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第百十七話 発表パーティーその二



 ――この日、リーシャ・レイセフトは父ジョシュアと共に、魔力計の発表パーティーに参加していた。



 発表パーティーは王城で開催される大掛かりなもので、しかも王族まで出席するという。

 リーシャもこれまで、魔導師サロンや王都住みの貴族が主催するパーティーなどに出たことはあったが、ここまで大規模な会への出席は初めてだった。



 そのせいか、母セリーヌの張り切りぶりはすさまじいもので、自分が出席するわけでもないのに、あちこち忙しなく動き回るほど。

 ドレスを見繕い、着付けをしてくれるメイドたちに神経質なほどに気を遣わせ、身に付ける装飾品も気合の入ったものばかりを選んでくれた。

 最近ではいままで着ていたドレスの大きさが合わなくなってきたので、仕立て直しでちょうどいい頃合いだったということもあるが、それでもやり過ぎではないかと感じてしまうくらいの気合いの入りようだった。

 全身揃え直しであり、いつもサロンやパーティーに出席するときよりも数段綺麗に整っているような印象を姿見の前で受けたほど。



 父ジョシュアは、赤を基調とした伝統貴族の衣装に身を包み、右手にはステッキを持ついつもの堂々とした立ち姿。

 そんな父と共に見知った招待客たちに挨拶を行い。

 いまは壇上に登った伯父クレイブの説明を聞いている。



 クレイブは軍服を肩に引っ掛けた様相であり、まるで出兵前の演説のため登壇した将軍のよう。

 だが、いつもの豪放磊落な雰囲気はなりをひそめ、説明する口調も厳かで力強さを感じる。

 話し方も抑揚などを織り交ぜ、とても引き込まれる話し振り。話術の緻密さ、計算高さは、いつもの優しく豪快なクレイブからは全く想像がつかないほど。



 当然、招待客の間からも、何度も驚きや関心の声が上がる。

 説明については、材料や原理などについてはほとんど触れず、魔力計の性能についてのみに留まり、魔力計でどんなことができるか、どれほど成果を出せたかなどを重点的に話している。

 もともと王国の魔法技術は高い水準を保っていたが、それと比較してもかなり向上していることがよくわかる内容だ。

 中でも分かりやすいのが、詠唱不全の大幅な改善だろう。



 一般的な魔導師でも十回中二、三回の失敗は普通だった魔法の行使が、ほぼほぼなくなったほど。

 もちろん、他国の来賓は衝撃というよりも恐怖を感じるほどだっただろう。

 これにより、もともと高かった魔導師の脅威度が、格段に増えることになるからだ。

 これで、王国に攻め入ろうなどと軽々に思えなくなる。



 国内の魔導師たちもそうだが、他国の魔導師たちも欲しくて欲しく仕方がないといったように落ち着きをなくしていた。



 魔力計の話を聞いている中、ふと、背後が気になった。

 後ろを向いても、誰もいない。

 誰もいないが、何かはいる。



 そう、後ろの悪魔は健在だ。

 レイセフト領の洞窟で解放してから結局背後に付きまとわれることになり、ことあるごとに話しかけてくる。

 初めは幽霊のような存在で少々不気味だったが、別にいたずらをするわけでもなく友好的なので、思いのほかすぐに慣れてしまった。

 それに、自分が察知できないことを教えてくれたり、知識を披露してくれたりするため、最近ではこちらから話しかけることの方が多くなったほどだ。



 ――ほら、お得だっただろ?



