まさかの満点の!?
「一つ聞こう。一上よ、この豊美の婚約についてどう思っている?」
足を組んだ姿勢はそのままに顔だけを俺に向けて質問をする。
「どうって……自分の会社をより大きくするために娘を優秀な人材と結婚させて、その人材と地位を利用しようとする、よくある政略結婚かと」
紗那さんは俺の問いに満足げにうなずく。
どうやら合っていたようだ。こういうのは漫画の中でもよくある話だし、実際にそういう状況に会ったのは初めてだが、大体のことは理解できる。
沙那さんも俺のことを馬鹿にしすぎなのだろうが、さすがにこれくらいは分かる。
「うむ、100点満点の間違いだな。ありがとう」
違うのかよ!
もう完全に正解したと思ってた俺が恥ずかしいやつじゃん。
「では、桜よ一上に変わって答えてくれるか?」
今度指名されたのは桜だ。
てか、俺を間違い回答役にするのやめてくれない?
「はい。桜も数回しか会ったことないけど豊美のお母さんはせいりゃく結婚?よくわからないけど自分のために豊美を利用するとは思わない」
桜は顔を下げながら弱弱しい声で俺の答えを否定する。
「ふむ、それはなぜかな?」
那さんは俺の時とは違いうなずくことはせず、桜の意見を聞く。
「桜が昔あった時もそうだった。自分のためじゃなくて全部豊美のためって言ってたから。これも同じだと思う。豊美が将来に大変な思いをしないように、自分が信用できる優秀な人と豊美を結婚させようとしているんだと思う」
「でも信用できるって言ったって、もしかしたら豊美さんの許婚は性格がねじ曲がってたりするかもなんじゃ……」
確かに、桜から聞いた友達の話とかはそうだったかも知れないが、結婚となれば相手が最悪でも友達のように縁を切るのは大変なはずだ。とくに今回の相手だって豊美さんの全く知らない相手だろ?もしもがあったらそれは豊美さんを逆に傷つけてしまうことになるかもしれない。
「いや、それはないよ」
俺の疑問を否定したのは智也だ。
「なんでだ?」
「彼については色々調べたけど人望も豊かだし、人間性もよくできてた」
「でも実際そうとは限らないだろ。表ではそうかも知れないけど、裏では違うとか、結婚したら変わったとか言うじゃねーか」
俺はまだ納得できずに反論する。
「僕も実際に話したけど、あれは実際にいい人だよ。珍しいくらいの善人だ」
智也がそう言い切ったのに驚き俺は押し黙る。
「意見は言い終わったか?……ちなみに正解だ。あと、砂川くん……長いな。智也でいいだろう。智也の言った通り彼はいい奴だ。母が人間性を見間違えることはない。彼が豊美に害することはないだろう。そして、母も自分のために結婚さしている訳でもない。なぜなら、母は僕らに家を必ずしも継がせる気もないからな。母は本当に僕らのためだと思っている」
紗那さんはそうして話し出した。




