第百四十七話 一人当千の一刀
アークスは、スウ、クローディアと共に、魔法院内の外廊下を歩いていた。
天候は曇り。日光が突き刺さってくるような晴れの続くこの暑い時期には、願ってもない曇天であった。
すでにクローディアから割り振られた書類仕事も終わっており、あとは確認作業が少しあるだけという状況だ。
……それまでは残りの書類を片付けたり、作業に当たる生徒をかき集めたりと、忙しなく働いていた。当初はあまりの作業量の多さに終わる見通しが立たなかったものの、それでも自分の工房から余っていたカートリッジ式のペンを大量に持ってきたことで、多少なり作業速度は向上。やはり一番喜ばれたのはコピー魔法だろう。作業が三分の一に激減したことで一人一人の負担は軽減され、それも速度向上につながった。
ここ数日の作業で腱鞘炎になりかけていた者たちも多かったらしく、そちらを治癒の魔法で治したりもして、なんとか乗り切ったという形だ。
いまは三人、作業のために借り受けている部屋に向かっている。
のだが……。
「……で? どうしてスウは俺の頬を摘まんでいるんだ?」
自身の頬っぺたを摘まんで、感触を楽しんでいるスウに咎めるような視線を向ける。
するとスウは悪びれる様子もなく頬っぺたをぷにぷに。むしろ満足げな表情で返答した。
「これ? これは私の精神の安定と保全のための措置だよ。大変な作業を終わらせたんだから、そのご褒美みたいなもの」
「どんなご褒美だよどんな」
「ぷにぷに~」
「……ほんとこればっか」
そんないつものやり取りをしていると、その様子を初めて見るクローディアが胡乱な視線を向けてくる。
「……あなた方は一体何をしてらっしゃるのですか?」
「ほんとだよ。クローディア様ももっと言ってやってくださいよ」
「私はアークスの柔らかい頬っぺたを触ってるだけ。触り心地が良くて気持ちいいよ?」
「それほどなのですか?」
「うん」
「そ、そうですか……」
クローディアは興味があるのか、横目でチラチラ。落ち着かない様子。
彼女が触ってみたそうに手を伸ばすと、スウが触って欲しくないというように、自身の身体を引っ張って後ろに隠した。
「あ、ダメだよ。アークスの頬っぺたは私の物だから」
「ぐえっ。急に引っ張るなっ……ていうか頬っぺたは俺のものだよ俺の!」
「ちょっと触るくらいならよろしいではないですか」
「ダメでーす」
「むむ……」
「人の話を聞いてくれせんかね……」
スウがガードを固める一方、クローディアは触ってみたそうにこちらを見てくる。
なんでこいつらは人の頬っぺただけでここまで盛り上がれるのか。このドサクサに頬っぺたから指を引きはがそうと試みるも、接着剤でも付いているかのように離れない。別にすごい力をかけられているわけでもないのに離せないのは、一体どういう理屈というか手管なのか。あまりの意味不明さに戦慄すらする有様である。
そんな風に引きはがそうとスウの腕を掴んで四苦八苦しながら、彼女とクローディアの攻防を横目に見ていたときだ。
ふと、どこからともなく音が聞こえてくる。
それはやけに甲高く耳障りで、まるで警戒を促すサイレンのよう。
男の人生を追いかけたときに聞くならまだしものこと、今生でこんな音を聞くのはどうも不思議な心地だった。
しかして、その音に反応したのはクローディアだ。
「これは……」
クローディアが神妙な様子で呟く中、やがて音は途切れてしまった。
「……いまのって、なんかの警報か? 魔法院にはこんな設備もあるんだな」
意外そうにそう言うと、スウが首を傾げる。
「アークス、警報って?」
「いや、だから周りに危険とかを知らせる装置のことだよ。火事のときに鳴らす鐘とかの類だ。あとは侵入者の存在を知らせるためのものかな。そう言えば魔導師ギルドにはそういうのなかったよな……」
