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3 修行の成果

 それから『力』の訓練って何やれば良いの?『力』って超能力的な念力とか?と、適当な解釈で離れの側の庭で念じたりものを動かそうとしてみたりしたけど、よく分からない。小説や漫画だと師匠とか良い感じの先生っぽい人が出てくるのだけど、ここではそういう人が存在してくれないのかな。


 そもそも力とか感じた事ないのに訓練とか意味あるの? と嫌になりかけた時に当主が「私と一緒に修行を行いましょう」と声を掛けてきてくれた。


「私の事は誠一郎(せいいちろう)と呼んでください」

「誠一郎さん?」

「呼び捨てでも良いですよ、玲司(れいじ)さま」

「俺も呼び捨てで良いよ」


 修行の前に色々聞きたい事があると言うと、一度に説明するのは大変なので徐々にお話しましょうと提案された。俺の修行の時間は誠一郎さんの修行の時間を割いてくれるらしい。


「では、始めましょうか」

「はい」


 修行は力の出し方から、念じる時の集中する場所、力の放出方法とか色々教えてもらっているけれど、なかなか上手く出来ない。存在するだけで、この辺り一帯の結界を張る事が出来ているという俺の力が、目に見えて出てこないのだけど、本当に『力』があるのだろうか。


 誠一郎さんは俺に力の使い方を教えてくれているだけで、誠一郎さんは普通に筋トレ見たいな事をしているのだけど精神力とか鍛えているんだろうか?

 俺自身はいつ強くなれるのかわからないけれど、志岐はいつも誠一郎さんについてくるので見かける度に挨拶とか軽く話しかけたりしている。まあ、完全無視でまったく無反応なのだけど。


「では、今日も始めましょうか」

「はい」


 あれから半年くらい経った。誠一郎さんは修行する時間を一日に二時間程もうけており、それに付き合っているのに俺はまったく力の増加を感じない。もう嫌になる。


 《…………》


「?」


 今何か聞こえたと、キョロキョロしていると誠一郎さんが声をかけてきた。


「玲司さん、どうしたのですか」

「今、何か聞こえた? 最近よく聞こえるんだよねえ。何を言っているのかわからないんだけど」

「いいえ、私には何も聞こえませんでした。少し休みますか?」

「うん」


 空耳? 最近寝ている時とか起きている時とか、何か声みたいなのが聞こえて来る。

 何だろうと考えながら休憩するために屋敷の方に向かうと、廊下に志岐(しき)が立っていたので


「こんにちは」


 と声をかけると、ほんの少しこちらに顔を向けた。

 俺の方を見たのか、たまたま首を少し動かしたのかわからない程度だったのだけど、志岐の真っ黒できれいな瞳が少しでもこちらに向いたかもしれないと、うれしくなって色々話しかけたけれど、あとは微動だにせず完全無視だった。


 がっかりしながらも誠一郎さんと並んで座って休憩していると、誠一郎さんが俺の方を目を優しげに細めて見て話しかけてくれる。


「玲司さんも飽きないで志岐に声をかけてますね」

「だって、俺の力が強くなれば話をしてくれるんだろう?」

「志岐に対して私は『そういうもの』だと思って接しているので玲司さんの反応は新鮮ですね」


 誠一郎さんが微笑んでいる。

 最初の出会いからしたら俺に笑いかけてくれている誠一郎さんも新鮮ではある。


「玲司さん、体の方は大丈夫ですか?」

「うん、平気」

「そうですか。それなら良いのですが」

「このあとお風呂に行く」

「ああ、それなら体を洗うのお手伝い致しますよ」

「ほんと? ありがとう」


 体を洗うくらい自分で出来るのだけど、人に洗ってもらうのも楽だし頭とか洗ってもらうと気持ちがいいので、実は修行の後にさりげなくお風呂に行くと言って誠一郎さんに洗ってもらえるように誘導してたりする。


「俺の力って何なんだろう。こう、パーっとわかりやすく見えて欲しい」

「私にはわかるのですが……見せてあげられないのが残念です」

「見える方法ないの?」


 誠一郎さんは言おうかなと、少しためらう感じになっている。


「ありますけど、多分、玲司さんは抵抗あると思いますよ」


 抵抗って……と何か嫌な予感がしたので、そうなんだとその時は話を切り上げてしまったが、あれからまったく力は付いたように見え無くて、焦れた俺は力の確認方法を誠一郎さんに勇気を出して聞いてみた所、目を閉じてくださいと言われてまた嫌な予感一杯で目を閉じたら、そっと唇に触れる感触があった。

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