第百二十九話 いつの間にかたまり場のようなものが作られていた件について
クローディアからの果たし状を受け取ったあと。
アークスは魔法院内にある、とある一室に連れてこられた。
どうやらここは資料置き場を改装したものらしく、他の部屋や教室などと比べるとかなり手狭。部屋の真ん中には木製のテーブルと椅子が置かれ、ご丁寧にお菓子やまで用意されている。
お菓子と言っても塩味のクラッカー程度のものなのだが。
窓際には活けられたばかりの花と花瓶。サイドラックの上には見覚えがあるポットが一つと、茶器まで一式揃えてある。まったく休憩室にしか見えないような内装ができあがっていた。
「えー、ではこれから、アークス対クローディア戦、第一回対策会議を始めまーす」
「…………」
それぞれが席に着いたのを見計らって、対策会議とかいうのの開催が宣言される。
もちろん、宣言したのは会の主催者であるスウシーア・アルグシアその人だ。
部屋に集まったのは、彼女以外に自分にリーシャ、シャーロット、そして先ほどまで教室でのんべんだらりと会話していたルシエルである。
「というかここ、勝手に使っていいのか?」
「大丈夫だよ。メルクリーア講師が自習で使っていいって快く許可出してくれたから」
「まあ筆頭講師がいいっていうならいいんだろうけどさ。きちんと自習で使おうぜ?」
「普段はそのつもりだよ。でも、今日はアークスの一大事だから」
「だからってさ」
「優先順位優先順位。それとも講義や自習を優先された方がいいの?」
「いやまあ確かにそれはそれでモヤるだろうけど……」
手際の良さに、こちらはやはり困惑しきり。
だが、自分以上に困惑しているのはルシエルだろう。
「えーっと、なんで俺まで連れてこられたんだ?」
「まあ、なんだ、居てくれ。頼むよ」
「俺は面倒なのに巻き込まれたくないんだって。しかも公爵家と軍部でも有数の家のご令嬢たちまでいるとかさ……」
ルシエルは時折肩をひくつかせて、戦々恐々としている。普段ならばまともに会話すらできない身分の人間がいるのだ。しり込みするのも無理はない。気持ちは庶民なのだろう。気持ちはわかる。
「アークスの友達かな、よろしくね」
「いや、あの…………はい」
「アルカン男爵家のルシエル君ね。よろしく」
「よろしくお願いします……」
ルシエルは縮こまって頭を下げる。当たり前だが「どうしてこうなった」と言わんばかりの顔をしていた。
「やべぇ、恐れ多すぎて胃腸が死にそう」
「そう言わないでくれって。あとで何か奢るからさ」
「それを消化する機能がなくなるかもしれないんだよ」
「大丈夫。俺も陛下に謁見したとき胃腸は死ななかったから」
「マジか……お前そんなことまでしてるのか」
「どうしてだろうな。俺は普通に生きたいだけなのにな……」
そんなことを言って視線を窓の外に向け、たそがれていると「なに言っているんだコイツ」という白い視線が注がれる。
ぎこちない笑みを見せていたリーシャに、ルシエルが声を掛けた。
「リーシャ、どうして君は大丈夫なんだ」
「シャーロット様とは以前からご一緒させていただいていますし、スウシーア様は親しみやすい方なので」
すると、シャーロットが上品な笑顔を見せる。
「ええ、スウシーア様はおおらかな性格の方ですから」
「あら? シャーロット様こそ、細かいことを気にしない方だと存じておりますが?」
「うふふ」
「あはは」
「ギスギスやめろや」
「あー、俺、ちょっと急用がー」
「待て待て待って、唐突に急用を生み出さないで」
スウとシャーロットがおかしな雰囲気を醸し出してきた折、すくっと立ち上がったルシエルの袖をすかさず掴んで引き止める。
居なくなられては困る。誰かいないと、室内のパワーバランスが一気にひっくり返る可能性があるからだ。自分とリーシャだけでは太刀打ちできない。
なんだかんだ言って再度腰を下ろしてくれるルシエルを心強く思いつついると。
