まさかの理解不能!?
「いらっしゃいませー」
俺は喫茶店に着くと、周りを見渡し桜を探した。
少しずつ寒くなりだしたが、早歩きで来たからか、少し汗が出ていた。
「えっと、人を待たせていて」
「あ、はい。待ち人はそこの席でお待ちです。注文は、ホット……いや、アイスティーでいいですね?」
席案内をしてくれたのは、いつもの店員さんの男性の方だ。
俺の事を見たら少し微笑んで、注文も先に聞いてくれた。
「はい。ありがとうございます」
「では、ごゆっくり」
綺麗な姿勢でお辞儀をすると、厨房の方に戻っていった。
俺は少し乱れている服装と息を正して、桜の座っている席に行く。
あ、ここって初めて桜と来た時とおんなじ席だ。
「すまん、待たせた」
「あ、竜ちゃん。ううん、大丈夫。来てくれてありがとね」
そう言う桜の顔を見ると、少し目元が赤くなっていた。
俺はそんな、桜に気付いてないフリをして座る。
「んで、どうしたんだ?」
「あはは……。どうしたんだろーね。なんか、竜ちゃんの顔が見たくなったのかな?」
桜は俺に笑いながらそう言った。
下手くそな笑みを浮かべながらそう言った。
「そうか。だったら俺は、早く秋の顔を見たいから帰っていいか?」
俺は感情の込めてない声で言った。
俺はまだ、どうにか出来るとは思わない。桜を助ける為にここに来たんじゃない。そう思っているからだ。
「えー、ひどいなぁ竜ちゃんは」
そのまま、少しお互いに無言になった。
俺は目の前に座っている、俯いた桜の方を見ている訳にもいかないので、外を向いていた。
もう夕日も沈み、外は暗くなってきた。
「おまたせしました。アイスティーです」
さっきの店員さんがアイスティーを置いてまた、厨房に戻って行った。
「ねぇ、竜ちゃん」
しばらくすると、ようやく桜が話しだした。
「なんだ?」
俺は顔を上げた桜の方に向く。
「豊美、大丈夫かな?」
「さぁな」
俺は豊美さんとは話してないから、俺だって何も分からない。
「豊美、本気なのかな?」
「だろうな」
本気じゃなかったら、あんな表情しない。
「結婚って、どういう事なの?」
「生涯をそいつと一緒にいる、って事だな」
まぁ、離婚とかもあるが、結婚とはそれを前提としてする事だろう。
「豊美って、彼のこと好きなのかな?」
「知らん」
それこそ、豊美さんにしか知らないだろう。
「金城って人、いい人そうだったね」
「見たのか?」
「うん。学校案内してた時に」
「そうか。まぁ、悪い人ではなさそうだな」
雰囲気的に悪人って感じではなかった。
「ねぇ、竜ちゃん」
「なんだ?」
桜は、潤んだ瞳から怒気を発していた。
「豊美、隠し事してたよね?」
「してたな」
「無理してたよね?」
「あぁ」
「豊美の本心を聞きたい」
「そうか」
少しずつ、声を大きくして桜は言う。
もう、時間も時間だし。店内には俺と桜だけしか居ない。
「ね、竜ちゃん。勝手なお願いだって分かってるけど、豊美の本心を聞くのを手伝って!」
「なんで?」
手伝った所で何か変えれるのか?
「豊美を助けたいから」
「豊美さんは他人で他人の家庭事情だぞ?」
人様の事を自分の感情で動いていいのか?
「関係ない!」
「助けた所で無責任なだけかも知れんぞ?」
助けれても、豊美さんが家から追い出されたらどうするんだ?俺たちはただの高校生だ。なんの力も持ってない高校生だ。
「関係ない!!」
「なんで、それでも助けるんだ?」
わからない、何を考えてそう言ってるんだ?合理的に倫理的に考えて、助けるのはお門違いだろ。
「簡単だよ!友達で親友だから!桜は豊美が大好きだから!」
桜は涙を流してそう言った。
俺の逃げて、逃げて避けて遠ざかろうとする感情と違い、桜は追いかけて遭って近づこうする感情で。
俺とは全くの逆だ。
「……そうか。わかった」
なんだ、リアルでもかっこよく出来る奴も居るんだな。
他人だの、責任だの、関係ない。
好きだから、動くか。
俺はまだ、桜の行動に納得ができた訳じゃない。理解不能だ。
でも、分かりたいとは思った。
人を他人を想う気持ちを知りたいと思った。
想いで動く気持ちを理解したいと思った。
「わかった。手伝わせてくれ」
「うん!ありがとう竜ちゃん」
そうして、俺と桜は豊美さんの本心を聞くための行動を始めた。




