まさかの奢り!?
「あ、あの……い、一上くん」
文化祭の会議が終わった俺らは学校を出て帰った。
しばらくして家の方向が同じ泉と二人で帰っていると急に後ろから声を掛けられた。
「あれ、あかりんどーしたの?」
「あ、いずみん。ごめんね二人っきりのときにちょっと一上くんにお話が合って」
ちなみに同じく家が近いはずの智也は別の用事があるとか言ってどこかに行ってしまった。
なので泉と二人っきりになってしまった訳なのだが、良かった灯がいてくれるなら泉から逃げれる。
「りゅー君に?いいけどどうしたの?珍しいねあかりんからなんて。何かあったの?」
「うん。それなんだけどね、えっと……ここじゃああれだから場所移動してもいい?」
「おっけー。じゃあ近くの公園にする?喫茶店にでも行く?」
「あ、でも今日財布持って来てないから公園でいいよ」
「大丈夫大丈夫。りゅー君に払わせるから」
「え!?」
女子二人の会話をスマホを弄りながら聞き流していると、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが。
え、公園でよくない?なんで俺が奢ることになったの?
「じゃあ行こっ」
「え、でも。一上くんに……」
俺の財布を気にしてくれる灯の腕を引きながらゆっくりと泉の首が俺に向いてくる。
「大丈夫だって、りゅー君の財布事情は全部把握してるし。それに……その一上くんって呼び方が変わってるのも聞かないとだしね?りゅー君」
すっげー笑顔だ。でも目が笑ってねぇ死んでる。いやいや苗字呼びは変わってないのだから別にいいんじゃないか?だめなの?え?
「いや、別に何でもねぇよそれは。飯田さんが皆との距離を持ってしまってるから、まずは呼び方とかを変えてみたら?って話で変えてるだけだし。な?」
「う、うん。そうだよいずみん」
よし、灯も同意してくれてるしここは逃げれそうだな。財布事情把握されてるのは怖いけど、この金もほしい本があるから使いたくないのです。
「ふーんなるほど。りゅー君」
「あ、はい。なんでしょう泉さん」
あれ、更に目が死んでるけどなんで?こわいよ?視線で殺されそうだよ?
「あかりんの呼び方を気をつけたのは偉いけど、話し方を戻すの忘れてたのは残念かな。前までお互い敬語交じりだったのにね」
あ、やべ。確かに忘れてた……。
「いや、まぁあそれはなんというか、お互い同い年だし飯田さんだけ敬語っていうのもどうかなって思ってやめたんだよ。なんも問題ないだろ」
「そーだね。で?」
「いや、でって言われても……」
え、何でこんなに怒ってるの怖いんだけど。
泉は無言でポケットに手を入れて何かを探し出す。
俺はまたスタンガンかと思い身構えたが取り出したのは泉のスマホだ。
泉はそのまま操作をしだして何かを再生する。
『じゃあな灯、また明日』
『う、うん。また明日』
「……。」
「…………。」
え、何いまの?え、いつの?いつ撮ったのその音声。
俺も灯も恐怖で黙っちゃったよ。
「じゃあ、行こっか二人とも。美味しいパンケーキがあるところがあって行きたかったんだ」
俺は大きく深呼吸して今日、自身の財布と身が消える覚悟をして泉の言う喫茶店に向かった。




