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6 街へ行こう

 渡り廊下で庭を見ながらぼんやりとしていたら珊瑚(さんご)ちゃんが街に行こうと誘ってきた。


「え? 俺、この家から出られるの?」

「そうよ。私が一緒ならどこへでもいけるわよ」


 ここに、この家に召喚されてきてからもう五年くらい経つのだ。

「俺、一生この家から出られないのかと思った」

 ちょっと半泣きで大袈裟に言う俺を見て珊瑚ちゃんはクスクスと笑っている。

「さあ、行きましょう」

 と促す珊瑚ちゃんに連れられて初めて家から外に出た。


 あの家の中から外に出て見える世界はというと、あの家のイメージからして時代劇のドラマで見るような古い長屋を想像していたのだけど目の前に現れたのは、きれいな街並みと整頓された石畳の道と、頑丈そうな石造りの建物だったので驚いてしまう。


「あの家からこの街並みは想像できない」

 珊瑚ちゃんはあの家はあれでも一応手入れはしているのよと、ふっと笑いながら道を率先して歩いている。

「もう何百年も前からの建物で、少しづつ修復しながら住んでいるの」

「建て直しとかはしないの?」

「あそこは地下が空洞になっているので地盤が弱くて建て替えとか出来ないわ」


 地盤が弱いとか危ないし、引っ越せば良いのにと単純に考えるけれど、どうやら違うらしい。

 あの土地に住んでいることに意味があって、住んでいる建物はどうでも良いと珊瑚ちゃんが言うのでそれ以上は俺は何も言わなかった。


 この辺はレストランが密集しているようでお昼近いこの時間だと人も多くて食べ物の匂いも沢山してくる。

「玲司さんは何が食べたい?」

「すごい良い匂いがいっぱいしてる。どこが良いかな」

 こっちへ行きましょう。と言って珊瑚ちゃんは俺の手を引いて歩き出す。

 手を触れても以前のようにならないのであれ?て思って聞くと、そのくらいはコントロール出来ると当たり前のような顔で言ってくる。


 色々悩んだ結果、フレンチっぽいご飯を食べて、お昼時は混むからとデザートは他の店で食べようと外に出た。

 ふと、何か変な気配がして振り向いて少し遠くの方の空を見ると、黒い何か禍々しい雲が見える。

 珊瑚ちゃんが俺の視線に気がついたように目を向けて何でもないように「あれは魔物の来襲ね」と言う。

「あそこは最近結界が弱まっていたから。街は半壊かしら」

 そして、すぐに俺にデザートはどこの店にしようかと聞いてくる。


「半壊? 魔物なの? 助けに行かないの?」

「近くに見えるかもしれないけれど、ここから移動するのに時間がかかるわ。その頃にはもう魔物も消えてるし」


 そう言うと珊瑚ちゃんは、この店にしましょと可愛いスイーツ店に入って行く。

 俺は魔物に襲われているという街が気になってしょうがない。

 珊瑚ちゃんはしょうがないわねえという顔で

「今から行っても半壊の街と、死んでいる人達、死にかけの人達を大勢見なくてはならない」

 そのような状況に玲司さんには耐えられないでしょうと俺に言い聞かせてくる。


 助けられないとわかっていても困っている人が居たら助けたい気持ちが出てくるのはしょうがないと思う。ただ、自分の現状も実際に魔物を前にして人を助ける事が出来ないだろうという自分の事も理解しているので、おとなしく出てきたスイーツを黙って食べていた。


 帰るときに珊瑚ちゃんが何か買ってくれると言うので誠一郎さんにお土産を買おうとして、家から自由に出られないのは俺だけかと気がついたので、自分がおやつに食べるものだけを買ってもらい、あの家に戻った。

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