普通、ああいう重要な施設には鳴子、釣鐘のようなものでも設置しているはずなのだが、自分が見た限りではその手のものは見かけなかった。
おそらく他の連絡手段があるからなのだろうが……それはともかく。
スウがクローディアの方を向く。
「クローディア様はこれを知って……クローディア様?」
「…………すみません。少しの間席を外します。あなた方は先に作業部屋へ行ってください」
クローディアはそう言い残すと、どこへともなく駆けていってしまった。
駆け出したその後ろ姿は、どことなく焦っているようにも見えた。
「一体どうしたんだ?」
「…………」
「スウ?」
スウがいつになく、苦々しい顔を見せる。
「……いま気付いた。すごく嫌な臭いがする。アークス、気を付けて」
「あ、ああ。わかった」
スウの警戒を促す言葉に対し、素直に頷く。この少女の鼻の利き具合は間違いない。臭いに関しての話が出たということは、まず間違いなくこれから起こる何かに対してのものだ。警報らしきものが鳴ったことといい、彼女の顔を歪ませるような事柄が「ある」、もしくは「いる」ということだろう。
(まさか……)
それについては心当たりがないわけではない。そう、この前、魔導師ギルドの周辺にいた不審者たちのことだ。連中はいまだ捕まっていないため、何か事件を引き起こしてもおかしくはない。
だがそうやって思い当たる反面、違うのではないかと思う自分がいるのも確かだ。
騒ぎを起こすのが魔導師ギルドならともかく、魔法院で騒ぎを起こすのには合点がいかない。いくら施設が隣接しているとはいえ、魔法院からなら進入しやすいということもないし、そもそもこうして警報が鳴っている時点で潜入は失敗である。
確かに王都の主要施設に警備が分散されたため、魔法院の警備は以前よりも薄くなったが――
「おいおいおい、じゃあそれが目的だったってことか?」
「アークス? 何かわかった?」
「あ、いや、わかったっていうか、この前さ、魔導師ギルドの周りで騒ぎがあっただろ? あれが、魔法院の警備を薄くするためのものだったんじゃないかって思ってさ」
「魔法院の警備を?」
「ああ。それで手薄になったところに侵入……ってここも言うほど手薄じゃないはずだが」
内部の警備が少なくなったとはいえ、むしろ外回りは魔導師ギルドと隣接しているため増えたと言っていい。そう簡単に侵入できるかと言えばそうでもない。
「それはいま論じている場合じゃないよ」
「そうだな。でも狙われるのがギルドじゃなくて魔法院っていうのがな。何が狙いなのかわからん。ここに保管してある資料とかを欲しがってるってことか? でもそれなら魔導師ギルドの方に忍び込んだ方がいいだろうし……生徒や講師に危害を加えるのもなんかしっくりこないしな」
「いや、魔法院か……これはマズいかもしれん」
騒ぎの理由を探していると、スウの声のトーンが一変する。
「どういうことだ?」
「……詳しくは言えんが、ここにも狙われる要素はある。そして、それはかなり重大なことだということだ。それがどこから漏れたかはわからんがな」
「よくわからないが、魔法院には狙われる要素があるんだな?」
「そうだ」
スウは神妙な表情で断言する。
つまりクローディアは、それを察して駆け出していった、というわけか。
「だけど、魔法院は魔導師ギルドと隣接しているぞ? 何かあればすぐに駆けつけることができるから、あまり心配しなくても大丈夫なんじゃ」
「いや、そうはいくまい」
「どうして?」
「簡単だ。魔法院が狙われれば、誰でも陽動の可能性を考える」
「……そうか。じゃあ、魔導師ギルドはそれを深読みして、ギルドの警備をさらに固める、と?」
