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 月明かりに照らし出されたのは人間だった。


 こちらに歩み寄ってくるシルエットはローブを羽織っていて、背丈やがっしりした身体つき。歩き方はおそらく男性だ。


 池の淵までたどり着いた男性は頭のフードを取る。


 満月で仄かに明るい中でもわかる・・・・あ、あの人イケメンだ。間違いなくイケメン。うわ、漫画の中でしか見たこと無いようなぐらいイケメン!!

 


 さっきまで、森の中にぽつんと佇み、野生動物に襲われるかもしれない恐怖と戦っていたのが嘘のように、イケメンが現れた事で拍子抜けし、改めて人間だったことにほっとして、遠目だがどストライクなイケメンでテンションが上がってしまった。元来、私は自他共に認めるお調子者なのだ。


 男性はこちらをしばらく見ていた。私の体はさっきまでの恐怖で腰を抜かしてしまい動けずにいた。頭の中は絵画のような場面(美しい森の中、池の畔に月明かりを浴びて佇むイケメン)を見て、


 あ、これ絶対夢だわ。あー、眼福♡夢サイコー!!


と、うっとりしてしまう。

  

 緊張の糸がほぐれたのか肌寒さが戻ってきて、


「クシュンっ」


 イケメンは、ハッ!っとして、水で濡れてしまうにも関わらず、ジャブジャブとこちらへと歩み寄ってきた。

 

 目の前まで来たイケメンにぽーっとなっていると、手を差し出してきた。よくわからなくて今度は手を見つめる。イケメンは低音のイケボで「手を・・・」と言ってきたので、大きな手に自分の手を重ねると、ぐいっと引っ張り上げてくれる。イケメンは、私の格好を見ると少し驚いたようだった。そりゃそうだ。あとは寝るだけだったから、タンクトップに短パン姿。こんな森の中で、こんな軽装備。場違い甚だしい。

 

 イケメンは自分が羽織っていたローブを脱ぎ、私の肩にかけてくれる。「これでは風邪を引いてしまう」と言うと、かけていたローブをしっかり体に巻きつけた。着替えができない子供を持ったオカンみたい、なんてしょうもないことが頭をよぎった時、急に体が浮上した。

 

「わっ!!」


「ここでは体を冷やす。取り敢えず、この先に馬を停めてある。送ろう。」


 イケメンにお姫様抱っこされ思考停止した私は、馬と言うキーワードに疑問を抱くこともなく運ばれた。



 茂みの奥は木々に囲まれていて、月明かりも届かない。しかし、イケメンは迷うこと無く進んでいく。しばらくすると、開けた所に出た。そこには大きな馬が停まっていた。馬だ。まごうことなき馬だ。辺りは暗く、明かりは月光しか無いにも関わらず、黒い馬の毛並みはツヤツヤとしていて見事だった。こちらに気がついた馬は歩み寄ってきて、頬をイケメンに擦り寄せる。

 

 ち、近い。

 

 お姫様抱っこ状態の私、イケメン、馬。密度が高すぎなうえ、本物の馬を始めて見た私は、身構えて硬くなる。そんな私に気がついたのか、イケメンはフッと笑う。あ、鼻血出そう。

 イケメンは私を馬の背に横座りさせ、馬に跨ると右腕でしっかり抱え込む。もう、恥ずかしさで発狂しそうである。

 

「このまま送ってもいいんだが、私の屋敷がすぐそこだ。ひとまず、温まるといい。」


 そう言うと、「夜風は冷たいから」と、フードを私の頭にかけてて、ゆっくりと馬が走り出す。

屋敷・・・イケメンに馬に屋敷。おとぎ話の王子様か?最近、仕事で残業続きだった私は身も心もトキメキでも求めていたのだろう。こんな素敵な夢を見れてラッキー!きっと、現実では寝落ちして床で寝そべってるのかもしれない。夢なのに寒く感じるのは、きっとあのまま寝落ちしてしまったからだ。風引くのはマズイけど、ま、明日は久しぶりの休みだし!でも、今度小川さんにあったら、オススメのジム聞こう。


 目醒まして覚えてるかわかんないけど。ぼやっとした決意をして、イケメンが抱きしめてくる力強さに酔っていた。

 








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