まさかの無茶苦茶なこと!?
「母はな僕らに会社を継がせてもよいし、継がせなくてもよい。そう考えているんだ」
「でも、昔は家を継ぐことになるって……だから大変な思いをしないように娘のために友達を決めてるって……」
紗那さんに桜が疑問をぶつける。
桜から聞いた話では確かに豊美さんたちには会社を継いでもらうという話だったし、もしそうじゃなくてもだったらなぜ婚約者まで決める必要がある?
豊美さんたちが将来会社を継ぐうえで大変な思いをしないように優秀なサポートできる人を見繕って結婚をさせる。それは何となく分かる。
でも、継がせる気がないとなれば分からなくなってくる。
「確かにそうだ。母は僕らが家業を継ぐといえばそれ相応の知識を学ばされたうえで継がしてくれるだろう。しかしだ。もし僕らが継がないと言えば母が死ぬまで会社の顔となり、死ぬときはその時一番優秀な人を上に立たせるだろう。継がぬことを責めたりは必ずしない。だが、母は僕らの婚約者を決める。何故だ?と思うのも無理はない。だが、考えてみれば意外と簡単なものだ。一上よここで一つ質問させてもらうが、婚約者とは自分にとってどういう存在だ?一上と結婚した相手はどのように共にいる?」
「常に隣にいてくれて、共に生活をし共に人生を歩んでくれる人……ですか?」
紗那さんの問いに俺は少し考え、素直に思ったことを答えた。
その答えが当たってたのか、紗那さんはうなずき話を進める。
「一上の言った通り、結婚した相手は共に歩む者だ。相手が失敗すれば自分もダメージをくらう。もちろん逆もだ。だから必ず失敗しないように母は僕らの結婚相手を決めているんだ。僕らがどんな道を歩もうと決してこけないように、必ず助けとなってくれる人を母は僕らと結婚させようとしている。それが母の考えだ」
無茶苦茶なことを言っている。俺が最初に思ったのはそれだったた。
桜から聞いた話でもそうだが、娘の将来が心配だからって普通はそこまでしないはずだ。確かに言っていることは分かる。人生につまずかない様に、人生に絶望しないように、娘がしたいことを全力で出来るように。そう願って豊美さんたちの結婚相手を選んで、結婚させる。でもそれっていくらなんでも……
「過保護すぎるだろ……」
俺は小さく口に出てしまった。
俺は、はっとして紗那さんの方をみると薄く笑みを浮かべながら頷いた。
「その通りだ。僕らの母は過保護すぎる。だから本当は説得は簡単なんだ。僕は確かにこの男を気に入っているから母が決めた婚約を受け入れているが、友達はそうではなかった。それはそれは好き勝手にしてたさ。母から紹介されても興味がなかったら相手にしなかった。だが豊美はいささか母への敬愛の念を抱きすぎている。母が言うことは絶対そうだと思い込んでいる。だから、豊美が僕らを止める前に母を説得し納得させれたら、この問題は簡単に解決できる。そして、できる限り説得は早い方がいい。今から行くぞ」
そう言い終えると紗那さんは立ち上がった。




