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第百十六話 発表パーティーその一



 アークス・レイセフト、十三歳。



 魔法院への入学を控えたこの年、年始早々、彼にとって大きなイベントがあった。

 それはもちろん、アークスが作った魔力計の正式な発表だ。

 これによって、魔導師ギルドから魔力計の存在が正式に公表され、軍関係や医療関係で使用されるのみだった魔力計が、各省庁や魔法院、魔導師系の貴族たちも恩恵を受けられるようになる。



 それにあたって、国内、国外の人間にも魔力計の存在を広く知らしめるため、王城で大規模な発表パーティーを行うことになった。



 招待客は王国の貴族たちだけにとどまらず、北は北部連合からダルネーネス領の領主やサファイアバーグの国王、佰連邦(バイリャンバン)からは特に懇意にしている士大夫(したいふ)、ライノール王国に従属する十君主たちが揃った。



 会場は王城の大広間で、その規模は論考式典と比べても遜色ない。

 豪勢な飾り付けで彩られ。

 テーブルの上には沢山の料理が並び。

 多くの貴賓が招かれるため、王城の中庭も解放されているほど。



 会場の一角には、以前王家に贈った巨大な魔力計が置かれている。

 発表パーティーと銘打って開催した通り、成果の発表の場というよりは、社交場を兼ねた宴会場というのがしっくりくる。お祝い事が好きなのは、どこの人間も同じということだろう。催し物の盛大さ、派手さは、国の豊かさを内外に示す機会の一つ。特に、魔法界の今後に寄与する物品の発表となれば、税の無駄と言って粗末なものにはしておけないということだ。



 もちろん今回の場では製作者の発表は行われないため、パーティーには伯父であるクレイブの付き添いという形で呼ばれることになった。

 製作者発表のときはパレードやら記念日の創作やらと、もっともっと大掛かりにやるらしいと聞いて、いまから戦々恐々中。



 パーティーが開催されてしばらく。

 貴賓への魔力計の説明は、共同で開発、出資もしてくれたクレイブが担当。

 ワイルドな見た目の筋肉魔人が知的な説明をしているのは、なんともちぐはぐさが拭えないが、それはともあれ。



 現在、会場の中央には、魔力計のサンプル品が置かれている。

 当然来賓はみな、そこに群がっており、サンプル品を手に取って矯めつ眇めつ。

 さながらワインボトルを手に取って見ているかのように、掲げて透かすように眺めたり、穴の開くほど凝視したりと、それぞれ様々な方法で魔力計の仕組みを見極めようとしているようだ。



「素晴らしい」


「このような物を作ることができるのか」


「やはり王国の技術力はさすがというほかない」



 だれしも、口から出てくるのは魔力計のことを褒め称える言葉ばかりだ。

 これを革命的な大発明と言って憚らず、ひいては王国の魔法技術がさらなる発展を迎える事実に唸っている。

 そうして聞こえる声は、感嘆なのか、嘲笑なのか、恐れなのか。

 胸の内の動きまではわからないが、貴賓たちに衝撃を与えたということは間違いないだろう。

 一部は称賛やおべっかを口にしつつも、付き添いの魔導師たちにどういう仕組みなのかをしきりに探らせているらしい。



 ……魔力計の構造は単純なものだ。ガラス技術や工芸、細工の腕さえあれば、外見を真似することはそう難しくない。だが、同じ中身を用意するとなると話は別だろう。感液である【錬魔銀】の作製には【錬魔力】を必要とするため、それ生み出す知識があるかどうかが鍵となる。



 別の国にも、クレイブが持っていた書物が存在し、それを解読する。



 解読したことを何時間も何時間も根気よく実践する。



 そこで生み出された【錬魔力】を【魔法銀】に過剰に当て続け、その特性を変質させる。



 それらの偶然が必要となる。

 しかも、感液として使われた【錬魔銀】はすべて辰砂で赤色に着色しているため、魔力計を見ただけではどんな材質でできているのか到底わからない。

 それに、たとえ【錬魔銀】を再現できても、運用に関してのノウハウまで再現するとなると膨大な時間がかかるだろう。使用方法の共有もそうだが、計測器を運用するには精度を常に一定、一律に保たなければならないのだ。