答えを口にすると、スウは頷く。
そして、
「しかも、いま口にした魔法院の秘部は周知されていない。よほど重要な人間でなければ知らないことだ。誰でも陽動だと考えるだろう」
「人員も多くは割かれないし、狙われるもっともな理由がなければ――」
「そうだ。人間は追い詰められると保守的になる生き物だ。こちらで声を上げても容易には動かんぞ」
だろう。こういったときの組織の動きは、往々にして鈍い傾向にある。
もっとも重要な施設の安全が確保されるまで、余所に手を回す余裕はない。
そんな中、ふいにスウが指笛を鳴らす。
すると突然、庭園の垣根が揺れ、そこから人が現れた。
「は……?」
あまりに突拍子のない光景を目の当たりにしたせいで、胡乱な声が口から勝手に飛び出す。
一体どのスペースに収まっていたのか。そもそもそこにずっと待機していたのか。
一体全体よくわからないが、スウの呼び出しに応じたものだと思われる。
こちらがいまだ状況について行けずにいる中、スウは淡々とその人物に命令する。
「緊急事態だ。至急、メルクリーアと教師陣に魔法院に戻ってくるよう報せよ。リサに魔法院の地下が危険だと報告し、ギルド長にも同様の旨を伝えよ。あとは手の空いている国定魔導師がいれば、魔導師ギルドに戻らせるように」
「承知いたしました。姫様はどうなさいますか?」
「よ……いや、私の方は心配いらぬ。まずは魔導師ギルドと魔法院が第一と考えよ」
「エグバード閣下にはお伝えしなくても?」
「魔法院で起きた異変なら、エグバードの方が先に察知しているはずだ。他を優先しろ」
「御意」
「それと、私の剣を」
「承知いたしました」
何者かは二振りの剣を袋から取り出す。美しい装飾があしらわれた鞘に収まった、どことなく中華風を思わせる剣だ。
スウはそれを受け取ると、後ろ腰に交差させてマウントし、次いで赤いレースの手袋を取り出すと両手に装着。ハーネスのようなベルトも、肩や胸に取り付けた。
そして、すべての準備が整った折。
「行け」
「は!」
スウがそう言うと、その人物すぐに消えてしまった。
おそらくは彼女が動かせる部下のような立場の人間なのだとは思うが、驚きである。
瞬く間に完全武装したスウが、一つ頷いた。
「これでいい。リサやギルド長に話が行けば、うまく差配してくれるだろう」
「なんていうか相変わらずだよな」
「相変わらず?」
「だって何か起こりそうなときはいつもこうだろ? というか今日は武装までしてさ……」
「それは……」
「それは?」
スウは遅ればせて、「しまった」というような表情を見せる。
「え、いや、あの、あ、あははははははははははは!!」
「…………」
もちろん、ここまでがセット。相変わらず最後は笑って誤魔化すお姫様である。
だが、こちらもこれ以上の追及はできない。最近ではいろいろと弱みを握られているため、下手に突っつくとヘビが出てくる恐れがあるのだ。しかも毒持ちという厄介さ。藪蛇はなるべく避けなければならない。
「っていうかこんな話してる場合じゃないよ! 早く私たちもクローディア様を追いかけないと!」
「つまりクローディア様はその、さっき言ってた地下に行ったと?」
「そうそう」
「校舎に地下はなかったはずだが……隠されてたってわけか。入り口はどこにあるんだ?」
訊ねると、スウは自信満々な素振りを見せる。
「それはわからない!」
「ちょ! わからないのかよ! どうするんだ!?」
「わからないときは他の生徒に聞けばいいの! クローディア様が向かった方向にいた生徒たちに、どこに行ったか片っ端から聞けばいいでしょ!」
「……それしかないか」
そう言いながら、二人で駆け出す。
行く先はクローディアが向かったと思われる方向だ。
