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9 嘘と本当と真実と

 *嘘の話


 就任式の後は五日間のお祝いの宴が始まるそうで、俺は参加しないので離れで一人で過ごしている。

 宴も三日目になると珊瑚(さんご)ちゃんがもう飽きたからと俺を街に連れ出した。

 あの家に居なくて大丈夫なのか心配になったけど、珊瑚ちゃんが言うには大人たちは勝手に飲んで騒いでいるから大丈夫と笑って俺の手を引いて街へと歩き出す。


 街もお祭り騒ぎで、皆んな楽しそうに過ごしている。同じお祝いなら俺と楽しく過ごしたいと言うので珊瑚ちゃんがお祭りに飽きて帰るまで一緒に過ごした。珊瑚ちゃんと一緒に歩いている『式』……志紀(しき)はよく見ると俺の母親に似ているかもしれない。


 ふと、空を見上げて見ても前に見たような黒く禍々しい雲は見えなかった。


 家に帰ってきてから珊瑚ちゃんが宴の後にまだ封印石の力を持つ俺と、契約の儀式があると言ってきた。就任式も終わってもう正式に珊瑚ちゃんが当主となったのだけど、形式的に契約の儀式は必要なのだと。


 契約の儀式の話しは就任式の後すでに、誠一郎さんと玲王(れいおう)さまに聞いていたので、俺は珊瑚ちゃんに詳しく儀式の話を聞いた後「わかった」とうなずいた。



 *本当の話 


「まだ恐ろしい儀式の続きがあります」


 当主就任儀式の後、誠一郎さんが話してくれた話はとても信じ難くて、ここが本当に異世界なんだなと改めて感じる話だった。


「このあと五日間は当主就任の宴が続く、その後、珊瑚を人身御供として捧げます」


 今までは普通の就任式であったが、今回は封印石の力が弱まっているために特別に執り行う儀式で封印石の結界の力を保つためには仕方がないと。そして珊瑚ちゃんにはこの事は伝えていないそうだ。


「私は娘が可愛いのです。私が代わりに生贄になりたいと思います」

「何それ……そんな話……」


 玲王の子孫で『力』を持つ俺が人柱を指名をする事になっていて、本当は珊瑚ちゃんの名前を言うところで誠一郎さんの名前を言えば、誠一郎さんが正式に生贄として選ばれるらしい。俺が生贄になる人を選ぶなんて、そんなの無理に決まっている。


「玲司さんは私を選ばなくてはならないのです。私は娘を助けたい」

「嫌だ!」


 そんなの出来るわけないと叫んで俺は誠一郎さんを部屋から追い出した。

 誠一郎さんから聞いた話を消化できなくて、眠れなかったのだけど、起きていて色々考えていたら疲れてしまい、布団に横になって目を閉じていたらいつのまにか寝てしまっていたようだ。



 *真実の話


 《………》


 いつもの声だ。前はたまに、それも途切れて聞こえてた声なのだけど、最近はよく聞こえるようになってきた。時々会話もしているので声の主が玲王さまだとわかっている。


 今日は先ほどの誠一郎さんの話を聞いたせいなのか、寝ている時に夢の中で玲王さまに会って話すことが出来た。

 初めて見た玲王さまは志岐(しき)に良く似ていて、違うところは髪が白くて顔は志岐よりも男の人っぽい。目は閉じているのでわからないけど瞳は黒いのだろうか。


 誠一郎さんから聞いていた人身御供の話を、玲王さまからも詳しく聞いた。

 俺は儀式から逃げる事は出来ないらしい。覚悟を決めて、きちんと選択をしなくてはならないようだ。

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