 時計が時間を合わせなければ使い物にならないのと同じ。

 計測器もまた、基準をしっかりと定めてそれを広範に知らしめなければ意味はない。



 いまはみなそれが当たり前のように使っているが、自分はその運用ノウハウを構築してから世に送り出した。

 製作に当たってあらゆる手順や知識を構築しなければならないため、一朝一夕にできるものはない。



 ……個人的にこの件で最も重要なのは、魔力計という計測器自体ではなく、この計測器の運用に関するノウハウだと思っている。

 たとえ他国が独自で魔力計を再現できたとしても、魔力に対する錬魔銀の膨張率や、これが調整しなければ使い物にならないデリケートなものという意識の構築には、少なくとも年単位を要すると思われる。



 これらの構築までにかかった書類仕事の量は伊達ではない。

 記憶力と書類コピー魔法を駆使して、それでも五年近くの時間を要したのだ。

 かなり手順をぶっ飛ばしたという自覚はあるし、魔法技術のパラダイムシフトに貢献したことは間違いないだろう。

 こんなことそうそう真似できないし、この苦労を簡単に真似されて堪るかというもの。



 今回の発表に関しての調整のときに、他国の模倣などの憂慮を改めて話し合ったのだが。



「……なるほどな。確かにそなたの言う通り、容易には真似できないであろうよ」



 国王シンル、王太子セイラン、そして国定魔導師たちの集う場にて。

 セイランが、得心がいったというような言葉をこぼす。

 他の国定魔導師たちも同意見なのか、特に発言はしないまま、魔力計に視線を落としたり、資料をめくったり。

 その一方でアークスは、以前と同じように資料を片手にプレゼンをしている。



 説明からしばしの沈黙のあと、ギルド長ゴッドワルドが口を開く



「……アークス。お前はこれを最初から見越していたのか?」


「見越していたというよりは、最適な運用法が取れるように作業を進めていたと言う方が正しいと思います。運用法がここまで浸透したのは、やはり結果論でしかありません。作製に当たっては何度も伯父上に助言していただきましたし、魔導師の方々が魔力計の導入に意欲的だったのが最も大きな理由でしょう」



 そう、ここまで進めることができたのは、権力を持つ者や専門家が、非常に協力的だったことが挙げられる。

 世の中、新しい技術の導入には拒絶反応を起こす者も多くいるのだ。もし王国の魔導師が本人の感覚のみを至上とし、職人技と呼ばれる勘を尊ぶ者たちばかりであれば、これほど早く浸透することはなかっただろう。

 その道のトップランナーたちはみな新しい技術に目がないし。

 彼らの持つ権力が大きかったゆえ、こうしたゴリ押しも可能だったというわけだ。

 それがなければ、魔力計を発表するにあたって、様々な邪魔が入っていたはずである。



 ギルド長が続けて訊ねる。



「もう一度訊くが、技術が模倣される恐れはないのだな?」


「はい。他国がこれを作る場合。錬魔銀の作製に始まり、専用のガラス容器の設計から、真空という概念の確立、錬魔銀の膨張比率の均一化。それ以外にも、魔力計の数値の土台となる運用基準の構築から、それの周知まで行わなければなりません。それらの膨大な情報が、これです」



 そう言って、資料を示す。運用法に関しては、あの男の国の広辞苑並みの分厚さの資料が二山。テーブルの上に乗せれば、ずどんと音がなりそうなほどの重量がある。



「他国にこの量の情報がやすやすと編纂できるのか。現状でも魔法技術においては王国が周辺国から一歩リードしているこの状況でその競争に勝つことは、果たしてできるのか否か」


