センシビリティ前編
18 センシビリティ 前編
「おい!恵!まだ終わんねぇのかよ!」
「うるせぇ!遅刻した奴に言われたくないわっ!」
2人が着いた時、会場は準々決勝決定戦で大盛り上がりしていた。
❇︎ ❇︎ ❇︎
「勝者っ!!united beauty school!!」
「ワァァァッ!!!!!」
歓声とともにunited beauty schoolの勝利の瞬間だった。
「良かった。UBS準々決勝進出じゃん。」
須堂 恵は会場に入り、安心した。
「ふぅ。本当に良かった。俺の寝坊でバトルが見れないとかにならなくて。」
隣の神鳥 切もまた安心していた。
「うっ!…ご、ごめん俺ちょっとトイレに行ってくる。」
須堂 恵がお腹を抑え、移動する。
「あら。冗談で言ったんだけど…本当にお腹下しちゃったんだ。」
神鳥 切が笑いながら須堂 恵にそう言った。
そして、須堂 恵がトイレに駆け込み15分が経過し今に至る。
「ちょっと恵さん?!長すぎじゃないですか?」
「俺だってこんなに長く苦しみたくないわっ!」
「うん。ごもっとも。」
そして、外で待つ事更に15分。
「ふぅ!スッキリしたっ!」
ようやく須堂 恵がトイレから出てきて神鳥 切が座るベンチに腰掛けた。
「お、終わったか。」
神鳥 切は自分も寝坊した為、これでおあいこだと思い、須堂 恵をこれ以上せめなかった。
「よし。これでじっくり観戦できるぜ!」
「だな。」
2人がそんな会話をしてる中、少し離れたベンチで3人の男性が居た。
「ついに次だな。」
「来たな。PBSとの対決。」
「まっ、悔いの残らないようやるしかないでしょ。」
どこから見てもこれから試合がある人達なのがわかる。
「やれる事はやったよな?」
全身黒の洋服で合わせ、髪までも真っ黒の男性が呟いた。
「あぁ。間違いなくな。死ぬほど練習したしな。」
反対に全身白で統一され、透明感ある明るい髪色に一本で結んだ髪の長いもう1人の男性が言葉を返す。
「今更何言ってんだよっ!心配になったのか?」
もう1人、黒と白でコーディネートされ、少し体格がいい短髪の男性も言葉をかけた。
「いや…勝ちてぇなって…。正直、ここまで来れただけで上出来ってどっかで思ってた、負けても4位は確定だし。けど…ここまで来て思う。…優勝してぇ。」
「あぁ。勝たなきゃな。あいつらだけには負けたくねぇ。」
「勝ちてぇな、でもなく、勝たなきゃな、でもない。…俺らは勝つんだろう?Personality beauty schoolに。…気張ろうぜ?」
「だな。」
「間違いない。」
「よしっ!なら円陣組もうぜ!」
体格のいい男性は熱かった。
「あ、遠慮しとく。」
「え!?今めっちゃいい感じなのにしないのっ!?」
3人は笑い合っていた。
「切?あの人たちUBSじゃない?」
須堂 恵が3人を見てそう言った。
「え?そうなの?」
「多分。…確か次のバトルがかなり見ものなんだよね。去年のバトルで優勝したPBSとあそこのUBSは長年のライバルらしくて、その対決が次なんだよね。」
「そうなんだ。あれがUBS…。」
神鳥 切はどこか嬉しかった。自分がこれから通うであろうUBS。
その3人の光景がとても楽しく、輝いて見えたからだ。
自分もあそこに混ざりたい。
同じ景色を見て見たい。
そう強く願っていた。
「おや〜?何処かと思えばUBSじゃないですか〜?」
紫色のチームTシャツ、背中にはPersonality beauty schoolと書かれた3人組の1人が、まるで何かを楽しむようにUBSチームにからんでいた。
「いゃ〜次は楽しみですねぇ〜。どっか途中で負けんやないかとヒヤヒヤしましたわ〜。これで僕たちが勝つことでこっちの学園では英雄になれますぅ〜。いゃ〜本当にありがとうございます〜。」
