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12 エピローグ:封印の石 珊瑚視点

 封印の石*珊瑚視点





 あの封印の儀式の日から十年経った。

 私は今日も封印の間に来てしまう。


 『コレ』は私のものだった。


 封印石の中で幸せそうに目を閉じて眠っている玲司に目をやり、側に向き合うような体制で寄り添って目を閉じている誠一郎を睨んでいた。


 最初から玲司は私のものだった。ここに……この地に封印するために呼び寄せて『私』と共に封印されるはずだったのだ。

 この地を何百年も治める最高の能力者として、何百年も人々に神として崇められる為に選ばれたのは私だったのに。


 玲司には儀式の際に私の名を呼んで欲しいと事前に説明していた。封印に関しては一切告げていない嘘の説明ではあったが、何も知らされていない玲司は私の名前を呼ぶはずだった。なのに……封印される際に自分の(つがい)の相手として私ではなく誠一郎を選んでしまったのだ。


 祈祷師としての能力が高く、当主となるべく能力者の私が生まれた瞬間から、父の誠一郎はずっと『仮』の当主としてこの地を、この家を統治していた。

 封印されてから何百年も経ってしまって力が弱ってしまった状態の封印石と、無能な仮の当主の誠一郎のせいで、この地に魔物が溢れてしまったのだ。

 困ってしまったこの地の統治者たちが私と共に封印される相手を探し出して、私の為に玲司を召喚してくれたのだ。


 それなのに……玲司は誠一郎の名を呼び、共に封印された。封印される事にも戸惑いも抗いもなく。


 この玲司が封印された封印石がある限りはこの先は何百年と魔物が現れない。

 番として一緒に封印されて神と崇められるはずの私は、この家の主人として何もしないで過ごすのだ。あの無能な父……誠一郎でも出来る事を。


 なぜ、あの時に私を選んでくれなかったのかと親愛と憎悪の気持ちで玲司を見つめた後、ふと誠一郎を見ると私をバカにしたように口の端を上げて笑っているように見えて腹立たしい。眉間にシワが寄ってしまう……十年経っても未だに自分の置かれた環境に納得できない。


「当主様、そろそろお戻りに……」


 志紀(しき)が声をかけてくる。あの消えかけていた封印石の力を使って使役していたあの志岐(しき)とは違って玲司の力を使って使役しているので話もするし、こうやって私の面倒を見てくれる。


 今までは式に気を向けたことはなかったけれど、この志紀は玲司の力を使って作られたものなので顔も雰囲気も玲司にとても良く似ている。この美しい式に私はついつい親愛の情を向けそうになってしまうのだ。

 

 ……たとえ、次の当主交代の儀式までの付き合いなのだとしても。


 これ程に強固な結界に守られた状態でも当主交代の儀式には魔物が現れるそうで、志紀との関係もそこまでなのだ。


「また来ますね」


 私はもう一度、玲司を見つめてからその場を後にした。

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