02崩壊の足音
そんなシェルドに少女は
「ありがとうございます・・・?どうかしましたか?」
慌ててシェルドは少女を引き起こし
「なっ何でもない何でもない。」
すると少女は何か勘違いしたように
「・・・エッチ。」
「えっ?えっ?えっ?」
慌てるシェルドを見ながら少女は
「フフフフフ♪冗談です。」
笑いながら目元の涙をふく仕草をした少女を見て
「からかわないでください。」
「フフフごめんなさい。それにしてもどうして道の無い場所を指したのでしょう?」
少女がパネルを見ながら小首を傾げた。
シェルドは立ち上がり少女の横から
「ちょっと失礼。」
少女が見ていた都市の地図を見ていると
「分かりますか?」
「ちょっと待ってください。」
そう言ってシェルドは自分のパネルで地図を表示させ見比べながら
「あれ?・・・あっそうか!」
「分かりましたか?」
「うん。そっちの地図が2年前の物なんだ。ほらここ見て。」
シェルドが指した場所に2013という表示があり
「そしてこっちが僕の端末にある地図。」
するとそこには2015と表示がされていた。
「あ~そう言う事なんですね。私の地図が古かったために道の無い場所を歩いていたんですね。」
「そうなんだけど・・・」
シェルドは少女の服装を見て
「私に何か・・・」
「う~ん、その制服って、ここの士官学校の制服ですよね?それなのに端末の地図が最新じゃない・・・もしかして帝国の人?」
シェルドがそう口にした瞬間、少女の顔つきが変わり、軽やかなステップで左右の拳が放たれる・・・
それをシェルドは余裕を持って捌き、懐に入ると腕をつかみ背負い投げた。
「キャッ!」
可愛らしい声と共に少女は地面にたたきつけられ、すぐさま足で腹部を踏まれ拘束された。
「ふ~この娘どうしようかシリウス?」
すると木陰よりシリウスが歩み寄り、懐から手錠を取り出し少女の腕にかけた。
少女は背中の痛みと腹部の痛みで動けずにいたが、手錠を掛けられると凄い勢いで振りほどこうとするが、シリウスにより簡単に抑え込まれてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・
遠目でそれとなく監視していたアデルの部下グリゴレは
「何やっているんだ?って捕まっちまったよ。」
考えるより早く腕の端末を操作して通信を繋げる。
『何があったグリゴレ。』
「MBの嬢ちゃん捕まっちまったぜ。どうする。」
『何!ちょっと待て・・・大尉・・・捕まった・・・』
しばらくして
『私だグリゴレ、それでシーダは連邦に捕まったのか?』
「いえ、民間のっとあの制服は・・・嬢ちゃんを捕まえたのはGAの連中です。」
『それなら放っておけ、連邦には渡さんだろう。』
「良いんですかい?」
『もう既にこちらではMIA戦闘中行方不明としてある。』
「MBの生態データそのままですぜ?」
『丁度いいことに彼女は薬のポーチを忘れていっている。』
「なるほど・・・長くは持たないということですな。」
『そう言う事だ。気づかれる前にお前たちも撤収しろ良いな。』
「了解。」
そしてグリゴレは振り返り
「聞いてたな。撤収!撤収だ!」
グリゴレの他に3人居たようです~と音もなく消えた。
・・・・・・・・・・・・・・・
公園ではシェルドの警護に当たっていた上級精霊兵の1人が周囲を警戒しながら少女を抱きかかえたシリウスが駆けていく、もう1人の上級精霊兵は駆けつけた警察官に淡々と状況を説明していた。
「それで犯人は?何処へ行ったのですか?」
すっと右手を上げ先ほどまでグリゴレ達がいた廃ビルを指した。
「あちら側へと魔力が流れている。ビルに入ったところで反応が消えた。」
「あ~つまり、あんたは魔力感知が使えて、その犯人の魔力が人ごみに紛れて、あの廃ビルに行ったと、そこで感知から逃れたといいたいんだな?」
「へ~あれだけで分かるんだ。凄いね。」
「褒めなくていい。ということは、そこの新人!」
「はいっ!何でしょう警部!」
「警官5名連れていっていいから、あの廃ビルを調査して来い。あ~銃の使用も許可する。」
「りょ了解しました。」
警官を引き連れ走っていく後姿を見送りながら
「それで君は・・・」
シェルドに向き直った警部がそう口にすると
「ホテルにでも戻りますよ。母が帰ってきたらホテルも危険かもしれませんので、艦の方へ戻りますからご心配なく。」
警部は頭をかきながら
「そういう訳にもいかんのだがな・・・ホテルには護衛を派遣します。それと従業員、宿泊客に帝国関係者がいないか調べないと・・・」
「でしたら、このまま艦に戻ります。」
「それがよろしいかと・・・」
「分かりました。」
シェルドは端末を操作して母カリーナへメッセージを送り、シリウスにも荷物を持って艦へ戻るように指示を出す。
「じゃあ僕はこれで。」
「ああ、ご苦労さん!」
後ろ向きに手を上げヒラヒラさせた警部から言葉が発せられた。
・・・・・・・・・・・・・・・
新人刑事と共に廃ビルへと侵入した警官は
「警部補殿!」
「何だ!」
「こちらに何者かがいた形跡が!」
周囲を見渡す新人刑事
「何もないじゃないか!」
「はい!何もないから呼んだんです。」