第百十五話 リーシャの冒険その二
――落ちた、と、そう自覚できた直後、お尻に衝撃が走る。
「いたた……」
垂直に堕ちたわけではなく、急な斜面を滑り降りたような格好になったため、着地のダメージは思いのほか少なかった。
やがて動けるくらいには痛みが引いたため、立ち上がる。
おそらく足場が崩れたのは、先ほど地面を利用する魔法を使ったせいだろう。
もともと下には空洞があり、無思慮に魔法を使ったため、足場が脆くなったのだ。
まさか下にもこれほどの空間があるとは思わなかった。
上から、声が響いてくる。
「お嬢様ー! ご無事ですかー!?」
「――! はい! 大丈夫です! そちらの様子はどうですか!?」
「こっちも問題ありません! すぐに引き上げる準備をしますんで、ちょっとお待ちください!」
「わかりました!」
真っ暗な中、天井に向かってそう叫び、次いで先ほど光源を確保したように、明かりを生み出す魔法を使う。
再び周囲に漂う緑光。これで周囲の確認ができるようになった。
周囲を見回す。どうやら落ちた場所は、かなり開けているらしい。
天井も高く、周囲の幅も広い。先ほどまで二人と歩いていた狭い通路とはかなり違うということが窺えた。
空間内には、高く盛り上がった場所があった。よく見ると、何かしら祭壇のようになっているらしい。
箱のようなものが置かれており、かなり劣化が進んでいるようだった。
「これは……」
箱の劣化具合はかなりひどく、少し力を加えると簡単に崩れるほどだ。
どうやら先ほど尻をぶつけたものがこれらしい。
上面がお尻の形に丸くへこんで、ひしゃげている。
「うぐ……」
自分のお尻の跡がついた残留物を見て、恥ずかしさを感じつつも、箱を調べる。
蓋をどけて中を見るが、しかし、中身らしきものは何もない。
一体これは何なのかと怪訝に思っていると、不意に上から、争うような音が聞こえてくる。
「ラルフさん! なにかありましたか!?」
「っ、さっきの残りがいたようです! すぐに終わらせますんでもう少々お待ちを!」
「はい! そちらもお気をつけ――っ!?」
上にまだ〈ひとぐも〉がいたらしいが、残りがいたのは上だけではなかった。
背後に物音と気配を感じ振り向くと、松明に照らされていない奥の闇の中に、赤く光る小さな玉がいくつも見えた。
先ほど戦った〈ひとぐも〉に違いない。
しかも数は……かなり多い。五、六……いや、七はいるだろう。
「つまり、ここが巣……ということですか」
これだけ数がいるということは、そう見て間違いないだろう。
最初に戦ったのは斥候で、いま上で戦っているのが本隊、そしてここが、その残りがいるねぐらということだ。
〈ひとぐも〉が動き出したのを見て、すぐに魔力を発散する。
魔力の放出は、相手を威嚇するのにちょうどいい。物理的な攻撃にはならないが、相手をしり込みさせることができる。
魔力に怯えたのか、〈ひとぐも〉たちは後ろへ下がるが、しかしこちらへの害意はまだあるらしい。奥の闇に身をひそめながらも、常にこちらの様子を窺っている。
先ほど数体を倒し、絶対的な力量差はないということを知ったため、ひどい恐怖を覚えることはない。
だが、焦りとなるとまた別だ。
開けた場所だが、閉鎖空間であり、状況的にはかなり不利。背後は壁で逃げ場もなく、追い詰められたような格好だ。【後塵の炎王の繰り手】が使えれば容易く切り抜けられる状況だが、こんな狭い場所では扱いにくい。
焦る思いが心を乱し、冷静な思考を阻害する。
そんな中、〈ひとぐも〉がこちらに向かって飛びかかってくる。それを、身を投げ出すように飛んでかわして、地面をゴロゴロと転がった。口の中に砂でも入ったのか。歯や舌に感じるじゃりじゃりとしたものぷっと吐き捨てて、すぐに起き上がる。
