2話 能力
放課後になる。
約束の時間であることは重々承知であるが、
あんな怪しいやつのところに進んでいくほどにバカではない。
さっさと帰ることにする。昇降口に向かう。
下駄箱から、靴を取り出し、履き替えるときだった。
「やあ、逆巻 拓真。」
顔を上げるとそこには白髪ツインテの彼女がいた。
「私との約束破ってどこに行くのかしら。」
彼女はそう言いながらも笑顔だが、目は笑っていない。
身の危険を感じてとっさに駆け出して逃げる。
「やっぱり逃げるか。でも。無駄。」
彼女は不敵に笑っていた。それはこの状況にそぐわないほど余裕な表情だった。
学校の正門を抜け、なるべくジグザグに道を変えながら帰路に就く。
なるべく、人ごみに紛れて走る。一刻も早く家に帰らなければならない。
しかし、あの発言。「やっぱり」と言っていた。これは家に先回りされていることも考えた方がいい。
俺は彼女の余裕な表情に恐怖を覚えていた。
自宅への帰宅をあきらめ、自分がよくいく喫茶店で時間をつぶすことにした。
喫茶店までの道は不安でいっぱいだったものの、ドアをあけ、中の珈琲の香りを嗅ぐと不思議と心が落ち着いていた。
俺がいつも座る机は窓際の。
「左から、三番目。」
振り返るとそこにはさっきの白髪の少女がいた。
「二回目だね。逆巻 拓真。」
彼女の出現に驚く。
「「なんで。お前。」」
彼女は俺の言う事をすでに知っているかのように口を動かす。
「「俺の行きつけの喫茶店を知っているのか」」
彼女は俺の発言とすべてかぶらせると一言いった。
「まぁ、座れよ。逆巻クン。」
彼女は得意げに言うと俺に向かい合わせで座るように促した。
珈琲を頼むと彼女はコチラを向いた。
「まぁ、なんだ。驚かせて悪かった。」
彼女は謝る。
「しかし、君は目で見ないと信じないタイプだと思ってな。目の前で見せたんだ。」
彼女は自慢げだ。
「見せたって何を?そもそもあなたのことをよく知らないんだけど。」
俺は率直に言う。
「そうだな。まずは自己紹介からか。」
彼女は一拍置いて、自己紹介を始める。
「私の名前はアリア。いろいろな呼ばれ方をされているからなんでも好きなように呼んでくれればいいが、困ったらアリアでいい。そして、この」
アリアはそう言ってポケットから砂時計を出す。
「タイムスリップ装置の開発者だ。」
へー。タイムスリップね。なるほど。
えええええええええええええええええ。
と思ったが、ファンタジーが好きな男の子の端くれだ。
あるといわれれば、しかもさっき追い詰められたのもタイムスリップだとすれば信じざるを得ない。
「どうした?驚かないのか?」
アリアは目を丸くして言う。
「いや、驚きを通り越してな。さっきの俺のセリフとかぶせたのも。」
「ああ。何度も過去に行って、お前の発言を覚えたのだ。」
偉そうに腕組みするが、非常に非効率な方法を使っていた。
「ってことは、逃げる先までも、お見通しだったってわけか?」
悔しいが聞いてみる。
「ま、まぁ、そうだな。何度にもわたるの試行錯誤によってお前はほとんどの確立でこの喫茶店に来ることまで判明させた。」
アリアという少女は自慢げだった。
「それで、開発者様が、何の用事だよ。」
一番気になっていることを聞く。
彼女は腕を組んでこう告げたのだった。
「逆巻 拓真、お前にはこのタイムスリップの実験に協力してもらう。」




