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プロローグ・自室

「──……あぁ、まさか、こんな死に方をするなんて、思ってもいなかった、な」


 剣の腕なら誰にも負けない自信があった。

 事実、彼──アルベルト・マリノワーナは18歳という若さで国家騎士になり、25歳では国家騎士団長に任命されている。

 10年の間に一度は入れ替わると言われている団長の座を、アルベルトは今日まで30年間、誰にも譲ることはなかった。

 それは、剣の腕ではアルベルトに敵うものがいなかった証拠でもある。

 しかし、アルベルトは今、自室の椅子から転げ落ちて地面に這いつくばっていた。


「はぁ……はぁ……はぁ……まさか、毒を盛られる、とは」


 部屋に置かれていた水差しからグラスに注ぎ、一気に飲み干した。

 水差しを準備したのは従騎士だ。

 従騎士の誰かが水差しの中に毒を盛ったか、もしくは運んでくる前から盛られていたか。


「今は、そんなことを、考えている場合じゃ──ごほっ! ごほごほっ!」


 ぼやけてきた視界の中には、咳と同時に吐き出された床を赤く染める血だけがはっきりと確認できた。

 アルベルトは毒がすでに全身に回ってしまったのだと確信する。


「……こんなことなら、国家騎士になんかならずに、剣の道を、極めるんだった」


 アルベルトは好きで国家騎士になったわけではない。

 田舎にある故郷の村で父親から大好きな剣を学び、母親の手料理を食べ、友人たちと遊び回り、そしていつかは剣の道を極めて死んでいく。

 何をすれば剣の道を極めたことになるのかなんて分からない。おそらくは自己満足の世界だろう。

 そう分かっていたとしても、このような死に方は考えてもいなかった。


 それもこれも、アルベルトを勝手に大きな都市の剣術大会に参加させた兄のせいだ。

 何も分からずに参加させられた剣術大会で、アルベルトは最年少優勝を成し遂げてしまった。

 そのことを耳にした当時の国家騎士団長がアルベルトをスカウトし、両親も断ることができずに王都へ向かうことになった。


 そこでもアルベルトは様々な偉業を成し遂げてしまう。

 甲冑を木剣で粉砕してしまったり、先輩騎士との模擬戦で圧勝したり、騎士だけが参加することのできる武術大会でこちらも最年少優勝をしたり。

 極めつけは王都に迫った魔物の群れを一人で押し止めたことだった。

 アルベルトの活躍がなければ、王都には大きな被害が出ていただろうと、当時の国王から直接言葉を賜ったほどだ。


 こうして、若い時分から活躍を見せていたアルベルトは、当時の団長から次の団長だと全騎士の前で宣言されたのだ。

 普通ならば年下の若造にと反発があってもおかしくないのだが、アルベルトの活躍はそれらの声を無くしてしまうほどに強烈なものだった。


「……あぁ、意識が……政権争いの、とばっちりかぁ」


 今の王政は、アルベルトに言葉を贈った当時の国王が崩御してから荒れに荒れていた。

 現国王派と第一王子派で内部分裂を起こしており、至るところで政権争いが勃発している。

 国家騎士の中には大臣職に連なる貴族も多くいる。アルベルトは国を魔物から守る国家騎士までもが分裂しないようにと尽力していたのだが、この様だった。


「父様、母様……すみま、せん…………」


 こうして、建国以来最強と言われたアルベルトは、戦場ではなく自室の床の上で生涯を終えたのだった。

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