「……っ、私は負けません! 私は、あの人に置いて行かれたくないんです!」
考えるのは、あの人のことだ。
そうあの人は、いまも揺るがない目標だ。
頭もよく、いろいろなことを知っていて、にもかかわらずそれに奢ることなく。
自分が辛い目に遭っても、いつも優しく接してくれて、常に前を歩んでいた。
そんな彼に置いて行かれたくないと、そんな風に思い始めたのはいつからだろうか。
あの人が、様々な呪文を生み出し、身に付けていったときからか。
それとも魔力計なるものを作ったと知ったときからか。
どんどん遠くに行ってしまうような気がして、いつしかそれを不安に思うようになっていた。
もう一緒に遊べなくなるのではないか。
もう自由に話もできなくなるのではないか。
二度と会えない場所に、行ってしまうのではないか。
あの人が何かをして、何かをなすたびに、そんな考えは強くなっていった。
自分は、それが嫌だった。本当なら、もっと一緒にいられたはずなのに、もっと遊んだり話したりすることができたはずなのに、その当たり前を当たり前にする前に、自分の手の届かない場所に行ってしまうのではないかと。
そんな不安だ。他愛のないものだろう。
褒めて欲しいわけでも、優しくして欲しいわけでもない。
ただ一緒にいたいという、ささやかな願いだ。
それが叶わないと思うと、ひどく胸が苦しくなる。
だから、こうして求めるのだ。前に進むのだ。
追いつくことはできなくても、決して、置いて行かれないようにするために。
『――我が意思よ火に変じよ。ならば空を焼き焦がす一槍よ、立ちはだかる者を焼き貫け』
咄嗟に呪文を唱え、〈ひとぐも〉に炎の槍を突き立てる。
つい火の魔法を使ってしまったが、これだけ開けていれば一度や二度なら大丈夫だろう。
次はどこから、どの〈ひとぐも〉が仕掛けてくるか。
判断しかねていた、そんなときだった。
――おっと、横も気にした方がいいんじゃないか? 前ばかり見てると、危ないゼ?
背後から、そんな声が聞こえてくる。
声質からして、年若い少年のもの。
咄嗟に横に視線を向けると、そこには赤く光る目と、棘を持って構えた〈ひとぐも〉の姿があった。
横跳びをして、魔法を放つ。
その魔法は当たらなかったものの、〈ひとぐも〉を大きく下がらせることに成功した。
――お? うまくかわせたじゃん。上手上手。その調子だよ。ほら、今度は右だ。
この声がなんなのかは、わからない。だが、そんなことを考えている暇も、いまの自分にはない。自分を助けてくれるというのなら、耳を傾けるまで。
指示の通りに右を見ると、やはり、〈ひとぐも〉がこちらに向かってきていた。
咄嗟に魔法で土を盛り上げて、〈ひとぐも〉の突進を防ぎつつ、空間内の一部をふさいだ。
これで〈ひとぐも〉の移動先が限定されて、多方向からの攻撃に翻弄されることはなくなった。
そんな中も、〈ひとぐも〉三体が、狭くなった空間を押し合いへし合い向かってくる。
互いに譲り合うという意識や知能も欠如しているのか。
互いに引っかかって押すな押すなの状態。
すぐにはこちらにたどり着くとこはないが、しかし、こういった物量戦をされると魔導師は途端に弱くなる。
――この連中はあれだね。光に弱い。
「光に弱い?」
――そうそ。見なよ、君が出した光を嫌って避けているし、下の蜘蛛の身体があからさまにあっち向いてないだろ? 暗いところにいる奴ってのは、総じて強い光に弱いんだよ。
「なら……」
声の言うことを聞いて、すぐに兄に教えてもらった目晦ましの魔法を用いる。
『――夜でも昼でも明るく眩しい偽物太陽ここにあり。天に満ちろ地に満ちろ。陽光なんて目じゃないぜ』