「できないだろうね。数値の設定、運用法、周知、思い付くのもそうだが、それを実行するまでどれだけかかるか。現物を作る以上の労力と時間がかかるだろう」


「他国の魔法技術の進行具合を考えれば、十年では利かないです。そして、十年進めば、王国はさらに十年進んだ技術を持っている、です」



 ローハイム・ラングラー、続けてメルクリーア・ストリングが発言する。

 すでに王国の主だった魔法は、どの程度魔力量が必要で、どの単語にどれくらいの魔力を消費すればいいのかが解析されている。



 一方で他国は魔力計がないため、いまだ感覚に頼るのみで、たとえ魔力計を手に入れられても、まずそれを調べる作業から始めなければならない。

 この穴を埋めている間に、王国は魔力計を用いて魔法技術をさらに発展させるだろう。



 ふと、ミュラー・クイントが口を開く。



「……私たちは、これを受け入れるだけでした。魔力計の性能に熱狂し、月ごとに送られてくる資料を読んで、自分の研究のために生かす。よくよく考えれば、ここにたどり着くまでにもっと時間がかかってもおかしくはなかった」


「確かに、魔導師ギルドや王家の肝入りとはいえ、浸透は早かったであるな」



 そんなガスタークスの発言に、一人の男が続く。

 豪奢な伝統貴族の衣装に身を包んだ、でっぷりとした腹を持つ男だ。

 年齢は、三十歳前後。常に顔をにこにこと綻ばせており、人当たりの良さが窺える。

 ライノール王国の属国である、ツェリプス王国国王、【疾風の魔導師】アル・リツェリ・バルダン。



「うむ、うむ。余もモノづくりは好きだが、作ったら作ったものを投げっぱなしであるからな。それでよくみなを苦労させるものよ。よく存じておるよ」


 そんなことを言った国王アルは、こちらを向く。


「モノづくりに関しては、そなたは余の好敵手であるな」


「は、恐れ多いことでございます」


「うむうむ。そなたとは一度、開発談義に花を咲かせてみたいものだ」



 国王アルはそう言いながら、軽快に笑っている。

 国王という肩書きを持っていながら、随分とフレンドリーな気質だ。

 なんというか印象は、朗らかでさわやか。王様なのに随分ととっつきやすそうだとか、巨漢なのに疾風という二つ名が付いているとか、どうもイメージがちぐはぐすぎる男である。



 そんな感じで、今回の集まりには前回にはいなかった面々もいる。



「――ウサギさんに質問があるんだけど」



 ふと口を開いたのは、車椅子に乗せられた少女だ。

 集まった面々の中でもひときわ異彩を放つこの魔導師は、色素の薄い青い長髪と同色の瞳を持っており、服はいつか封印塔で見た囚人服を着せられている。

 車椅子に乗っているが、別段足が悪いわけではなく、それは拘束のためのもの。

 まるで包帯でぐるぐる巻きにされたミイラのように、ベルトでがんじがらめにされていた。



 国定魔導師最年少。【渇水】の二つ名を持つ魔導師、アリシア・ロッテルベルだ。

 なんでも彼女は危険人物という認識らしく、こうして常に拘束されているらしい。

 だからと言って国定魔導師たちや国王シンルも特に警戒していないのは不思議なのだが。

 そんな話はともあれ。



「うさ……なんでしょう?」


「ウサギさんはどうして、すべてを自分の物にしなかったのかしら?」


「それはどういう意味でしょう?」


「つまり、基準はあなたが自分で全部作り直せたってこと。あなたが本気になったら、既存の魔法に数値を合わせず、既存のものに取って代わる新しい魔法や基準を作って、それを国内に広めることもできた。そうすれば、あなたが王国の魔法の支配者になることだってできたはずよ? いえ、いまからでもそれはできない話じゃない。むしろここまで食い込ませることができたなら、乗っ取りなんて簡単なことじゃないかしら?」



 確かに、彼女の言う通りかもしれない。

 王国には既に基本となる魔法が広まっており、今回はそれらの必要魔力量を解き明かした資料をもとに、このマニュアルを構築した。

 これがもし、新しい魔法を作ったうえで、その魔法だけしか数値の資料を作成しなかったとすれば、彼女の言うようなことにもなるのだろう。



 だが、



「私はそんなことなど、考えたこともありません」


「そうかしら? それを考えるのが普通だし、考えられない頭ではないでしょう?」


「そんなことをしても、意味がないと思います。使いにくい魔法は淘汰されますし、たとえ魔法を広めたとしても、魔導師は常に新たな魔法を作ります。それに、地域地域で使用されてきた特色ある魔法などは残る傾向にあるでしょう」


