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深淵の少女  作者: 高城ゆず
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許されるのならば 後編

 私は大切な家族を食い殺してしまいました。

 貴族の一人息子が吸血鬼の被害にあったということで、レジスタンスはもちろん、軍もこぞって私を殺すべく躍起になると覚悟したのです。

 しかしそうはなりませんでした。なぜなら私が吸血鬼になって一ヶ月もしないうちに国は滅んでしまったのですから。

 新たな勢力が王権を握ろうと動いたかと思えば、どうやらそうではないようです。

 ──吸血鬼がこの国の人間を鏖殺して回ったのです。

 人間を絶対に殺さない私は、当然ながらそこに加勢はしておりません。外側から自分の国が滅んでいくのをただ呆然と眺めることしかできなかったのです。

 仲間の屍を踏み越えて勝ち取ったものをたった数年で失ってしまい、非常に悔しかったのを覚えています。


 こうして吸血鬼によって多くの人間が亡くなり、私はその清掃の仕事をしておりました。死体は例外なく判別できないほどにぐちゃぐちゃになっていたので、死体袋に詰めて即焼却コースでした。

 葬式なんてものは行われないがゆえに、死体の一体や二体をちょろまかすことは容易でした。それを食べて私は欲求を満たしていたのです。

 時折、坊ちゃん──生きた人間の美味しさを思い出し、食べたくて仕方がなくなることがありますが、それを理性で抑え込んで過ごしています。

 ──二度と同じ過ちは犯さない。


 人里離れた森の中に身を潜め、幾千もの死体を食べ続けた結果、異能力が使えるようになりました。それは触れた瞬間に溶けるほど高温の無色透明な布を生み出すというものです。

 ある日私は異能力でどのようなことができるか実験しました。その結果、森は焼け野原と化したのです。しかしその犠牲のおかげで大体のことは分かりました。

 一つ目、原則布は私に纏わり付くということ。

 二つ目、私の手が触れているかつその触れている物体が私を中心に直径三メートル以内に存在していること。

 三つ目、布の温度は変えられるということ。

 三つ目の結果を得ようとしたがゆえに、一瞬で灰にならなかった木から火が出て、それを消すことができず、森を全焼させたのです。


 新たな国ができた頃、黄昏時に私が街へ買い出しに行くと、偶然弟に会いました。最後に会ったのは私が軍人の頃だったので、もう既に数十年が経過しています。それなのに弟は成長ことすれ、老化しているようにはとても見えませんでした。

 弟は私よりも身長は低いのですが、立派な青年に成長していてとても嬉しかったのです。

 これがまだ私が人間の頃の出来事であれば、どれほど喜ばしいことだろうか。

 ──弟も私と同じ吸血鬼になっていました。

 弟はルビーのように美しく輝く瞳で、血液を浴びたような赤色の男性にしては長い髪を低い位置で一つに結んでいました。

 左目にモノクル、そのすぐ下には[Gevurah]と印されており、私は酸鼻を極めたのです。

 この日を境に私は贖罪と並行して、弟を人間に戻すための研究を始めました。

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