――【目潰しの術】』
先ほど使った照明の魔法よりも、数十倍強い光を発すると、〈ひとぐも〉たちは目が潰れたかのようにめちゃくちゃな動きを取り始める。
あるいは洞窟の岩肌にぶつかり。
あるいは仲間同士で衝突する。
一方でこちらは石壁の端に身を潜め、一体ずつ確実に【石鋭剣】を用いて倒していく。
これで都合四体目。残りは三。
――やるぅ。でも、だからって油断したらダメだゼ? ほら、奥の奴が陰から君のことを狙ってる。ほら、右後ろに飛んだ飛んだ。
「――ッ!?」
言われた通りに右後ろに飛ぶと、それまでいた場所に槍のような棘が突き刺さる。
言うことを聞かなければ、串刺しにされていただろう。
声の主の指示は、やたらと的確だ。
まるで俯瞰した視点からこちらに指示を出しているかのようにも思える。
『――打て。叩け。殴れ。空に満ちるものは寄り集まって塊となし、手を模って痛打せよ。打ちのめす腕は彼方まで、その力は此方の如く。凪いでもやまぬ風の打擲』
――【風の鉄拳】
風の魔法で〈ひとぐも〉をけん制し、後ろに下がらせたそんな中、土壁の魔法の効果が切れ、空間内の一部をふさいでいた壁がなくなってしまう。
「っ――」
このままでは、他の〈ひとぐも〉も、すぐにこちらへ殺到するだろう。
魔法ひとつで、まとめて倒してしまいたい。
そんなことを考える中、ふいに強力なうえ、呪文も短いとある魔法を思い出す。
これだけ開けた空間ならば、あるいは――
そう、これから使うのは、あの人に教えてもらった魔法だ。
以前に教えてもらったこの魔法。使う場所を選ぶ必要があり、人前では用いることを避け、特に父の前で使うことはやめて欲しいと言われた強力なものだ。
ここでこれを使えば、ほぼ確実に全滅させられる。
あの人にはこういった閉鎖された空間で使うことには反対されそうだが、いまはそんなことを考慮できる場合ではない。
『――極微。結合。収束。小さく爆ぜよ!』
――【矮爆】
すぐさま地面に身を伏せて、兄から貰った耳栓を付け、差し向けた右手を握りしめる。
直後、魔法陣が一気に狭まると、魔法陣に取り付かれた〈ひとぐも〉の身体が爆発した。
頭の上を衝撃波が走り抜け、砂塵が吹き飛ぶ。
その一撃で〈ひとぐも〉の身体はバラバラに砕け散り、爆発の余波が周囲の怪物をも巻き込んで絶命させる。
衝撃で洞窟が揺れ、天井からパラパラと岩肌のかけらが落ちてきた。
――へえ、やるじゃん。なるほど、その【古代アーツ語】の組み合わせなら、それくらいの威力は出せるのか。呪文に込める魔力量に差を出しつつ、効力を調整して……いや、なかなかうまく作ってるじゃないか。
聞こえてくる声から、ふいに茶化すような音色が消えた。
呪文の出来具合に舌を巻いており、紛れもない称賛であることが窺える。
やはりあの人の作る魔法は、見る者が見れば評価の対象になるものなのだろう。
しかし、耳栓をした状態でも声が聞こえてくるというのは、一体どういう理屈なのか。
ともあれこれで、怪物は一つ残らず倒された。
念のため、周囲の安全を確認する。〈ひとぐも〉の残りはもちろんのこと、洞窟の天井や壁が脆くなっていないかなど。
――そうそう、周りの確認は大事だよね。それを怠った奴から死んでいくんだから。
耳障りな声だ。そうやって死んだ者たちを嘲笑うかのような物言いに聞こえる。
そんな声を聞き流しつつ、慎重に辺りを探る。きちんと絶命しているか、下半身の本体は動いていないか。
やがて周囲の安全が確認されると、次いで気になっているものに声をかける。
「――誰かはわかりませんが、私に声をかけてきていると考えていいのですか?」
「そうだよ。お嬢ちゃん。初めまして」