「今回は王家の後援があったわ。それを利用すれば刷新できるのではなくて?」


「それをしたとして、です。先達たちが残した魔法は洗練されていますので、それを変えるとなれば大きな反発を生むでしょう。そして魔力計の製作に至っては、その精度の競い合いが始まるでしょう。独占し競争を遅らせれば遅らせるだけ、進歩に遅れが生じます」


「ふうん。つまり、ウサギさんはこれが未来でどう扱われるのか、わかっているってことね」


「…………」



 この少女、不思議ちゃんムーブをしているかと思いきや、視座が広いと言うか、物の見方が他とは違う。確かに、あの男の世界の考え方と照らし合わせているため、考え方としては未来を見ているというのがしっくりくるかもしれないが、よくもまあそんな部分を掬い上げようとするものだ。



 不用意な発言をしないよう警戒していると、アリシアは年齢に見合わぬ妖艶な笑みを見せる。



「あら、ウサギさん。そんなに怯えなくてもいいのよ?」


「いえ、国定魔導師は恐れるべき存在として自得しています」


「ふふ、なら訊くけど、あなたがこの運用法を使って次にすることはなぁに?」


「今後作られる計測器の数値基準を、統一するということでしょう」


「具体的には?」


「例えば、そうですね。呪詛(スソ)の量を測る計測器を作ったとして、その数値はその魔法を使うときに必要な魔力と、その魔法を使って出る呪詛(スソ)の量数を合わせるといったところでしょうか」



 そんな話をしていると、ローハイムは得心がいったというように首肯する。



「ふむ、なるほど。確かに」



 一方で、幾人かの魔導師たちはあまりピンと来ていない様子。そんな者たちを代表して、ミュラー・クイントが訊ねる。



「ローハイム様。その意義とはなんでしょう?」


「クイント卿。なんということはない。その方がわかりやすいし、共有がしやすいからだよ」


「共有、ですか」


「はい。現在、マナという単位を使用していますが、10マナを消費する魔法を使用したときに発生する呪詛の量を同じく10という量にしないと、割り出すときにいちいち計算しなくてはならず、手間がかかるからです」


「そうなると、対応する数値を覚えきれない者も出てくるだろう。伝達時に、早見表も必要になる」



 確かに、数値がバラバラであれば、伝えるときに手間がかかる。

 摂氏や華氏、メートル法、ヤード・ポンド法などと似たようなことになるのは明白だ。特にヤード・ポンド法は国によって数値の値が微妙に異なるということもある。

 まずは呪詛(スソ)排出のメカニズムについて考えなければならないが、統一は必須だろう。



「そうね。つまりウサギさんがそう考えるのも、わかりにくいものを見たことがあるってこと。ふふふ、一体あなたはどこで見たことがあるのかしらね」



 ……やはりアリシアは、穿った見方をしてくる。

 これに取り合うと泥沼にハマる可能性がある。ここは下手に発言せず、沈黙で応じるのが正解だろう。

 こちらの警戒を悟られたのか、アリシアはその様子を面白そうに眺めている。

 正直、苦手なタイプだ。油断していると取り込まれてしまいそうな不安感が襲ってくる。



 そんな中、フード姿の女性が視線を向けてきた。



「その呪詛(スソ)の計測器というのは、すでに?」


「いえ、たとえとして例に挙げただけで、まだ着手はしていません」


「……そうか」



 声に、はどことなく残念そうな色がにじんでいた。

 猫耳のような突起が付いた黒フードを被った女性。

 彼女の名前は、シュレリア・リマリオン。彼女は、友好国であるサファイアバーグから選ばれた国定魔導師だ。二つ名は【狩魔】。魔物狩りの名手と言われており、以前サファイアバーグで発生したスソノカミを滅ぼしたことで、国定魔導師に推挙されたのだという。



