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嫌な予感は的中するもので、さっきのお嬢様は、この国のお姫様ですって。
エリザベス様が立ち去った後、お茶の準備で入れ替わりに戻ってきたメイに泣きついた。
「イマドキの子、恐~い、わーん。おばちゃんには、あんなギャルに太刀打ちなんて出来ないよー(泣)」
年下の女の子に縋り付く様は、情けない。しかも、やっぱり余計なこと喋らなくて良かった。うっかり言葉遣い間違えた日には、首がくっついてないかもしれない。なんて友人招待してくれてんだ!バンバン!
テーブルに頭を乗せて、両手でバンバン叩きながら、口を尖らせてブツブツ文句言う。
「すまない、妹が勝手に付いてきてしまってね。本当に困ったじゃじゃ馬だ。」
私に謝ってくれた声は爽やかで、セス様とは違ったイケボだった。頭の上から降ってきた声の主は、ハッキリと『妹』と言った。私は固まる。伏せていた顔をゆっくり上げると、エリザベス様と同じハニーブロンドの髪を襟足で纏めた男性が正面の席に座ろうとしているところだった。
「あ、イケメン。」
あまりの緊張なのか、現実逃避か、考えることを止めた私の口からは素直な感想がこぼれた。
「ありがとう。君はセスが言うように、面白い子だね。」
少し笑いながら、興味深そうにコチラを見てくる。
「メイ、お茶を」
いつの間に居たのか、セス様も私の隣の席に座る。そこまで大きくない丸いガーデンテーブルにはスミレ様は頑張りましたから、とアフタヌーンティーの用意がされていて、ティースタンドは3段もあり、もうちょっと右にあれば、王子様から隠れれるのに。4人がけのテーブルには、新たに2人分のセッティングがされ、自己紹介が始まる。
爽やか青年な王子様は【アルベルト・ルクス・エストメラ様】で、エストメラ王国の次期国王様だ。今年、王立学園を卒業されたばかりで、今は公務をこなしながら、外交も担っているそうだ。はー、若いのにすごいなー。感嘆のため息が出る。
セス様とは同じ王立学園で青春時代を過ごしたんだと遠い目をして、昔を懐かしんでいるようだ。
へー、セス様も王立学園出身なんだ。すごいのかはわかんないけど、王子様も通うところなのだから、きっと立派な学園なのだろう。ウンウン。てか、君等いくつよ。
私は先程読んでいた、『君の瞳に口づけを~禁断の恋~』で世界観を学んだ。いや、こんな痒くなるようなタイトルで、物理的に目玉にキスされたら恐いわとかツッコんだのは置いといて、四季があり、12ヶ月あり、ひと月は週7日の4週間ある。ひと月は少し短いが、殆ど一年の概念は日本と一緒だった。
確か、サクラの木の下で入学式にヒロインは王子様に出会い、卒業式当日には、サクラの木の下で積年の想いをヒロインが告げる。卒業って、ついこの前じゃん。何食わぬ顔して確認してみる。
「そうだよ、2週間前だ。卒業式後には卒業パーティーがあるのだけど、学園内は基本身分の差での差別は禁止されているから、最後の思い出づくりでここぞとばかりに令嬢たちに囲まれたセスは見ものだったね。」
よほど面白かったのだろう、目の端に涙を溜めてケラケラ笑っている。無邪気な姿に可愛らしいなーと思いながらも、私の手は震える。私の憂いを見透かしたかの様に、来月には王子様はお誕生日を迎えるらしい。・・・・聞くしか無い。
「おいくつになられるんですか?」
「19になるよ。」
まだ、ピチピチの未成年で目眩がした。