まさかのうんざり!?
たしか、豊美が家に来たのは金曜日だったから、土日を挟んで月曜日のこと。
いつも通りに学校に着き、いつも通りに一時間目の授業を寝てすごした後の休み時間に、クラスの友達と校庭で遊んでいたら大人数がこちらに向かって来た。
でも、その大人数はバラバラに来たわけではなく、一人を囲むようにして来ていた。
それが、この前家に来た子だった。
なんだか嫌な予感がしたから逃げようかとも思ったけど、いつもお父さんには何事にも逃げを選択するなと言われていたので、近づいてるのに気付いていないフリをしてドッジボールを続けていた。
「あの、おはようございます」
「とりゃー!はい、三田橋くんアウトー」
また、一人にボールを当ててガッツポーズする。
でも、いつもは悔しがる皆んなが、驚くような顔をして、桜のこと以外を見ている。
「あ、まちださんだ」
「ホントだー」
「え、いま誰に挨拶したのかな?」
みんな、ゲームそっちのけで話し出した。
しかも、あの子の取り巻きも
「え、襠田ちゃん。どうしたの?」
「なんで、他の所に話しかけに行くんだ?」
「ほか、とよみちゃんこっちで遊ぼ〜?」
と、この子が話しかけた相手……桜に敵意を向け話しかけていた。
しかし、そんな声を一切気にせず桜の方に詰め寄り、話しかける。
「おはようございます、板橋さん。何をしていらっしゃるのですか?」
無視をしても話しかけてくる態度や、上品な喋り方にさらにムッとした桜は少し強い口調で返した。
「何って、ドッジボールやけど?そんなんも知らんの?」
その態度に周りの友達や、取り巻きの子たちが騒ぐ。
「桜ちゃん、この子お嬢さまなんだよ」
「何この子、豊美ちゃんに何言ってるの?」
だから、なんだって言うのか。そんな事桜にとっては関係ない。
ドッジボールというみんながしている有名なスポーツも知らないのかと言っただけだ。
「へぇ、ドッジボールと言うのですね。それ、私にも教えていただいてよろしいでしょうか?」
しかし、その声も無視して桜に話しかけてくる。
そして、桜をよそに周りがこの子に答える。
「え、でも。襠田ちゃんがしても大丈夫なの?」
「ほら豊美ちゃん、私たちが教えるからこっちでしよ?」
そんな周りの反応にうんざりして。
せっかくの休み時間なのに身体を動かせないことに嫌気がさし。
桜のその気持ちを理解せず、ずっと話しかけてくる事に腹が立ち。
桜はその場から立ち去ろうとした。
しかし諦め悪く桜がどこかに行こうとしたの察したのか少し声を大きくして呼び止める。
「いえ、私が教えていただきたいのは板橋さんです。申し訳ありませんが皆さん邪魔をするなら教室にお戻りしていただきたいです。板橋さん、私にドッジボールを教えていただけませんか?」
みんなの目が点になっていた。
そりゃ、そうだ。自分たちは誘っているのにお前らは要らんから、他の子と居らせろと言ったんだから。
一部は、何故か桜を睨みつける奴もいた。
「やだ、桜は教えるんとか無理。桜は動きたいだけやし。ドッジボールがそんなにしたいんやったら、そこの子たちと勝手にしといて」
桜はそう言うと走ってその場を去った。
足の速さは6年生の速い人レベルにはあるから、桜には誰も追いつけないだろう。
桜を追いかけて来る子はいなかった。




