まさかの嫁!?
とりあえず、無視します。はい。
『おい!遅いぞ!まだ出てこんのか!』
無視してから約三十分後に怒涛のインターホン連打と怒声が開始されました。
「なんだよ!うるさいなぁ!」
「うるさいとは何だ。僕は先輩だぞ」
「先輩が休日に後輩の家に何の用ですか」
「話がある。ここでは伝えにくいことだ。ひとまず車に乗ってくれ」
やだと断ってやりたがったが、紗那さんは昨日の泉と同じような顔をしていた。
どうやら俺はこういう顔に弱いらしい。
「わかりましたよ。じゃあ、準備するんで少し待っていてください。あと、その話は俺だけじゃないとだめですか?」
「ああ」
俺は家に戻り家を出る準備をした。
「ねぇ、何だったの?」
泉がひょこっと部屋の外から顔を出して聞いてきた。
「よくわからんけど、何かとりあえず行ってくるわ」
「ふーん。ついていこうか?」
「いや、俺だけで大丈夫だから。泉は適当に帰っててくれ」
「うーん。いや、私は家の掃除とか晩御飯の準備とかしながらりゅー君が帰ってくるのを待ってるよ」
いや、まぁそれは母さんの仕事なんだけどね。
お前は嫁かっての。
「んじゃ、行ってくる」
「はいはーい。遅くならないようにね。行ってらっしゃーい」
玄関で手を振っている泉に見送られながら家を出た。
「よし、では行こうか」
以前に豊美さんと乗った時と同じ車に乗る。
運転手はもちろんお父さんなのだが。
「で、話ってのは何ですか?」
「うむ。それはだな。ひとまず、僕の家について話をする。詳しい話は家についてからだ」
そう言い紗那さんは話し出した。
「僕の家は知っての通り裕福だ。しかも、異常にな。普通ならそれ相応の学校に行きそれ相応の教育をされただろう。僕たちの母のように。母は昔から縛られた生活をしていたようだ。親に決められた学校に行き、大学を出た後は、親の会社の後を引き継がせるために、働いた。その時の母の教育係だったのが、父だ。最初は仕事だけの仲だったが、その内に二人は心が惹かれ合った。親には内緒で二人は交際があったらしい。なぜなら母は婚約相手がいたからだ。しかも、親に勝手に決められたな。いわゆる許嫁だ。そう、ただの一般人の父と母が結婚できるわけがなかったのだ。しかし、父はそれをやってのけた。父はないわゆる天賦の才を持っているのだよ。その才を使い、上に上りに上った。そして、交際を知られたころには反対できないほどまで父は上り詰めたのだよ。だから、父は母と結婚できた。しかしな、それは父の努力だ。母は喜んではいたが、親に婚約者を決められるという現実を受け止めていたから父がやってのけた事を異常な事だと思わなかったらしい。ただ、親が認めた婚約者が自分の好きな者だった、みたいな考え方をしてしまった。だから、母は親が婚約者を決めることを当たり前としてしまってる。それで、自分の歩んだ道を僕たちにも歩ませようとしている!意味がわかるか一上!」
……ん?何を言いたかったのかわからないのは俺だけか?
意味がわかるかと聞かれたけどまったく意味がわかりません!
「いや……結局何が言いたいんですか?」
「豊美の許婚が現れる!」
「は?」