 そんなことを言われて、得意満面な顔が想像できたのは、やはりなんとなく憎たらしかったが。

 実際頼っている部分もあるため、そんなことを言える立場ではないのだが。

 ともあれ、彼から話しかけられたときは適度に会話に付き合っているといった状況だ。

 周りには彼の声が聞こえないため、下手に会話していると、周りから怪しまれるからだ。

 その辺り疎かになっていたこともあり、最近、父や母から、独り言を直せと言われるほど。



 ふいに、その悪魔が話しかけてくる。



『魔力計、ね。リーシャちゃんも使ってたよね? あれ』


「そうですが、どうかしましたか?」



 周りに人がいるため、悪魔に応じる声は小さめ。

 特に父には怪しまれないようにしつつ、訊ね返す。



『どうかしたってわけじゃないけど、あんなものが作られるのが、やっぱり意外だなって思ってサ』


「意外とは、一体どういう意味でしょう?」


『だってそうじゃないか。あんなの、この国の技術で作れるようなものじゃない。確かにところどころ昔の遺構があるから、絶対にありえないとは言えないけど、こうして作られてるってのがまずおかしいんだよ』



 悪魔はそんな風に説明してくれるが、どうもピンとこない。

 こちらが不思議そうにしていると、悪魔が質問してくる。



『だってあれの中身、変性銀でしょ?』


「変性銀? 名前は別のものと聞いていますが?」


『いや、あれ、変性銀だよ。確かに変性銀を利用すれば、他の波長に邪魔されずに魔力線の線量だけを測ることができるけどさ』


「そうなのですか?」


『そうサ。あの測定器はね、魔力が発している波長の影響で変性銀が膨張する性質を利用して、数値を導き出しているんだよ。魔力線はその場にある魔力の量によって変わるから、膨張率さえ一定に保てれば確かにあんな使い方もできる』



 らしい。



『ただね、問題は変性銀の生成に必要な、『圧縮した魔力』の精製だ。そんなの魔導高速度増幅装置でもなけりゃ作れないだろうに。それこそ先に作られる技術が逆転してるゼ?』



 悪魔はそういった説明をしてくれるが、よくわからない言葉も多いため、いまいち理解できないときもある。

 まるであの人の話を聞いているかのようだ。

 あの人との違いは、悪魔は面倒臭がって細かいことまで説明せず、すぐにはぐらかしてしまうという点だが。



『にしてもあれを温度計で再現するなんて、随分また原始的というか、うまいこと落とし込んだものだよとは思うけども』


「温度計……とはなんでしょう?」


『温度計は温度計でしょ。そのまま、気温や温度を測る道具のことだ』


「空気の温度は……酒精などを利用して測るというのはよく聞きます」


『うん、なんていうか、単純なやり方だね。僕が言っているのはそれをもっと使いやすくしたものさ……水銀を利用したものは見たことないかい?』


「見たことはありませんね。聞いたこともありません」


『いやいやいや、それじゃあなんでああしてあれが温度計の形態をとってるのさ?』


「それを私に聞かれても困ります。その変性銀というのを使いやすくすればあんな風になるのではないのですか?」


『確かにそうかもしれないけど、まず順序が逆でしょ? どう考えても温度計の方が先に生まれるしさ。というか、先に魔力線量測定器が生まれたら、もっと別の形になるはずだゼ? 普通は他の波長が混ざらないよう特殊なガスが封入されたガラス管を使って、魔力線だけを読み取れる装置になるはずだから……いや、それをやるにはまず電極が要るから雷電力(ライ・ノ)が必要になるか。でも、雷電力(ライ・ノ)なんてここじゃさっぱり使ってないし……うーん、やっぱり温度計みたくはならないはずなんだけどなぁ』


