まさかの言われたから!?
桜は豊美に思ったことをすべて叫び続けた。
桜は何にも思っていないつもりだったのに溢れ出した言葉をただ、豊美にぶつけ続けた。
その言葉に豊美はただただ黙って聞いていた。
「はぁはぁ……」
桜が言いたいことをすべて言い尽くし、息を切らしながら豊美のことを睨んでいるとようやく口を開いた。
「まずは、私の勝手な行動のせいで、板橋さんに不快なことを思わせてしまい失礼いたしました」
豊美は深々と頭を下げた。
「だから!そういうところが気に食わんって言ってるやんか!桜は別にお前と仲良くしたい訳じゃないし、運動を続けてほしいわけでもない!ただ、お前が自分自身に嘘をついてることが気に食わんねん!そんなんでなんで桜に近づいてん!」
「私は桜さんと仲良くなりたく……」
「うそや!」
顔を見たら分かる。これは嘘だ。逃げている顔だ。
「さっきの男子ともお前は別に仲良くなりたいなんて思ってないんやろ!?」
「そ、それは……」
「馬鹿な桜にはお前がなにを考えてるかわからへんねん!」
「……さまが」
「あ?」
泣きそうな、初めて聞いた年相応のか弱い声で豊美が小さく呟く。
「お母様に、仲良くなるように言われて……」
ぽろぽろと涙を流しながら言った。
今、なんと言った?お母様に言われたから?
「え、なに?お母さんにこの人と仲良くなれって言われたから、仲良くなったん?」
「はい」
「桜とも仲良くなれって言われたから、近づいたん?」
「はい」
「はぁ!?なんなん、その親」
親が子供の友達を決める、そんなことが本当にあるもんなのか?
確かに、問題児と仲良くしている我が子を心配するなどは、たまに読む漫画に描かれていたりするが、誰と仲良くするかも親に決められるなんて事が本当にあるのか?
豊美はながした涙をふき取り、赤く腫らした眼で桜を睨み付ける。
「お母様を悪く言わないでください!お母様は私を思って、私の将来の為に厳しくしてくれているんです」
「それで、桜も、あの男子も利用されたんだ」
「そ、それは……」
きっとこうだろう。桜は運動が出来るから。あの男子は勉強が出来るから近づいて仲良くなって、知識や技術を手に入れるように言われたとかその辺だろう。
「じゃあ、なんで桜から離れたん?まだ運動できたわけちゃうやん」
「そ、それは……」
また、さっきと同じように顔を下げる。
「また、お母様ってやつなんやな」
「……運動は出来るようだけど、先日のテストの点数をみると勉学は残念なようだから私のためにと離れたほうが良いと言ったので」
なんで桜の点数を知ってるのか気になったがやめた。
どうせ、お金の力とかいうやつでどうにか調べたんだろう。
桜が馬鹿なのは自分が良く分かっている。でも、豊美のお母さんに思ったことがあった。
「本当にお前のためやとおもっとん?」
「え?」
「子供の友達を親が選ぶのがホンマに親の優しさなわけないやん。そんなのただのクソ親や!」
子供のことをすべて決める親が、いい親な訳がない。
自分のお父さんもお母さんも桜の好きなようにさしてくれる。だから、子供を束縛するような親に怒りを覚えた。




