穢れ望月
雨が降って、雷が鳴って、風が吹いた。
雨戸、閉めてなかったせいで。窓を開けて網戸にしっぱなしのせいで。雨露が部屋に入り込んでいた。
木で出来た床が、黒く、黒く、濡れている。
そのままいつか腐り落ちていく。
そんな光景が頭を過った。
心に差し込んでくる雨は、深く、深く、僕を貫いた。
ぐちゃりと、汚れる。ぐちゃりと汚れる。
がらり、と景色が変わる。
鮮やかな視界は、トーンが一つ落ちて、少し暗くなる。
赤は血の色に。
青は、少し澱んで。
黄色も、少し黒くなって。
緑も、暗い緑色になって。
白は、灰色になって。
そして黒は、もっともっと深い、黒になって。
言葉が途切れる。
僕は黙っている。
喋れない。
ただ、この気持ちをどうやって表現すればいいのか、分からない。
べちゃり、べちゃりと、心が濡れている。
涙のような綺麗なものじゃなくて、涎のような汚いものだ。
べちゃり、べちゃり。
体が濡れていく。
体全体が気持ち悪く、気持ち悪く、気持ち悪く。
嗚呼。
化け物になるって、こういう感触なんだな。
空に浮かんでた月は、不気味な、満月。
星々は、見えない。
月が雲に隠れる。
僕の心も、同じように、陰る。