まさかのあーん!?
「お兄ちゃーん。起きて今日文化祭でしょ」
あの会議から数週間が経ち、校内が何かと騒がしくなりだしたと思えば知らぬ間に当日になっていた。
「あぁおはよう愛しの秋。今日かー……。今日もう文化祭なのかー」
「いいからはやく起きて。朝ごはんもできてるよ」
「母さんが作ったのか?」
ここ最近はどうやら忙しいことが多いらしく、あまり母の朝ごはんを食ってない。
食いたい。今日は何が何でも母さんのご飯を食べたい気分なのだ。
「今日もお母さんじゃなくて、彼女さんが作りに来てくれてるよ」
「あぁ、うん。やっぱそうだよな。はぁ……はいおっけ、いくいく。起こしてくれてありがと」
まぁ、現実はそう甘くはない様だが……。
「じゃあ、先降りてるからね。早くリビング来てね」
部屋から出て行く秋を見送った後、無理やり身体を起こしベットから出る。
自室の鏡で寝癖を軽く直し、顔をある程度整えてから部屋を出てリビングに向かう。
リビングの扉を開ける前に軽く深呼吸をして扉を開けた。
「お、おはよー」
「おはっーお兄ちゃん」
「お、おはよう竜くん」
リビングに入ると先に起きて朝ごはんの準備をしてくれている秋と灯に挨拶する。
灯が持ってきてくれた朝ごはんの目玉焼きは俺のだけハート型になっており、周りにケチャップでこれでもかというほどハートが描かれている。
「ひゅー。今日も朝からおアツいねお二人さん」
「あはは、それじゃあ食べようか」
「は、はぃ……。う、うんっ」
まず味噌汁をすこし飲む。出汁が効いており泉とはまた違った美味しさがある。和の心を思い出すようなそんな味がする。
「ほら、飯田さん。お兄ちゃんにっ」
「え、あ……はい。りゅ、りゅりゅ竜くん。はい、あ、あぁ……あーん」
「え?そこまでするの?マジで?え、あ……。あ、あーん」
俺は灯から差し出された卵焼きをそのまま俺の口に入れてもらう。
これも、カツオだしを使用しているのか、出汁の旨味が染みておりとっても美味しい。白米をかきこみたいくらいだ。こんな、状況じゃなかったら、だが……。
俺は、真横に座っている灯の前にいる人物を横目で確認すると、青筋を立てて凄いぎこちない笑顔を浮かべている。
「ねぇ、そろそろいいかな?暴れちゃってもいいかな?」
泉さんの目が怖いです。今にも懐からスタンガン出そうとしてますけど、僕悪くないからね!
「だ、だめだよ!お兄ちゃんもが、頑張ってるんだから。ぷぷぷ」
「相手があかりんじゃなかったらヤッてた」
「ひっ。ご、ごめんね……いずみん」
秋が笑い、泉が爆発しそうになり、それに怯えた灯がすごい勢いで震えだす。
泉に何をヤるつもりかは聞かない方がよさそうだな。
ちなみにさらっと話すが俺と灯は付き合うことになった。
あの文化祭の会議の後に灯に呼び出され、その後に付き合うということになったのだが……。