「私にはわかりませんが……」


『あれ作ったの、君の伯父さんだっけ?』


「いいえ、あれを作ったのは兄様です」


『お兄ちゃん?』


「はい。あそこにいらっしゃいます」



 そう言って、隅の方にいるあの人を見る。

 今日のあの人は、伝統貴族の服ではなく、落ち着いた色合いのジャケットを着用していた。

 ちょっと着られている感は否めないが、似合っていることは間違いない。

 銀髪と赤い目が特徴であるため、見つけることはそう難しくないはずだ。

 やがて悪魔もこちらの視線を読み取って、あの人のことを見つけたらしい。



『……あの、君と同じくらいの歳の? 君と同じ髪と目の色をした? いまちょうど料理もぐもぐして、にこにこしてる?』


「はい」


『え゛? それマジ? マジで言ってんのそれ? だって彼が作ったっていうなら、一体いつから作り始めたのサあれ!』


「確か……製作に取り掛かったのは八歳頃だったと聞いています」


『ちょ、なにそれ、いくらなんでもおかしいでしょ……』


「おかしいと言われても、実際出来上がったものがああしてあるのですから」


『でも、だからって、あれは原始的とはいえ魔力線量測定器なんだゼ? しかも温度計がないのに、使いやすいようにきちんと温度計に落とし込んでるんだ。そもそも変性銀を作る装置だって必要なのに、これって一体どういうことなんだよ……』



 悪魔は、随分と混乱しているらしい。いままで聞いたことがないような声音を出している。

 確かに魔力計は驚くべき発明だ。現実にこんなものがこうして存在することに、驚いてしまうのも無理はない。

 しかし、悪魔は自分たちが目を瞠った部分とは、別のところに衝撃を受けているらしい。



「リーシャ」



 話を聞くに、段階飛ばしをした開発だからという理由らしいのだが。



「リーシャ?」


「え? は、はい! なんでしょうか。父様」


「リーシャ、どうした? なにか気分でも悪くなったか?」


「いえ、なんでもありません。大丈夫です」


「ふむ、では緊張したか? 今回は貴賓や上級貴族もことのほか多いからな。こういうことも今後増えるだろう。いまのうちに慣れておきなさい」


「承知いたしました」



 悪魔と話していたことを悟られぬよう、父にしっかりと返答する。

 その一方で、心の中で安堵の息を吐いた。



 危なかった。悪魔との話にかまけ過ぎていたせいで、周囲に気を配るのがおろそかになってしまっていた。上の空に見えないよう、今後もよく気を付けるべきだろう。



『油断したね』


「誰のせいですか。誰の」



 悪魔と小声でそんなやり取りをしたあと。

 ふと、父ジョシュアが会場内を見渡す。



「王家主催の会だ。やはり魔力計ともなれば、これだけの数が集まる」


「はい」


「重要な地位にいる方たちばかりだ。こういった会に出られるということは、光栄なことだ」



 父ジョシュアの言う通り、国内で高い地位にいる者だけでなく、海外の貴賓も多い。

 普段ならば話をすることはおろか、お目にかかることもできないだろう。



「この会にそぐわない者も、ここにはいるようだがな」


「…………」



 ジョシュアの顔が、苦虫を噛み潰したように渋く歪む。

 どうやら父は、すでにあの人の存在に気が付いていたらしい。

 父はあの人に対し、疎むような視線を向ける。

 肉親であるはずなのに、仇敵を目にしたような冷ややかなまなざしだ。

 それだけにとどまればよかったのだが、父はクレイブの話を聞くのも途中にして、無言のままあの人へ向かって歩き出した。



「と、父様?」



 呼びかけても、ジョシュアは聞こえていないのかずんずん進んでいく。

 こちらは慌てて、その背中を追いかける。だが、父が止まる気配は一向にない。

 やがてあの人も、父が近づいてきたことに気づいたのか、こちらを向いた。

 その顔は剣呑そのものだ。あの人も父同様、さながら仇敵が近づいてきたかのように、目を細めて待ち構えている。

 父はあの人の前に立つと、あの人を静かに威圧し始めた。



「どうして貴様がここにいる」


「今日は伯父上の付き添いでまかり越しましたが、何かありましたか?」


「この度のものは王家が主催する会だ。貴様のような者が出席できるような会ではない。ならば、身の程を弁えて辞退するのが普通だ。お前の頭ではそんなこともわからなかったのか?」