ふと部屋のドアがノックされた。
スウが「どうぞ」と言って許可を出すと、ドアが開かれる。
誰かと思ったその人物はセツラだった。
「お邪魔します……あー、アークスさんこんなところいたんですね?」
「ちょっと勘弁してくれよ。これ以上増えたら対処のしようがないって……」
「なんの話です?」
頭を抱えると、セツラはそれを覗き込むように眺めてくる。
そして、頬っぺたをぷっくりと膨らませて、不平を口にした。
「ひどいですよーアークスさん。私だけ仲間外れなんですか?」
「あなたは? あ、そういえば、さっきもアークスの近くにいたよね」
「セツラと申します。確か、二年のスウシーア・アルグシア様」
「そうだよ」
「こうしてお集まりということは、やはり先ほどおっしゃられていたアークスさんの」
「うん、対策会議だよ。あなたも参加する?」
「是非……と言いたいところですけど、私非魔導師生なんですよね」
セツラは気まずそうな笑みを見せる。
仲間外れ云々とは言いつつも、一応遠慮はするらしい。
「全然かまわないよ。そっちのシャーロットさんも非魔導師生だし。魔法が使えるならむしろ歓迎するよ?」
らしい。
「えー」
「アークスさん。そんな露骨に嫌がらないでくださいよ」
「じゃあウザ絡みやめろよ」
「またまたそんなこと言っちゃってー。欲しがってるくせにー」
「よし、追い出そう。リーシャ、ルシエル手伝ってくれ」
「わかりましたわかりました! 大人しくしますから! お菓子食べてるだけにしますから!」
二人に追い出しを呼びかけると、セツラは焦ったように否定して、空いている席に滑り込んだ。そして、それ以上は何も言わず、バスケットに載せられたお菓子を頬張ってにこにこ。
大人しくしていれば可愛らしいのだが。いや、この少女に油断は禁物だろう。
あざとい仕種、可愛らしい顔、きっとすべてがまやかしなのだ。
「そろそろ兄様の話をしましょう。一大事です」
「そうだよね。アークスがもしかしたら万が一退学するかもしれない瀬戸際だもんね」
お菓子をぽりぽりし始めたセツラが、不思議そうに首をかしげる。
「それ、万が一なんですか?」
「そうだよ。もしかしたら、本当にもしかしたらだけど」
「アークス君がそう簡単に負けるとは思えないけど、相手が相手だから」
「私も兄様が負けるとは思いませんが…クローディア様は魔力がかなり多いと聞いていますし」
「アークスさん信頼されてるんですね。やっぱりそれも関係してるんですか?」
セツラは指で胸元の勲章を指し示す。
「まあこれもあるだろうけど、これまでもいろいろ戦ってきたからなぁ」
戦いに関しては、ガストン侯爵やナダール事変の件もある。
彼女たちからはそれもあって、信頼されているのだろう。
多分大丈夫だろうという意見が挙がる一方で、ルシエルがお茶を一度啜ってから懸念点を口にする。
「でもやっぱり魔力が多いのは脅威じゃないか? 魔力にものを言わせて規模の大きな魔法を使われれば、覆せないと思うんだが」
「まあ、そこはやりようって奴なんだが……でも、そこが一番の不安要素だな。俺も魔力で押せ押せされたら対処のしようがない」
これまでの戦いは相手が理解できない魔法を使って一撃するという、奇襲じみた戦いが多かった。だが、今回は魔法院の生徒同士の決闘であるため、ルールが介在するはず。
これまで使ってきた戦法が使えない可能性がある。
リーシャがスウの方を向く。
「スウシーア様。クローディア様はどんな戦法を取るお方なのですか?」
「やっぱり魔法重視かな。あと、サイファイス家の魔法も使ってくると思うよ」
「サイファイス家の魔法……」
「ええ、有名よ。クローディア様はこれまでも、その魔法を使って相手を完封しているから」
「あー、なんか決闘吹っ掛けまくってるって話だったよな」
「そうそう」
「スウは? ケンカ吹っ掛けられたことあるのか?」
