まさかの第四走者!?
二人に脅される様にお願いされた女子の行動は意外なものだった。
智也でも二年生徒会長のお願いでもない第三の選択肢。
二人から逃げる。
二人を先に行かせることはせずに、自分が前を走る。
確かに、これなら二人の命令を無視することはしない。
「ふぅ~ん。なるほどね」
「この状況でその行動を取るとは……。下級生なのに素晴らしい子だね。とても魅力的だ」
おい……お前ら自分のことどこまで過信してんだよ。
いや、確かに女子で二人のお願いを無視することは結構すごいかも知れんけど、それを自分で言うなよ。しばくぞ。
そして、二人はそのまま並んだ状態でゴールした。
「今日は引き分けだね。次は負けないよ砂川君」
「はい。僕も次は必ず勝ちに行きますから」
「ふっ、期待している」
そして、智也のバトンは泉に渡された。
「見ててね、りゅー君!そして、惚れてねりゅー君!」
「断る」
「ひどいよー!」
どこが酷いんだ至極まっとうな返しだろ。
俺は偽りの恋には興味ないんだよ。
泉の好きは家族の好きだろ?俺の事が異性として好きというなら聞いてやるよ。まぁ、一生ないがな。
「ふふふ……。森川さんが竜ちゃんにいい姿を見せることなんて、ないんだよっ!」
泉に指を指しそう発言したのは桜だ。
で、桜はなぜかバトンを待っているんだが……。
あいつも、ついにあそこまで馬鹿になったか。
「おい、桜!お前の番はまだだろ!早く戻ってこい!」
「ん?違うよ竜ちゃん」
「なにが違うんだよ」
「それは生徒会としてではなくて、クラスの代表として走るんだよっ」
……ん?何言ってんだあのバカは。
「桜はクラスの方でも代表選手として参加しているんです」
と、いつの間にか俺の横に立っていた豊美さんが言った。
「え、それっていいの?」
「ルール上は問題ないですが。まぁ、当たり前に考えてそんな事出来る人なんていませんからやってないんです。まぁ、それは一般の体力の話なので桜は問題ないらしいです」
お、おう……。別の意味で馬鹿だったわあいつ。
「で、でも時間内に戻ってこれるかな、あいつ」
「それも、問題ないかと。クラスの方で桜が走る距離はちょうど一人分だけですので」
つまり、1㎞ってことか。
「計4㎞走るとか化け物かよあいつ」
「まぁ、桜ですし」
それで、解決できちゃうところが凄い。
で、桜が1㎞と、泉が走る距離を考えたら、たぶん泉が残り約300m地点で桜が走り出すだろうな。
つまり、1㎞VS300mか。
泉のやつ勝てるか心配になってきた……。
「はぁはぁ、ごめんね桜ちゃん少し遅くなった」
「ううん。大丈夫だよ。じゃあ、いくよー!」
「絶対に逃げきってやるんだから!」
まさか、同じチームだと思って安心してた桜と泉がぶつかる事になるとはな……。
あ、次俺じゃん。うぅ、腹痛い……。逃げていいかな?




