ様を説得するような口調で伝えます。


「シルフォは確かに何かを企んでいると思います。自らの存在を2000年前から秘匿し、つい最近もメリナさんとアデリーナさんを襲ったらしいですね。大魔王復活の件も、世界最強決定戦で大魔王封印の土地に案内したこともあるから関与している可能性はあると思っています。でも、フォビはムカつくヤツだけど、それはしない。あいつはクソ野郎だけど、大魔王復活なんて愚行はしないわ。だから、フォビとシルフォは関係ない」


「だねー。フォビはいーヤツだよー」


「神様だし、私のファザーだからね」


 ルッカさんの発言にマイアさんが驚きますが、言葉を飲み込みました。たぶんフォビの娘だったことを知らなかったのでしょう。


「そうでは御座いませんでして、フォビとシルフォの力の関係についてで御座います。先ほど、聖竜は――」


「アデリーナ様、聖竜『様』ですよ」


「先ほど、ワットは『フォビはシルフォより上位』と述べました。メリナさんが完勝したフォビが、メリナさんでさえ手足も出なかったシルフォより上位だなんて思えないのですが?」


 こいつっ! 全く言い直さなかった! むしろ完全なる呼び捨て!!

 驚愕した私は抗議するのが遅れ、先にマイアさんが答えるために口を開く。


「メリナさんからシルフォとの戦いの件を聞きました。その際にアデリーナさんも瀕死の傷を負われたそうですね。さて、シルフォの目的は『スーサ君が神を辞めるって言うから止めに来た』と言ったと聞いております。その言葉が正しいなら、シルフォが上位な雰囲気がしますね。ところで、スーサは古語で聖者を表します。スーが聖なる、サは男性冠詞。なお、スードなら聖女で御座います」


「えっ! じゃあ、聖竜スードワット様は聖女ワット様ってなるんですか!?」


「ニュアンス的には。直訳でしたら、聖なる女性的なものですが」


 ……フォビと聖竜様が1対の存在みたいで大変に気分が悪い!


「そのスーサは神であり、フォビも神。ワットちゃんと同じ古語の句を使っていることからも、この度もシルフォは、ワットちゃんを脅してフォビが神を辞めることを阻止しに来たと思われます」


「私もその様に考えておりました。シルフォはそのスーサの上司のように振る舞っておりましたから。それだけに、聖竜がフォビを迷いなく上位としたことに違和感を持ったので御座います」


 それに答えたのはルッカさんでした。


「リアルな意味での神様は1人だけだと思っておられるのかもね。私もそう考えていたし、まだ考えているし」


 私が聖竜様だけを神と考えるようにですよね。大変に腹立たしい。だから、いずれフォビには、この世から消えてもらわないとなりません。


「でも、アデリーナさんにしては、詰まらない質問に思えました。フォビがシルフォよりも上位だったとしても、事態の展開に何も影響ないでしょ?」


「いいえ。本当にフォビがシルフォよりも上なら、彼が参戦すると状況が変化します」


「アディちゃん、あったま良いー。そいつが来て、戦闘になったら逆転勝利だね」


「なるほど……。フォビ憎しの一心で、フォビと共闘する、そこに至りませんでした」


 あっ。思い出した。

 私は発言します。



「でも、一昨日ですけど、聖竜様は『我が主はシルフォの軍門に下った。そうすることでシルフォからこの地を守っている』と仰ってましたね。あれ? あの時はティナ達をシルフォの手の者だと聖竜様は推測していたのに、さっきはベーデネールの率いていた魔族に変わってた」


 聖竜様の御言葉は絶対ですので、一見矛盾に思えても、それは私が未熟だからです。


「ベーデネールもシルフォの関連だったー、とかー?」


「うーん。ワットちゃんは、余り賢くないからすぐに他人の影響で自分の意見を翻すわよ」


 っ!? えぇ、マイアさん、言い間違えじゃないですよね!? 聖竜様をバカにしてるんですか!!


「あはは、かも。聖竜様らしいわね。もしかしたら、あの方とコンタクトを取ったのかもしれないわね」


「つまり、フォビが来るー?」


「うん。巫女さんに用があるから向かっていたはずだけど、もう本当に近いのかもしれないわね」


「……100%の強さで私に立ち向かう目的でしたっけ?」


 すっかり忘れていました。

 これは大変に重要なことですよ。その結果、私が勝てば聖竜様を譲ってくれるとフォビは言っていましたから。


「立ち向かうって……巫女さんの方がストロングみたいじゃない」


「実際に強いで御座いますからね」


「最近の化け物は、本当に手の施しようがないくらいに化け物なのよね」


 私はリンゴを噛りながら、フォビを倒した後を楽しく想像するのでした。共闘なんて絶対にしません。だから、ヤツが現れるまでにティナ達を始末しないとなぁ。

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