まさかの自分勝手な理由!?
「今からあんたの家にいく!」
「え!?」
桜がそう言うと、涙を流してうつむいていた顔を、驚いた表情で勢いよくあげる。
「な、なぜですか?」
「あんたに話してもしゃーないから直接話ししに行く」
桜は豊美に背中を向けながら、靴紐を強く結び、走る準備をする。
すると、机が倒れる音がした。
驚いて振り返ると机と一緒に豊美が倒れていた。
「や、やめてください。お母様は私を思ってやってくれてるんです」
「あっそ。桜はそんなん知らんし。桜が気に食わんかったから文句言いに行くだけやし」
豊美は桜を止めようと服を掴むが、桜は軽くその手を払いのける。
「し、しかし、板橋さんは私の家を知らないじゃないですか」
どうにか、暴走している桜を止めれないかと震える声で言う。
「大丈夫。聞いたことあるし。ランニングしてた時に行った事もあるから。桜は頭悪いけど道覚えるのは得意やから、迷うこともないし」
そういう問題ではないのって事は分かっているが、桜は考えるよりも身体が先に動く人間だ。だから、豊美のことを無視して走り出す。
教室から豊美の声が聞こえるが無視する。
なんで桜がこんなに本気になってるのかは自分でも分からない。
桜が今こんなに必死に走ったからって何かになるとも思っていない。
てか、今でも豊美のことは嫌いだ。
桜は珍しく走っている最中に、運動のこと以外を考えていた。
自分が決していい行動をしていないのも子供ながらに分かっていた。
いくら運動出来るからといってやはり子供にとっては大人は怖いのだ。
しかも、この前家に来たときに見ただけで分かる。圧倒的風貌。
そんな大人に喧嘩を売りに行こうとしてるのだ。考えたら馬鹿なことをしていると思う。しかし、桜は何も考えることをせず、ただ怒りに身を任せて走った。
もしかしたら、怒っている理由は豊美に対してじゃ無かったのかも知れない。
運動を馬鹿にされた気がしたのかも知れない。
運動だけが取り柄である桜を馬鹿にされた気がして怒ったのかも知れない。
自分勝手な理由。
豊美のためとかそんなかっこいい、どっかのヒーローみたいな考えじゃないだろう。
ただの子供だ。ただ、いじわるされたから、ただ悪口言われたから、ただムカッとしたから殴りあう子供と一緒だ。理由なんてとくにない。腹が立ったから、そんな自分勝手な理由。
そんな、怒りを心の中で吐き散らしていたら、豊美の家についた。
自分の家より何倍も大きな。桜の身長の何倍も高い兵に囲まれた家に着いた。
インターホンを鳴らそうと背伸びをした時、鳴らす前に門が開いて一人の少女が現われた。
少女といっても、桜よりは年上にみえる。
「おや、君は?あぁ、豊美の友達かな?」
豊美とは別の雰囲気で大人なびていた。
「ふむ、ここじゃなんんだ。豊美がまだ帰ってきてなくて申し訳ないが、ぜひあがって待っててくれ。あぁ、申し遅れたな。僕は、襠田紗那だ。つまり豊美の姉だな。よろしく頼む」




