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深淵の少女  作者: 高城ゆず
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書類 特異体「陰」

 陰──登録ナンバー『04・C・4368』危険度クラス『C級』


 当特異体は腹部に青色の模様を持った黒色の鳥です。大きさは直径二十センチメートル程度で、五キログラムに満たない質量を持っています。

 管理方法は植物を植えて、人工的に作られた自然を模した一辺が十五メートル程度の空間に収容してください。二時、六時、十時、十四時、十八時、二十二時というように一日に六回の給餌を行なってください。その際は機械などを使用せずに人間が手から与えて、特異体が食べ終わるまで給餌を行なった職員は収容室から絶対に出ないでください。与えるものは有機物であればなにを与えても問題ありません。しかし、当特異体は鶏肉を調理したものをとても好みますから、それを最低でも一日に一度は与えてください。

 担当の職員は当特異体と一日に一時間以上のコミュニケーションを取ってください。そのときに当特異体が職員に好意的な態度を示した場合は、頭部から背中にかけて撫でて愛情を注いでください。担当職員の選ぶときには、たとえ人員が足りない場合でも、鳥に対して嫌悪を抱いていない者や悪意を持たない者、反社会性パーソナリティ障害を持たない者にしてください。

 許可なくして当特異体の収容室には立ち入らないでください。もし立ち入った場合には早急に『B種記憶処理』を行い、その者をインテリゲンツィアから追放してください。

 入室が許可されるのは、給餌の職員もしくはコミュニケーションを取るための職員に限られます。特例で担当の博士及びランクA職員両名の許可が得られた場合、本部への承認が下りた後、入室が許可されます。


 当特異体は──動物園にて発見されました。発見に至った経緯は、同じ区域で飼育されていた鳥の数が規定の個体数を一羽上回っていたからです。それを不審に思った動物園の職員が増えたその一羽を確保すると、その職員が死亡しました。死体の発見時には上体が失われており、断面はまるで恐竜のように大きな肉食獣に食いちぎられたようでした。

 これを知ったインテリゲンツィアは調査班を派遣しましたが、彼らも死亡した職員と同様に当特異体によって殺されました。しかし殺され方は異なり、死体には首だけを鋭利な刃物で切断したものや、頭部だけを食いちぎったようなもの、足だけが残されていたものなどがありました。

 続いて武装戦闘員を派遣しての確保を試みましたが、当特異体には銃器の類が一切効かないことが報告されました。傷を負わせても即座に治癒してしまうとのことでした。

 我々は確保作戦を決行しましたが、それは非常に難航しました。当特異体の移動速度は大変遅いのですが、それとは対照的に攻撃及び防御に関する能力がとても高く、武装戦闘員を三十八名派遣しましたが、五分程度で全滅しました。これによって派遣が可能な人員が著しく減少したために作戦は一時中断されました。

 当特異体の確保に成功したのは、当特異体逃亡阻止のために派遣されたランクF女性職員でした。彼女は自身の昼食として配給されていた弁当の主菜である鶏肉を油で揚げたものを当特異体に分け与えました。それによって当特異体は非常におとなしくなり、彼女の頼みに耳を傾けるようになりました。そこで収容の話を持ちかけると、前述の通りの管理方法になるようにしてくれるのであれば、という条件のもとに渋々従いました。これによって確保及び収容が完了しました。


 実験により、以下の情報が得られました。

 当特異体に米、パン、麺、肉、野菜、魚、豆、果実、甘味、昆虫類、爬虫類、両生類などの色々な食料を与えてみました。すると当特異体は与えられた分すべてを食べましたが、昆虫類や爬虫類、両生類を食べる際には大変強い不快感を顔に表していました。しかし反対に肉を食べる際には幸福感を顔に表しており、それを見た周囲の職員たちのストレスが減少していることが判明しました。その中でも鶏肉を非常に好んでいることが分かりました。

 当特異体には発声器官が存在しており、人間とコミュニケーションを取ることができます。その際に話される内容は十二、三歳程度の知能と同程度のものになります。それに加えて簡単な四則計算及び文章理解もできることが分かりました。

 当特異体は敵意もしくは悪意を持って接しない限りは特異性を発現させることはありません。一般的に飼育される動物と同じく、家族のように好意を持って接する場合は、当特異体もその人間に懐き、体をすり寄せるなどの愛情表現をします。反対に敵意などを持って接した場合は、腹部にある青い模様を歪めて鋭利な刃物、肉食獣の頭部などを生み出して自衛を目的とした攻撃を行います。

 当特異体は空腹になった場合、近くにある有機物を片っ端から食べていきます。しかし愛情表現をするような好意を持っている相手であれば、どれだけ空腹であろうとも食べることはありませんでした。


 当特異体の確保及び収容及び観察により百九十七名のランクF職員、三十九名のランクE職員、二十二名のランクC職員、十九名のランクB職員、五十九名の武装戦闘員、二名の博士が殉職しました。

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