「いえ、私もそうするべきと伯父上に願い出たのですが、国定魔導師である伯父上の強い命令であればいかんともしがたく、こうして出席になった次第です」



 視線が交差し、火花が散る。



「体調が良くないとでも言って引き下がることもできるだろう」


「すぐにバレる嘘を吐くのは、それこそ度量が知れるというもの」


「ふん。頭を使うこともできないか。だから貴様は無能だというのだ」



 父がそんなことを言った折、あの人は一度大きなため息を吐いた。

 そして、



「――いちいちうるせえんだよこのクソ親父」


「な……!?」


「なにが立場を弁えろだ。単に俺の顔を見て気分を害しただけなんだろ? 親の義務もまっとうできないくせに、いちいち保護者面して説教なんてするんじゃねえよ」



 あの人は肩を大仰にすくめて、父に冷めた笑みを差し向ける。

 当然父の顔はみるみる紅潮していった。



「貴様っ!」


「なんだ? 反抗されて腹でも立ったかよ? 余裕ぶった態度してる割には、随分沸点が低いんだな」



 ふいに、父の腕が持ち上がる気配がしたそのとき、さらにあの人の口が追撃を放つ。



「ん? 前みたいに感情に任せてぶん殴るか? いいぜ? やってみろよ。そんなことここでした瞬間、レイセフト家は終わりだ」


「不心得者を罰するだけだ。お家に罰を与えられることなどない」


「そうかな? こんなとこでそんなことしたら、すぐに騒ぎになる。なんなら俺がそうしてもいい。年相応にピーピー泣けば周りの注目も集まるだろ。折角の会に水を差せば、お家は一体どんな目に遭うかな?」


「そんなことをすれば貴様とて」


「俺は構わないぜ。死なばもろともだ。いますぐ『領地で隠居』にまで引っ張っていってやるよ」



 あの人はそう言って、父をにらみつける。

 この場と立場を逆手に取った綱渡りにも似た攻撃だ。



 ――うわ、君のお兄ちゃんってばよくやるね。



 悪魔のひきつった声が聞こえる。

 こういうときのあの人は、大胆不敵だ。

 これまでも綱渡りが多かったためだろう。覚悟や度胸が他の子供とはまるで違うのだ。

 お家のことを盾にされれば、父もやすやすとは手を出せないか。



「っ、調子に乗りおって……!」


「どっちがだっての……!」



 あの人と父が、圧力を高めあう。

 殺気を含んだ視線がぶつかり合っているせいで、火花が散っているように見えるほどだ。

 父の威圧感もそうだが、あの人の発する気もなかなかのもの。以前のあの人は気圧されるだけだったが、いまは耐えられるまでになっている。



 だが、ぶつかり方が強すぎる。

 であれば、周囲に気付かれるか。



(このままでは、本当に……)