 彼女が興味を示したのは、サファイアバーグでは定期的に魔物の被害に遭っているためだろう。魔物が出現する原因である【呪詛(スソ)】の量を測定することができれば、突発的な被害を防ぐことが可能になるかもしれない。



「陛下」



 ギルド長が、国王シンルに声を掛ける。



「いいだろう。運用法の先んじた構築、その資料の死守さえしていれば、他国もアークスが構築した王国の運用基準に沿わざるを得ない。魔法技術に関しては、ますます王国の傘を頼らざるを得ないわけだ――ガスタークス」


「この老骨、魔力計がいずれ広まるものだと推察すれば、他国がこれを構築する前に運用法を広めてしまうべきかと存じます」


「ローハイム」


「ガスタークス様のおっしゃる通り、他国に先んじて新しい基準を作るというのは大きな利益を生むでしょう。政治的にもここは多少無茶をしてでも、公表するのには意味があるかと」


「ふむ……」



 ガスタークス、ローハイムともに肯定的だ。ギルド長はもともと仕掛け人の側なので、これで上位三席のお墨付きが出たということになる。



「では、陛下」


「ああ、可決だ」



 ギルド長の訊ねに答えるような形で、国王シンルが最終的な決定を下す。

 それに合わせて、国定魔導師たちに文書が回され、それぞれが判を押していく。

 すでに公表に向けて動き出しており、稟議も多分に形式上のものだったが、これで魔力計は正式に発表される。

 書類にすべての判が押されたあと、ふとシンルがこちらを向いた。



「アークス」


「はっ」


「俺たちはこれを受け入れるだけだった。お前が俺たちに合わせて基準を構築しただけだからな。まあ簡単だ。だが、お前はそうなるように全部最初から、そう仕向けたってことだ。本来ならば運用法の構築も、もっと手探りだったとしてもおかしくはないはずだな」


「……確かに、そうでしょう」


「さっきアリシアの言ったことと同じだが、お前はそれを一体どこから持ってきた?」


「陛下。天秤ばかりと同じです。その知識に合わせて構築したにすぎません」


「馬鹿を言うな。これはまったく別の方式だ。お前はそのやり方を全部わかってやったんだろう?」


「それは……」



 こちらが答えに窮していると、シンルは口元に笑みを作る。



「まあ、思いついたことをしらみつぶしにしていった、ということもあるか。やはりお前の頭は一度開いてみるべきだな」



 シンルはそう言って、豪快に笑い出した。

 こちらは本当に頭を割って開かれそうな気がして、全然笑えないのだが。



「これからも研究は好きにやって構わん。お前たちも、あまり詮索はしてやるなよ」



 シンルがそう言うと、集まった面々から了承が返ってくる。

 これについては詮索されても答えに困るものであるため、シンルからそう言ってもらえるのはこちらとしてもありがたかった。



 ともあれ先日の魔導師ギルドでは、そんな話がされたわけだが。



 もちろん今回のパーティーにも、国定魔導師たちが出席している。


 クレイブは自分の代わりに魔力計のことを説明しており。


 ギルド長ゴッドワルドは近衛と共に国王シンルに付き従い、第三席ローハイムは王太子セイランの脇に控え、大英雄であるガスタークスは一族を率いて会場の一画を占有中。


 クルミをにぎにぎしているのが印象的なフレデリックは近衛の一部と、国定魔導師カシーム・ラウリーと共に王城警護。


 ミュラー、メルクリーアは各貴族、諸侯への挨拶回り。


 国王アル、サファイアバーグのシュレリアも出席しており、アリシアのみ欠席という状況だ。


 クレイブ以外との接触は、極力控えるといった形になっている。



 ……皿に盛った料理を食べ終わった折、とある男の姿が目に入った。

 その男も、こちらの存在に気づいていたようで、不機嫌な様子を隠そうともせずに近づいてくる。

 それを見ているだけで、埋火のような怒りが、沸々と湧き上がってくるのを感じた。




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