「さすがに公爵家同士で……っていうのは考えちゃうみたいだよ? まあ私に突っかかってきたら容赦なく叩き潰すだけだけどね」
「怖っ。こっわ……」
「スウシーア様、すごいですね」
「やはり魔導師としての実力はスウシーア様の方が?」
「うん、負けるとは思わないね」
スウの場合、戦いになれば大魔力を使用した大規模な魔法を使えばいいのだ。
相手がどんな魔法を使おうとも、相手がどうにもできないほどの力をぶつければ、負けることはない。
それに、彼女にはとんでもない天稟がある。
「スウは使った魔法の威力が普通よりも大きくなるからな」
「は? なんだそれ? 魔法は威力が下がることはあっても、強くなることはないぞ?」
「そうだ。だから詐欺なんだよ。天稟だっけ? どいつもこいつもそんなの持ってるなんて上級貴族っておかしすぎるっての」
「マジかよ上級貴族ってほんととんでもないな」
ルシエルと二人そんな不平を漏らしていると、シャーロットがこちらを向いた。
「あら、アークスくんだってそういうの、持っているんではなくて? 前にそういうことを言っていたじゃない」
「あ、いやー、まあ、それは」
「あら、また隠そうとするの?」
「そういうわけではなくてですね……」
シャーロットの質問の勢いにたじろいでいると、ルシエルが不思議そうな面持ちを見せる。
「なんだ、アークスも天稟があるのか?」
「一応だけど、それっぽいものはな」
「あれだよね。見たもの全部記憶しておけるの」
「ん? ああ、うん。そうだな」
咄嗟に頷いて、話を合わせる。どうやらスウはそっちと勘違いしてくれたらしい。
いや、これ関係はきちんと気にしていなかったが、確かに自分の天稟はそれだろう。男の人生を追体験したのを能力とするよりも、瞬間記憶の方を能力として見た方がしっくりくる。
ルシエルとセツラが驚いたような表情を見せた。
「は?」
「記憶しておける?」
「はい。兄様は様々なことを覚えておけるんです。これまで私たちとした会話も全部覚えているはずですよ?」
そう口にするリーシャは、どことなく自慢げな様子だ。
ともあれそのせいでジョシュアやセリーヌたちへの恨みも風化せずにひとしおなのだが――それはリーシャの前で言うべきことではないか。
セツラがやにわに立ち上がる。
「なんですかそれ!? アークスさんそれずるじゃないですか! それじゃ筆記試験楽勝っていうか意味ないですよ!」
「お菓子口に入れたまま叫ぶなお行儀悪い!」
「むぐぅ!?」
セツラの口に別のお菓子を突っ込む。しゃべるよりも食い気なのか、塩っけのあるお菓子をすぐにもぐもぐ。彼女はそれを大人しく食べ始めた。
「なるほどな。主席になったのは、それも理由の一つなのか」
「便利だよね。一度呪文を覚えたらなんでも使えるってことだもん」
「ま、混乱はしないな」
「これで魔力があればね」
「ほんとそれな」
「リーシャはそういう力じゃないわね」
「そういえばそうだな」
「私にもありますよ? レイセフト家の血筋に宿る天稟ですね」
「え? そんなのあったっけ?」
「はい。火傷に強く、火の扱いに長ける……伯父様もそのはずですが」
「……そうですね。そうか、あれ天稟なのか。うん、火事の時とかよろしくお願いします」
「はい! 任せてください!」
リーシャを拝みながら、和気あいあい。
「でも、アークスだけ別なんだね」
「そうらしい。なんか血筋的に受け継いだものは髪の毛とかしかなさそうだなぁ」
そんな話をしていると、ルシエルがおずおずといった様子で発言する。
「えーっと、そろそろ話を戻した方がいいんじゃないか?」
「そうね。なんの話だったかしら?」
「サイファイス家の魔法の話だな。決闘ではよく使ってるってことだったけど……そんなに大っぴらに使いまくってて真似とかされないのか?」
疑問を口にすると、それにはスウが答えた。