 どうにかして仲裁に入ろうと模索していたその折。



「――おやおや、そこにいるのはレイセフト子爵かな?」



 ふと、横合いからそんな声がかかる。

 声は、女性のもの。だが、この場にしては随分と飾り気がない口調である。

 振り向くとそこには、以前あの人の家で出会った、ルイーズ・ラスティネルの姿があった。



「これは、ルイーズ閣下……」



 ルイーズの姿を見とめた父は、やがて我に返ったように略式の礼を執る。



「お見苦しい姿を見せて申し訳ございません」


「なにか変わった様子だったけど、問題でもあったかい?」


「いえ、お家の事情でありますれば、ご容赦いただきたく」


「そうかい? 込み入った話だったならすまないね。だけど今回は王家が主催する会だ。陛下の臣として、会に水を差すようなことには極力排除したくてね」


「は……申し訳ございません」



 ルイーズのトゲのある言葉に対し、父は会釈程度に頭を下げる。

 そんな父に対し、ルイーズは不穏な笑みを向ける。



「なあ、子爵も楽しいだろう? 今日という日は、王国の魔法史の新たな歴史の幕開けを感じさせるものだ。あんたも魔導師なら、そう思えるんじゃないかい?」


「…………は」



 ルイーズが差し向けたのは、「頷いておけ」と言うような恫喝的な笑みだ。

 騒ぎなんて起こそうというのなら、ただじゃあ置かないと、笑顔が語り掛けている。

 父はルイーズの話に同意したあと、目を伏せて頭を垂れた。

 ルイーズは事態が完全に収まったことを確認し、こちらを向く。



「リーシャ嬢。元気そうだね」


「閣下、ご無沙汰しております」


「リーシャ? 閣下と面識があるのか? 一体どこで」


「ああ、前にちょっとね。クレメリアのお姫様と一緒に挨拶をしにきたことがあってね」


「そ、そうでしたか……」



 確かに、あのときはシャーロットの付き添いと言うことで誤魔化したため、ルイーズの言葉に間違いはない。

 ともあれ、自分が動くならばここだろう。

 目くばせでルイーズに謝意を示して、父に声を掛けた。



「父様、そろそろ……」


「そうだな。貴様も、お家の恥になるような真似はするなよ」



 父は最後にそう言うが、しかしあの人はそっぽを向いたまま、口も利かない。

 父にとってはその態度も腹立たしかったようだが、さすがにルイーズがいる前では交ぜっ返すことはできないか。

 そのまま大人しく、もと居た場所に歩き始める。

 ありがとうと言うように目配せしてくるあの人に頭を下げて、父に続く。



 その最中、悪魔が後ろから話しかけてきた。



『……君のお父さんって、こんな感じの人だったっけ?』


「……はい」



 悪魔も、これまで何度も自分の後ろから父を見ている。

 いまそんなことを訊ねたのは、そのときに見る父の顔と、いまの父の態度がかなり乖離しているためだろう。

 やはり、レイセフト家の家族関係に疑問を持ったらしい。



『あれ、お兄ちゃんなんでしょ? 一緒にも暮らしてないみたいだし、どうしてまた』


「父や母は兄のことを、魔力が少ないという理由で疎んでいるんです」


『あー、魔力至上主義者ね。この時代にもいるんだ。いやまあ、いないわけないんだけどサそういうのは。ああ、それで家庭事情が複雑なことになってるってこと』


「……ええ」


『なるほどなるほど親が子を疎むのか。ククク……自分の子供だから余計目障りに感じるんだろうねぇ。まさに人間って感じじゃないか』


「そんなものなのでしょうか……」


『そうだよ。人間なんてそんなものサ。家族なんてのは特に近い場所にいるから、一度疎ましく思ってしまうとどうにもならない。それこそ毎日一緒にいるからね。見たくもないものを否が応でも見ることになる。それだけ嫌気の積み重なりが大きくなるってわけサ』


「だから、父も母も、あの人をあんなに毛嫌いするのでしょうか」


『そうサ。家族だからとか、肉親だからとか、どこかに情があるとかそういう風に考えない方がいいゼ? 特に君は貴族なんだ。金や権力が絡めば、親兄弟だって醜く争う。親子の美しい愛なんて物語で語られるだけのまやかしだよ。ハハハハハ!』


「…………」



 そんなことを言われて、無性に悔しい気持ちになる。

 そんなことはないと思いたいが、きっと悪魔の言う通りなのだ。

 もう二度と、父や母があの人に歩み寄ることはないのだろう。



『おいおいそんな顔するなよ。僕は真実を教えてやっただけだゼ?』


「……あなたは本当に意地が悪いですね」


『そりゃあどうも。リーシャちゃんも、わかり合えるなんて希望、持たない方がいい。信じて信じて信じ抜いた果てに、結局裏切られたときの落差はそりゃあデカいもんさ。それこそ目の前が真っ暗になる』



 悪魔は最後に、そんなことを口にする。

 その声にはどことなく、真実味があったような気がした。




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