男性は嫌らしい笑みをこぼし、かけた言葉は挑発だった。
「おい、やめろ。すまない…うちの者が失礼した。」
PBSのもう1人が止めた。
「でも、その挑発嫌いじゃないよ。実際うちでもPBSに勝てばそれなりに名が売れるしね。」
UBSの黒の男性が思わぬ発言をした。
「言いますねぇ〜。ますます楽しみになりましたわ。ほな、会場で。」
「良い勝負をしよう。」
そう言ってPBSの3人は去っていった。
「あのやろう。腹立ってきた。許せねぇ。」
「ぶちかましますか。」
「間違いない。」
そして、拳を3人で合わせあいUBSチームは歩き出した。
「…。」
それを見ていた神鳥 切、須堂 恵はその3人の後ろ姿から目が離せなかった。まるで最後の戦いにいく映画のワンシーンの様で、意思が、決意が、本気が、その3人の背中が物語っていた。
それは只々魅力的だった。
「なんか…いいな。」
「うん。」
そして、数々の歴代が繰り広げて来たUBS VS PBSのバトルが始まる。
「それでは、決勝戦進出をかけたバトルを始めます。それでは……スタートです!!」
アナウンスとともにスタートの合図のアラームが鳴った。バトル音楽も流れ、選手達はカットに入る。
「UBSはあの白い人が主将だったんだ。」
須堂 恵は学園のパンフレットを見ながら呟いた。
「PBSはあの落ち着いてた人が主将みたいだね。……え!?」
神鳥 切がPBSのオーダーを見て突然声を張り上げた。
「どうした?」
「あの絡んでた人…1年生だって!?」
「え!?そんなことあるの!?普通学園って1年間みっちりカット教わって初めて切れる様になるのにそれを1年からセンシビリティに出場って…レベルが違いすぎる。」
2人にとってそれは衝撃の事実だった。
「主将の対決も見ものだけど、PBSの1年生とあの白黒の人の対決も面白そうだね。」
神鳥 切は改めてバトルの行く末が面白く感じていた。
「確かに、あの白黒の人は怒ってたしね。」
その頃会場では。
「レ…それ…ラ…いや…こ…はグ…入れて…。」
PBSの1年生はブツブツと言葉を言いながら満面の笑みで切っていた。
右を切っては移動し、左を切り、左を切っては右を切り、まるで初心者のおぼつかない手つきの様だった。
『このイカレ野郎とんでもねぇ雑なカットしてやがる。だが、こいつもPBSのメンバー。きっとなんかある。こっちは自分の本気カットしてやんぜ!!』
白黒の服のUBSメンバーが対戦相手の斬新なカットに驚かされていた。
そして、
この2人の決着は早かった。
「勝者…PBS!」
「カカカカカカっ!!弱いやん!めっちゃ弱いで!カカカカカカっ!」
「ま…負けた…?嘘だ…ろ?こんな奴に…?……クッソォッ!!」
UBSの白黒の男性は怒りが抑えきれず、持っているコームを地面に力ある限り投げ捨てた。
そして、隣では黒の男性のバトルと主将のバトルの審査も行われていた。
「勝者PBS!!」
黒の男性も決着が着いた。
「カカカカカカっ!!もう圧勝やっ!!主将が負けるはずない!!うちの完全勝利やっ!!」
「クソっ…。」
黒の男性も悔しがる。
そして、隣の審査の結果も出た。
「勝者……UBSっ!!」
「カカカカカカっ!見てみっ!圧勝………ハァ?なんやて?」
彼の笑みが一瞬で消えた。
「勝者UBS!!主将戦UBS 2ポイント!よってサドンデスへ移りますっ!!」
その瞬間、会場が今までにないぐらい湧き上がった。
UBSの主将が勝ったのだ。
これでPBSが勝ち点2ポイントに対し、UBS主将の勝ち点2ポイントで同ポイントになった。
そして、審査員がサドンデスへ向けて準備をする中、1人の審査員が床に散らばる赤い斑点を発見した。
「君…手を見せなさい。」
その言葉が誰にかけられたものなのか出場者全員は分からなかった。
その1人を除いては。