「だから、サイファイス家の魔法なんだよ。呪文を真似して唱えても他の人間には使えないから」
「なんだそれ? そんなことあるのか?」
「うん。こういうのよくあることだよ? 特に他国の王族とかはね」
「あー」
そう言えば、帝国の皇族もその血筋でしか使えない魔法があると聞いたことがあるし、クロセルロード家が血統的に扱う雷の魔法は、呪文を用意してもうまく扱えない。
「魔力の込め方に特徴があるのではありませんか?」
「リーシャの言う通りかもと思ったんだけど、どうもそうじゃないみたい。攻撃的な魔法じゃないけど、対策されやすいものでもないし」
「結局どんな魔法なんだ?」
「詳細は分からないけど、相手の魔法の威力や効果を下げることができるかな」
「魔法の威力や効果を下げる?」
「うん。そうだよ」
だが、
「なんかそれ、後手後手だな。結局相手が魔法を使わないと意味ないんだろ?」
「それがね、どうも効果時間が長いみたいで、複数の魔法に効果がかかるみたい」
「じゃあ一定の空間で魔法の効果が持続するとかそんなのなのか?」
「そういうわけでもないみたいだよ? クローディアさんが使う魔法には干渉しないし、なんか相手の魔法だけなんだよね」
「なんじゃそりゃ? 法則壊れるぞ」
「ではどういう形式なのかから考える必要がありそうですね」
「そうだね。問題はそこかな。それがわかれば完璧に対策できるんだけどね」
「…………」
スウやリーシャとうーんうーんと唸りながら考えても、答えは出ず。
ほとんどわからないということは、それを探りつつになるだろう。
「あと、魔法院の決闘は殺傷性のある魔法は使っちゃいけないっていう制限があるよ」
「そこがなぁ。何が効果的か探り探り使うだろうから、その辺りはどうしても不利になるんだよなぁ」
「アークスは決闘用の魔法とか用意してる?」
「一応それくらいあるさ。てか、どうして訊く?」
「だってアークスったら相手を確実に殺す魔法の方が多いでしょ?」
「やめろやめろ。俺を危ない人間扱いしないでくれ」
「スウシーア様。アークスさんの魔法はそんなになんですか?」
セツラが訊ねると、スウは怪談でも語るかのように神妙な顔つきになる。
「怖いよ。よくわからない殺害方法だから、足もつかないし」
「人をミステリー小説に登場する殺人犯みたいに言うなって頼むから」
「えー、でも事実だし。否定できる?」
「……できないけどさ」
「でしょー」
結局は危険人物認定されてしまった。甚だ不本意な話である。
「ちなみにアークスさんの危険な魔法って、どんなものなんです?」
「相手を爆破……破裂させる魔法とか」
「ふむふむ」
「相手を一瞬で撃ち抜く魔法とか」
「ほうほう」
「相手の息の根を止める魔法とか」
「…………アークスさんってもしかして凄腕の殺し屋だったりします?」
「全然。どこにでもいるようないたいけな少年だけど」
「アークス君? いたいけな少年は白銀十字勲章なんて持ってないわ」
「…………はい」
シャーロットから的確な突っ込みを頂きつついると、ふとセツラが大人しくなったことに気付く。
「……なるほどそういうことですか。それで活躍を……」
「ん? セツラ? どうした?」
「ひゃい!? ど、どどど、どうしましたか?」
「お前こそどうしたんだよ」
「なんでもありませんよ!? お菓子すごくおいしいです!」
「全部食うなよ? そこにいる公爵家のご令嬢がお怒りになられるからな」
「アークスアークス。私を食いしん坊扱いしないでくれるかな?」
「じゃあどうしてこんなに用意してあるんだよ……」
お菓子は戸棚にこれでもかと用意してある。脱酸素剤、乾燥剤が用意されている男の世界のお菓子と違い、この世界のお菓子はそこまで日持ちがしない。そのため、悪くなりやすいことを考慮すれば、絶対に食べ切れるからあるということになるのだ。
「ほんとは甘いお菓子がよかったんだけどね」
