まさかの収まってない!?
俺たちは紗那さんの唐突な行動に驚きながら生徒会室を出て学校の教員用の駐車場に向かう。
紗那さんが言うには智也からこの話をされた時には今日解決させると決めていたようだ。
「作戦とかは正直僕は嫌いだ。確定してない未来を勝手に決めて、自分の思い通りに動くと信じて……。考えている暇があるならすぐに動け、と僕は思う。時は僕らを置いて先に進む、時は僕らを無視して一定に進む。後先なんて考えなくていいんだ。時と同じで今を見つめて自分のやりたい事の為に真っすぐ歩けばいい。だってそのほうが面白いだろ?……あぁ、だがあれだぞ?素敵な夢は、思い出は見るといい。僕が言っているのは悪い方向の考えのことだからな」
紗那さんが俺にだけに聞こえるように言った言葉だ。
俺にはあまり分からない。見たくなくても後悔が残った過去を振り返ってしまう。胸を張りたくても失敗する未来を見て、少しでも自分を正当化しようと未来を考えてしまう。俺はそんな自分が意外と嫌いじゃない。
だから紗那さんの言っていることに感化されたりはしない。俺はいつだって時に置いて行かれても、時に無視されても過去を思い返し、未来に恐れ続ける。
でも、それでも。俺は過去に折れない、未来に勇敢な紗那さんがとてもかっこよく、羨ましく思えた。
教員用の駐車場に着くと、もう見慣れた襠田家の車が見えた。
デカすぎて全然駐車スペースに収まってないが、まぁ気にしないでおく。
「いいの?ここって先生たち用の駐車場だよね?勝手に車止めてて大丈夫?」
俺の後ろをひょこひょこ歩いていた泉が俺の右肩側から顔を出し紗那さんに聞く。
なんだよ普通に聞けよ……。くっ……泉のくせにいい匂いがする。
「うむ、それに関しては問題ない。先に了承は校長からいただいている」
「ふーん」
紗那さんが答えると泉は興味なさそうにまた俺の後ろにくっつく。
あの泉さん?離れてはもらえないだろうか……。
俺たちは車に乗りお礼を言うために運転席を見ると、いつも座っているはずの豊美さんたちのお父さんではなく見たことのない初老のおじいちゃんだ。
「待たしてしまったな。すまんが家までお願いする」
「はい、かしこまりました」
紗那さんが運転席に声をかけると、ゆっくりと車が動き出す。
「今日はお父さんじゃないのですね」
運転席には聞こえないように紗那さんに小さい声で耳打ちする。
「あぁ、父は母に怒られるかもしれないから今日は加担しなと言われてな。仕方なく家で勉学を教えてくれる爺に来てもらった」
そう紹介されてチラッと運転席の方を見るとバックミラー越しに会釈され、俺も慌てて会釈を返した。
その後の俺たちはおのおの好きに車の中ですごし、少しすると襠田家に到着した。




