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学園初日

4 学園初日



学園のチャイムが鳴り、授業が終わった事を告げて教室が雑談で溢れかえる。


「ねぇー切?」


「…。」


「ねぇってばっ!聞いてるの!?切ッ!!」


「…え?あ?呼んだ?」


「さっきからずっと呼んでんだけど!」


「…あぁ、ごめん考えごとしてて…」


神鳥 切は昨日の違和感が頭から離れず、記憶から絞り出そうとするが全く記憶にあてがない状態、上の空だった。


「聞いたよー!為心と仕事場一緒なんだって?世間って狭いねー!」


「うん。そのくだりもう使われ過ぎて流石にここまでは使えないからフラなくていいよ。」


「ちょっと待ってよっ!私そのワードから入らないと紹介してもらえないんだから!」


「なんだその設定は!?」


余りにも現実味が薄い会話だった為、神鳥 切は驚いた。

上条 灯とは苦い思い出として残っている。

今から約1年前…


❇︎ ❇︎ ❇︎


入学式当日、恵比寿にある united beauty school に須堂 恵と神鳥 切は向かい歩いて登校していた。


「可愛い子いっぱいいるかな?俺の学園生活において可愛い彼女は必須だな。」


須堂 恵が夢の学園生活を思い描いていた。


「そこ、そんなに重要か?」


「はぁー。そうだよなー彼女がいた事がないお前にはこの気持ちわかるはずないか。」


「うるせぇ!好きでいないんじゃねぇわ!」


神鳥 切が須堂 恵の肩を軽く拳を作った右手で当てたが、思ってた以上に強く当たってしまい須堂 恵がよろめく。


「いってっ!このやろっ!」


遊び半分でじゃれ合う2人。

須堂 恵がこれも思ってた以上に強く神鳥 切を押してしまった。

そして、バランスを崩し、よろめいてしまう。

すると…ドンっ!


「いったぁー。」


赤茶の髪色にゆるふわに巻いた鎖骨下までの髪、どこかの会社で事務でもしているのかと思わせる様なセットアップのスーツ。そしてタイトなミニスカートまではいかないぐらいの短いスカートをはいた女性を倒してしまった。


「あ、すいませっ…」


神鳥 切が謝ろうとした時、目の前の光景に言葉が詰まってしまった。


「あ…ピンク…。」


須堂 恵が思わず口にしてしまった。

女性が倒れた時の体制が悪く、2人の角度から下着が見えてしまったのだ。

そしてその言葉を神鳥 切が発したと勘違いした女性は、顔を赤くし、起き上がり、恥ずかしいと言わんばかりに言葉を発していた。


「変態っ!」


その瞬間だった。

女性の右手が神鳥 切の左頬めがけ一寸の狂いもなく、まるで吸い込まれる様に綺麗に入った事により、辺り一面に気持ちいと言わんばかりの音が鳴り響く。

神鳥 切は唖然とする。

確かに悪い事をしたが言葉を口にしたのは俺じゃないと言いたかったのだが、その女性は余りにも怒っているのが解る顔でその場から立ち去った。

すると後ろでクスクスと笑い声が聞こえて…


「恵っ!絶対にお前のせいだ!」


再び須堂 恵を殴った…今度は遊びでは無く、強く。


そして2人はUBSの自分達のクラスに到着した。


「クラス一緒か。」


「みたいだね。」


「えーっと席は…」


2人で教室の前にある壁一面のホワイトボードに貼られた席順表を確認する。


「あ、俺17番目だ。」


神鳥 切が自分番号見つけ、その後、須堂 恵も自分の席番を見つけた。


「俺25番だ。」


そして、神鳥 切は自分の席を確認しようと振り向いた時だった。


「ウッ…」


神鳥 切の反応に疑問を抱いた須堂 恵も振り向く。


「ん?どうした?…ゲッ…」


2人の目線の先には神鳥 切が座る17番席の隣、12番の席に座っていたのは、赤茶の髪色に、ゆるふわに巻かれ鎖骨下まである髪の長さ、ここに来る前に神鳥 切が倒してしまった、あの、ピンクの下着の女性がそこにはいた。

まさか、そのまさかである。

よりにもよって、先ほどの事件の被害者が隣の席になるという漫画の様な出来事に驚きを隠せずにいた2人。


すると、その女性も気づき、同じ様に驚きの顔になった。が、その刹那…眉間にシワ、目はつり上り、背景に炎でもあるのではという錯覚に見舞われているかの様だった。


「切…お疲れ。何も言ってやれないわ。」


須堂 恵の手が肩に乗ると同時に伝わる「御愁傷様」の文字がわかった。

意を決し、恐る恐る17番の席に向かい、その女性に頭を下げた。


「先ほどは大変申し訳ありませんでした。」


「喋りかけないで。変態。」


「…あ、はい。すいません。」


もう修復不可能と理解した神鳥 切はとても厳しい学園生活が待ってた事に肩を落とし、後ろからそれを楽しげに見ている須堂 恵の顔を見て、ため息を1つつき、自分の席に座ろうとした瞬間だった。


「ちょっ、ちょっと待って!あなた隣の席なの⁉︎」


「え…う、うん。そうだけど…。」


「はぁー信じらんない!こんな奴と隣なんて。なんて学園生活なの。」


『うん、俺もそう思う』と言ってしまいたい気持ちを抑え込み、もう波風立てないようにと、黙って座る。

すると教室のドアが開いた。

入ってきた長身の男性が白いジャージの様な服を着ていた為、担任の先生だと直ぐに解った。


「はーい!静かにしてください。まずは皆さん入学おめでとうございます。今日から約1年間皆さんよろしくお願いします。では、早速ですが、今から簡単なテストを開始しますので机の上は筆記用具だけを用意してください。」


クラスの全員、露骨に嫌な顔になるが、皆、筆記用具を準備し始める。


「…え?…」


隣でバックをあさる女性から驚きの声が上がった。おそらく、筆記用具を忘れたのだろうとわかりやすい状態であった。神鳥 切はそれに気づき、何も言わず、女性をも見ず、スッと消しゴムとシャープペンシルを置いた。

テストが開始し、最初は使うのをためらっていたが、なくなくではあるものの使用していた。


テストが終わり一枚のメモ用紙が隣の席、女性から流れてきた。

覗き込むとそこに書いてあったのは…

『ありがと。ちょっと強く叩き過ぎたと思ってる。』

と書いてあった。

ごめんは無いのかとか、いろいろとツッコミを入れたくなる所も多かったのだがそこは伏せ、神鳥 切もメモを書いた。


『気にしないで。俺、神鳥 切。君は?』


『上条 灯。これからよろしく。』





❇︎ ❇︎ ❇︎






神鳥 切は思う。

本当に上条 灯に設定が存在するのであればそれは…


「ツンデレだな…。」


「…今なんつった?」


「ごめんなさい。何も言ってません。大変申し訳ございませんでした。」


「ふんっ!」


最初の頃に比べればこれだけ仲が良くなったと言える。

事情も説明し、須藤 恵が言葉を発した事も理解してもらい、変態呼ばわりはされなくなったものの、ピンクの下着を見てしまった事に変わりはない。

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