04真相と襲撃
ファームエレクトロニクスの工房の一室・・・装飾品は何もなく、あるのはテーブルと折り畳み椅子が数個の部屋でカリーナはテストパイロットを紹介されていた。
「こちらが1号機のテスト操者のギーツ君ね。」
ネルビルから紹介されたギーツ(ザーヴァ)は
「よろしく。」
短い言葉を発して手を差し出した。
「よろしく~カリーナよ。」
カリーナが握り返した。
「ふ~ん、ギーツねぇ・・・まあいいわ、魔力や腕は問題ないだろうしね。」
そう言って手を放し、部屋を後にした。
「ふ~これで一先ず良しとなるのかね?」
ギーツは首を左右に振る
「多分気づかれた・・・」
「なっ何を冷静にしているね!きっ気づかれたって!」
慌てるネルビルに
「慌てるな!彼女は貴方がどうなろうと気にしていない様子だ。」
「何っ!本当か!どこまで私をバカにすれば気が済むんだあの女は!」
今度は怒り出し地団駄を踏むネルビルを無視して
「護衛のアデルと今後について打ち合わせてくる。」
コホンと咳払いしたのちにネルビルは衣服を正し
「そうしたまえ、確実な方法でな。」
「フッ分かっているさ・・・」
(こいつは使えんな、精々道化を演じてくれ・・・データはあるんだ。貴様がいなくても我々は問題ないのだよ・・・)
部屋を後にしたギーツを見送りネルビルは、一つだけ豪勢な椅子に座り
「フフフフ、まさか帝国の技術があれほど進んでいるとは予想外だがグフフフ・・・」
不気味な笑いと共に1人ブツブツと何かを呟くのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・
部屋を後にしたギーツは曲がり角で、人とぶつかりそうになり右へ避けるが、相手も左へ避けぶつかる。
「っつ~・・・大丈夫か少年。」
ギーツは座り込んでいる少年に手を差し出す。
「ありがとうございます。貴方こそ大丈夫でしたか?」
その手を取り起き上がる少年シェルドはそう口にする。
「ああ、悪いな少年。まさか避けられるとは思わなかった。」
「いえ、こちらこそ避けるとは思わなかったもので・・・大人は皆避けずにいますから。」
「フッそうなのだな・・・気を付けよう。」
「ん~・・・まぁ大丈夫かな。」
「何が大丈夫なのだ少年。」
「クス、あの娘は無事だよ。もっと魔術師には気を付けないとね。」
ギーツの気配が凄みを増す
「ああ、警戒しなくとも、僕は今回の件に介入しないよ。」
ギーツから戸惑いが見て取れ、警戒が下がる
「少年、参考までに、どこで気が付いたんだい?」
「握手さ。」
「なるほど・・・接触・・・直接接触すると、と言う事かな?」
「正解♪凄いや。」
「・・・今回のことは1つ貸かな?・・・いや彼女も含むと2つか・・・」
「やっぱり彼女を僕らに保護させるのも、目的だったわけか。」
「ああ、そうなるな。ああするしか彼女を救えなかったんでな。出来れば普通の生活を送ってもらいたいものだ・・・」
昔を思い出したのかギーツの口端が吊り上がる
「自分では・・・ダメなんですか?」
「フッこれから・・・っと邪魔したな少年。」
「少年じゃありません。シェルド、シェルド・クルスです。」
「覚えておこうシェルド君。」
ギーツは駆け出しその場を後にする。
(シェルド君、妹を頼んだ。)
すると
【はい、任されました。】
とシェルドの声が聞こえたような気がして立ち止まり振り返る・・・誰も居ない廊下が続いていた。
(フッ魔術師と言うより、魔法使いだな君は・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・
午後の宇宙テスト、セラフィム操縦席
「気密性・・・正常値・・・背部バーニア正常・・・バランサー・・・良好・・・凄いな。」
『凄いといっても、そのままじゃ帝国のGFヴァンパイアロードに劣るわよ。』
通信機から聞こえるカリーナの声に反応して
「そうなのか?」
『そうなの。各種専用パーツの追加により、汎用性で超える設計だもの。』
「なるほど、武装やバーニアなど追加する余地が残されているわけか。」
『そうよ~凄いでしょ?』
「なぜ初めからそう言う装備をつけない?」
『それは~乙女の秘密ってことで・・・ね♪』
加速していたのでかなりの距離を移動したようで、丁度警戒圏内ギリギリのところであった。すると不意に『ブーブー』と警戒音が鳴り響く
『どうした!何があった!』
本部に同席していたエレクトロニクスの社員が叫ぶ
「レーダーに感・・・GF3・・・いや12・・・凄いな。」
『落ち着いている場合ではない!すぐに戻れ!』
「了解。しかしっと」
セラフィムの横をエネルギーの閃光が通り過ぎる。
『どうした!』
「攻撃を受けた。?肩部バランサーに被弾、これでは速度が出せんな。」
『落ち着いている場合か!護衛部隊何している!』
『ハッ!アデル中尉の部隊が向かっています。』
『軍部に連絡!敵襲!我々は帝国の攻撃を受けていると!』
『まだわかってませんが、よろしいので?』
『ここで新型を奪われては、今後の戦局に影響するのだぞ!急げ!』
『ハッハイ!』
(フッ帝国と決めつけることで軍を動かすか・・・バカでは無いようだな。)
けん制のためのエネルギーの閃光が襲撃してきたGFに向けて放たれる。
上下に散開してそれを躱し、下に向かった部隊がアデル部隊の後方へと回り込む・・・