「砂糖菓子は勘弁してくれ。俺はあれあんまり好きじゃない」
「ほんとだよ! 最近アークスのせいであれが美味しいって思えなくなってきたんだからね! 私をこんな身体にした責任とって――」
「おいこらやめろ! 人聞きの悪いというか、貴族的に大問題だろその発言は!」
「じゃあお菓子を用意してよ! 主にプリンだけど!」
「それ、私も食べてみたいわ」
「そのお菓子のことは私も知りません……」
「あとで作るから! 持ってくるから!」
シャーロットとリーシャは仲間外れなことを恨めしそうにしてくる。
この流れで行くと、そのうちディートの分も……となりそうだ。
そんな中、スウが名案でもひらめいたと言うように明るい笑顔を見せる。
「あ! あとアークスの家にある「れいぞうこ」持ってきて。プリンもそうだけど冷たい飲み物置いておくのに最適だし」
「完全にくつろぎの空間にする気だな」
「勉強に快適さが必須なのはアークスもわかってるでしょ?」
「それはそうだけどさ」
その会話が気になったのか。シャーロットがこちらを見る。
「あら、アークス君。そうなの?」
「え? ああ、そうだけど」
「そうだよ。魔法の勉強にカフェを使ったり、外でやるときは屋台でつまめるもの買ったりしてたんだ」
「へー、そうなのですか。そうですか……」
ふと、シャーロットが不穏な雰囲気をまとい始める。
そこに、スウが不敵な笑みを見せ、
「あれあれ? シャーロットさん、どうしたのかな? もしかして、アークスと一緒に勉強したことないのかな?」
「いえ、なんでもありませんよ? 機会はこれからいくらでもありますから」
「うふふ」
「あはは」
「だからギスギスはやめてくれと……」
仲が悪いわけではないのに、この前から妙なじゃれ合いをする二人。セツラはそんな彼女たちを見て、興味深そうに乗り出してくる。
「あ、これなんかすごく面白そうですね。おやつがすごくおいしくなりそうです」
「お前は野次馬根性出すな!」
「ええー!」
「ああ……アークスが俺に居てくれって言った意味わかるわ」
「だろ? 俺の胃はもう限界なんだ」
「そのために俺の胃を道連れにしていい理由にはならないけどな」
「うぐぅ……」
「兄様、あはは……」
「俺の味方はリーシャだけだよ……」
そんな話をしつつ、今回の集まりの主要な目的のはずだった対策会議は、今後この部屋をどんな風に使おうかかという話へと変化していった。
帰り際、スウとシャーロットが何かを話していたのだが。
「スウシーア様。どうしてクローディア様に抗議を入れなかったのですか?」
「入れなくてもいいかなって。アークスが負けるとは思わないし」
「ではどうしてこんな会議を?」
「確信半分、期待半分だからかな。どちらかって言えばこれくらい撥ね退けて欲しいって希望もあるし。今後はこういうことも増えるかもだからね。抗議しなかったのは結局のところ私のわがまま」
「もしアークスくんが負けた場合はいかがなさるのですか?」
「そんなの権力使うに決まってるでしょ? 陛下に奏上申し上げるつもりだよ」
「陛下が動いてくだされるのですか?」
「当然だよ。アークスは魔力計の製作者として、きちんとした地位を確立する必要があるし、王家はそれを陰ながら後援する立場にあるの。魔法院卒業はその一環。それに反対するってことは、王家の威光に逆らうことに他ならないんだから。本人が知っているか知っていないかにかかわらずね」
「理解しています」
「うん。それで、私にはそれに関連して動かなきゃいけないの。もし行き過ぎたことがあれば、対処しなくちゃならないしね」
「それは……」
「シャーロットさんは味方だけど、一応覚えておいてね。私は敵には容赦しないってこと」
……二人の会話の内容は、小声過ぎて聞こえなかったが。
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