どこにでもなく訊ねると、そんな挨拶が返ってくる。
自分の声は洞窟の壁面に反射しているのに、向こうの声はなぜか反響音を伴わない。
まるで、耳に直接声が届いているかのようだ。
「あなたは誰です? 一体どこから話しかけてきているのですか?」
「君の後ろだよ。ま、君に僕の姿は見えないだろうけどね」
「見えない……?」
確かに、後ろを緑光で照らしても、声の主の姿はどこにも見つけられない。
しかし、声は常に背後から聞こえてくる。これは、果たしてどういうことなのか。
「いったいどこから」
「だから君の後ろサ。ああ、僕が出てきた場所かい? さっき君が盛大にお尻をぶつけたの、覚えているよね?」
「おしっ……」
「そうそう。で、そこが僕のいた場所なんだよ。ほら、あれ。あれのこと。そのおかげでこうして出てこれたってわけ」
別に中身がなかったわけではなかったらしい。
だが、なにかとんでもないものを解放してしまったのではないかと不安がよぎる。
「ここはレイセフト家の領地にある洞窟です。あなたはなにか所縁ある者なのですか?」
「レイセフト? その名前は僕は知らないけど、まあ、外はろくでもないことになってるんだろうね」
「ろくでもないこと?」
「あ、うんう。こっちの話サ。こっちの話。そのレイ……なんとかも、僕にはあずかり知らぬことだよ」
どうやらこの声の主は、レイセフト家の関係者ではないらしい。
ということは、初代当主がこの領地を王家から預かる前に、この箱はここにあったということだろうか。
それもそうだが――
「そもそも姿を隠したままとは卑怯です! いいかげん正体を現しなさい!」
「卑怯って言われてもね。君に僕が見えないのは僕もどうしようもないしさ」
「どういうことですか! ま、まさかお化けなのでは……」
「お化けね。確かにそうだったら面白いね。君にとり憑いて……そうだ! 僕、君にとり憑いちゃおっかな?」
「と、とり憑く!?」
「そうそう。こう、君の右肩あたりにね……」
「離れなさい!」
「やなこったー。君は面白そうだから、当分僕のとり憑き先にさせてもらうよ。なーに、損はさせないからサ。危ないときはさっきみたいに助言して手助けしてやるゼ? なかなかお得でしょ? アハハ!」
「何がお得ですか! 困ります!」
「大丈夫大丈夫。何か吸い取ったりしないし、できもしないから。それにもっと面白そうなやつがいたら、そっちに移ってやるって。だから当分の間、よ、ろ、し、くぅ!」
「……むうっ」
悪魔何某がこちらの話をまったく受け入れないことに、つい膨れてしまう。
そのまま、振り向きざまに拳をぶんぶん振るうが、当り前のように虚しく空を切るだけだった。
「アハハ! そんなことしても意味ないゼ?」
「こ、これは気分です! あなたを追い払う儀式なんです!」
そう言って、再び拳をぶんぶんと振るう。しかし声の主は、快活そうな声音で笑うばかり。
「可愛いね君! いやいや、僕、本当に気に入ったよ!」
「気に入らないでください! あなたに好かれても嬉しくありません!」
「そんなこと言わずにサ。ね? これから仲良くやろうゼ?」
「嫌だと言っているではないですか!」
だが、いまの自分にこの何者かを振り払うすべはない。
魔法を使えばいいのかもしれないが、まずどんな魔法が利くのかさえわからないのだ。
「諦めなって。そんな恨みがましい目をしても離れないから」
「く……」
「あとお嬢ちゃん、名前はなんて言うんだい?」
「言いたくありません」
「そう言わずにさ。教えてくれるまで訊くことになるけど?」
まるで耳元でがなり立てるように「名前はなんて言うんだい?」と連呼する。
当然、根負けするのはこちらの方だ。