当初自分たちが向かっていた方向に走っていったため、このまま進めばいいとは思うのだが。問題はどこに地下への入り口があるか、だ。
しかして異変に遭遇したのは、曲がり角を曲がったそのときだった。
外廊下から建物内に入るすぐ手前で、瘤のような、腫瘍のようなものが視界に入る。
あまりに場違いすぎて一瞬何なのかわからず、目を疑ったほど。
そう、出会い頭に現れたのは、ピンク色の肉塊……としか表現できない物体だった。
それがまるで廊下の床いっぱいに、絨毯のように広がっていたのである。
「なんだこれ……」
「っ、これが臭いの正体か? いやだが……」
肉塊はうぞうぞと蠢いている。
スウ共々困惑している中も、それは細胞分裂でもしているかの如く、ぼこり、ぼこりと膨れ上がっていた。まるで校舎の内側をすべて自分で満たそうとでもいうように、大きく膨れ、広がっているのだ。
何なのかはわからないが、当たり前だがいい予感のするものではない。
「ハッ!」
アークスはすぐさま剣を引き抜き、肉塊を斬り付けた。
すぐにぶよりとした肉の手ごたえが伝わるが、弾力のせいか切ることは叶わず弾かれてしまう。再度、今度は刃筋を意識して斬り付けると、肉塊は切り裂かれパンっと弾けた。
感触はさながら空気がパンパンに詰まった風船だ。
「ほんと一体なんなんだよ……」
「アークス、あそこ!」
不穏な存在に対しさらに困惑を深めていると、スウが焦ったような声を出す。
彼女が示した先に視線を向けると、そこには一人の生徒がいままさに肉塊に呑み込まれそうになっていた。
力の限り腕を伸ばして、助けを求めている。
「た、助けて! 動けなっ……!」
「っ、まずい!」
「アークス!」
「俺が魔法を使う! スウはあの生徒のことを!」
スウが頷くのを見て、呪文を唱える。
《――風。陣。連。衝。砕。空。破。風よ鉄輪を成せ。太刀風一輪》
以前に覚えた風の魔法を使用する。
指を頭上でくるくると回しながら呪文を唱えると、その動きに合わせて周囲につむじ風が巻き起こり、指に風の戦輪が発生。それを肉塊に飛ばすと、呑み込まれそうな生徒の両側を引き裂きいた。
生徒を脅かしていた部分は孤立。そこへすかさず、スウが剣を抜いて躍りかかった。
腰に差した中華風の剣を二振り引き抜き、さながら舞を舞うように斬りかかる。
邪魔をする肉塊を一閃、二閃。飛び込んだ場所の肉塊を切り払うように、いくつもの斬撃で斬り飛ばした。
スウが呑み込まれそうになっていた生徒を引っ張り上げる。どうやら怪我はない様子だ。
《――風。陣。連。衝。砕。空。破。風よ鉄輪を成せ。太刀風一輪》
そのまま、残りの肉塊を【太刀風一輪】で吹き飛ばして、すぐさま駆け寄る。
スウが生徒に訊ねた。
「どうしたの? 何があったかわかる?」
「わ、わかりません。廊下を歩いていたら、いきなりこれが出てきて……」
「いきなり出てきた?」
「突然建物の壁からにじみ出てきたかと思ったら、ぼこぼこ盛り上がってきたんです。それ以上のことは……」
わからないか。それだけ急なことだったのだろう。
スウが話を聞いている中、こちらは肉塊の残骸を踏みつける。
肉塊は生物的な湿り気を帯びているようで、やはり生肉のようにぶよぶよとしていた。
「やっぱこいつは肉……なのか?」
「そうみたいだけど――っ、ちぃ!」
先ほど生徒が言ったことを証明するように、壁から肉がにじみ出てくる。
それは急激に膨張し、こちらを脅かそうと迫ってきた。
スウが剣で斬り付けると、やはり先ほどと同じようにはじけ飛ぶ。
そんな中も、あらゆるところから肉がにじみ出てきた。
「っ、まずいよ。このままだと他の生徒たちが取り込まれちゃう」
「って言ってもな……」
アークスもスウに習い、剣を抜いて斬り付ける。
相応の腕前さえあれば剣で断つことができるようだが、肉塊は増殖し続ける一方だ。
対処できる者ならば自分で逃げおおせることもできるだろうが、そうでない者もいるだろう。
「アークス! これが何かはわからないけど、とにかく原因をどうにかしないと! 他の生徒たちを建物の外に避難させつつ、クローディア様の向かったところに!」
「わかった」
「あなたはすぐに外に避難して!」
「わ、わかりました!」
助け出した生徒は、スウが指さした方へと駆けて行った。
「クローディア様が向かったのはこの先か?」
「だと思う」
「向こうにも肉がいっぱいあるな」
「そうだね。でも、それならそれで斬り進んでいくしかないよ」
「……それしかないな。なんか当分の間肉とか食べたくなくなりそうだ」
そんなことをボヤキつつ、再度の移動を開始する。
向かう先が校舎内であるため、使用できる魔法が制限される。そのうえ他の生徒がいるということも考慮しなければならない。炎はダメ。水で流すのも効果は薄い。こういうときは【輪転する魔導連弾】を使って一掃したいが、そうすれば生徒が巻き込まれていたときに危ない。
となれば、やはり剣で斬り進むしかないか。
それとも何か即興で魔法を作るか。
「アークス。悩んでいる暇はないよ。手を動かそう」
「そうだな……スウ!?」
こちらが迷っていたこと、そんな自分に意識を向けて声を掛けたせいで、スウは対応が遅れたのか。彼女の背後に肉塊が迫る。
「っ、しまった――」
スウはすぐに二剣で斬り付けるが、肉塊は別の方向からも彼女を呑み込まんと迫ってくる。
あっという間に周りを取り囲まれてしまった。
「スウ!」
「アークス! こっちは――」
何を言いかけたのか。声は肉塊に遮られえて聞こえない。
いや、それよりもいまどうするべきか、だ。魔法を使っている余裕はない。ここでまごついていれば肉に呑まれて圧し潰されてしまうだろう。そんなことをさせるわけにはいかない。それは絶対。絶対にだ。
集中に意識を埋没させる。遅滞する周囲。塵の一つ一つが明確に視認でき、徐々に周りのものがはっきりと捉えられるようになる。光が明滅。スローモーションの背景が、まるでモノクロ映像のさながらに急速に色味を失っていった。
跳躍で飛び越えて、スウのもとへ。
肉は自分ごとスウを圧し潰さんと殺到。
彼女を背に隠し――気が付けば、呟いていた。
《……斬る。斬る斬る斬る、斬り捨てる。一文字に斬り捨てる。八文字に斬り捨てる。十文字に斬り捨てる。微塵微塵に微塵になりて、胴首目耳に手も足も、八方四方に散り果てよ。蜘蛛手角縄十文字、とんぼうがえりにみづぐるま――》
「一人当千の一刀を受けよ――【浄妙坊の太刀】!」
廊下の床に生まれる、銀色の魔法陣。
その上で、まるで何かに導かれるように剣を振る。
速く。
速く。
いかなる剣閃よりもなお速く。
剣身に光が反射て滑り落ちるよりもなお速く、剣閃を叩き込む。
全方位を隈なく宛がわれる斬撃の軌道。それは遅々とした意識の中、さながら細い光の線のようによく輝いた。
一瞬で十を数える斬撃を受け、迫ってきた肉塊は瞬く間に破裂、飛散する。
魔法の余韻と、桃色の霞が周囲に浮かぶ中。
スウが半ば呆然としたように声を掛けてくる。
「あ、アークス、すまぬ。油断した……」
「いや、間に合ってよかった」
右手に剣を持ったまま、油断はせず。左腕でスウの身体を抱くようにして立ち上がらせる。
「大丈夫か?」
「あ……」
「ん? どうした? どこか怪我でもしたか?」
「いや、なんでもない……それよりもクローディアのことを」
「ああ、そうだな。行こう」
アークスは目的を同じくして、スウと共に駆け出した。