「わかりました! 言います! 言いますからしつこく聞くのをやめなさい!」
「なんて言うのかな?」
「……リーシャです。リーシャ・レイセフト」
「リーシャちゃんか」
「そうです。私が名乗ったのですから、あなたも名乗りなさい」
「そうだね。そうじゃなきゃフェアじゃないよね。僕のことは、そうだね。うーん。何にしよっかな?」
「……そこは悩むところなんですか?」
「そりゃそうでしょ。名前とか呼び方は大事なものだよ。印象が決まる。うーん……そうだ! 僕のことはあれ、悪魔! 悪魔って呼んでよ!」
「あ、悪魔!? 悪魔とはあの悪魔のことですか!?」
「君の言う悪魔が、どの悪魔を指すかはわからないけどね。うん、悪魔がいいな。それがいい」
なぜわざわざ悪魔を称するのか。
悪魔と言えば、精霊年代に登場する、双精霊と敵対したという存在のことだ。
世界のすべての生き物を滅ぼして、地上のすべてを魔で溢れさせようとした超常の存在である。
人間を殺そうとはしても、人間に味方することはないはずだ。
それに、さっきの「うーん」と言って思考に使った間のこともある。
そうやって考えたということは、十中八九、悪魔などではないのだろう。
「こらこら、邪推はよくないゼ?」
「人の思考を読まないでください!」
「だってそんな顔してるしさぁ」
悪魔とそんな話をしていると、上の穴からパラパラと石のかけらが落ちてくる。
それに伴い、ロープが上から垂れ下がり、やがてラルフが下りてきた。
「ふぅ、お嬢様、ご無事ですか?」
「え? は、はい。問題はありません」
「随分デカい音がしましたが、やはりさっきのはお嬢様の魔法で?」
「はい。正確には、兄様の作った魔法を使って、ですが」
「はあ…………うわっ、なんだこりゃ!? 〈ひとぐも〉どもがバラバラになって……」
ラルフは怪物がたどった末路を見て、絶句している。よくよく考えると、とんでもない惨状だ。確かに、最初にこの魔法を見たときは、自分もその効果とそれがもたらした惨状に愕然としていたように思う。
「いやぁ、さすがお嬢様。この数をものともしないとは、恐れ入りますよ」
「いえ、私もかなり焦りました。全部で七体もいましたから」
「七……それをお一人でですか。こりゃ旦那様も問題ないと言って送り出すわけだ……」
ラルフはひとしきり、呆れ交じりの称賛を述べたあと、ふいに辺りを見回す。
「あと、さっきまで誰かと話していたように思いましたが?」
「あの、それは――」
ラルフに説明しようとしたその折、ふいに口が開かなくなる。口を動かそうとしても何かに押さえつけられたように唇は開かず。言葉が出せない。「私の後ろにとり憑いた――」そう言おうとしたのに、何も発することができなかった。
――言ったらダメだよ? それは。だから、邪魔させてもらうね。
「――っく」
悪魔が発する言葉に、歯噛みする。どうやら、本気でとり憑くつもりらしい。
「お嬢様? いかがいたしましたか?」
「いえ、なんでもありません。上に行きましょう」
「そうですね。さすがにこんなとこ、長居したくはありませんね。じゃあ、俺の背中に掴まってください」
「はい。よろしくお願いします」
ラルフに背を差し出され、そこに負ぶさる。
彼はすぐに腰にロープを巻き付けて彼の身体と自分の身体を固定したあと、ロープを手繰って壁面を登り始める。
そんな中、再度後ろにいるかどうか確認のために振り返るが、やはり何も見えない。
――そんなに確認しなくてもちゃんといるから大丈夫だって。
大丈夫ではない。いることが問題なのだ。
……ともあれその後、リーシャは洞窟の奥の祠まで行き、見事証明を持って帰ることができた。
後ろ辺りに、大きな大きなオマケを付けて。