まさかのリタイア!?
「うぅ……。あははは!いいよ。絶対に負けないから!」
桜が怒りを表しながら立ち上がった。
その姿を見た者は唾を飲み込んだ。
だって、近付いたら殺される雰囲気が出ているもん……。
怖いなー……。
絶対に近付きたくない……。今すぐに逃げたい。
「くっ。しぶといね。だけど私はまだまだ逃げ続けてあげるよ!豊美ちゃん!」
「えぇ、任せてください。皆さんこれを見てください!」
豊美さんは懐から札束を取り出した。
……札はもちろん万札です。
「ちょっと、席外しますね」
「すまん、古都乃。少し席を外すから、後は任せた」
「え、え?なに?」
桜には近寄りたくない?
まだスタート位置で準備体操しているなら安全だ。
今日の豊美さんは神だ!
「さぁ!いきますよ!皆さん拾ってくださーい!」
豊美さんは束を投げ捨てた。
その瞬間は俺も覚えてない。
一斉に生徒から観客まで大量に豊美さんが居た場所に集まった。
「あははっ!無駄だよ豊美。いっくよー!!」
刹那。桜が消えた。事実的に消えた。
またまたその瞬間、俺の前に居た人が空高く飛んだ。
いや、本当に飛んだんだよ?空高くに。
「ひぎゃー!」
「ぐひゃっ!」
「いってぇー!」
「ぎゃっ、うぅ~。あ、あ、アァァン!」
最後は知らんが、皆が苦しそうな声をあげる。
「駄目だったよ、豊美ちゃん!」
「くっ!どうしましょう?」
「……まかせ、て下さい。まずは……三人で協力しま、しょう」
「良いよ、あかりん。りゅー君の言う通りにしようと思うから!」
「はい!任せてください飯田さん」
素直に頷く、お二人さん。
すまんが頑張ってくれ、あっせあっせ。お金をゲット!
「飯田さん夫婦!桜を止めてください!1ヶ月分の食費──」
「ふんっ!」
「はっ!」
「ふぎゃっ!?」
急に二人が出てきて、桜が止まった。
えぇー!!桜を止められる人が居るだってぇ!?
さすが、桜の両親だな。
「ちょっと離してよお父さん、お母さん!」
「すまん、桜。お前の気持ちは分かるが、ここでリタイアしてくれ」
「ごめんね。代わりの物はちゃんと準備するから」
「なら、本気を出すよ!」
「すまん桜!はっ!」
「はうっ!」
桜が一撃で殺られた!
『悲しい事に板橋選手はリタイアしました。そして早く帰って来い、二人とも!』
「桜ー。頑張ったな。ほら行くぞ」
「うぅ。残念だよ~」
「ほら、肩に乗れ」
桜をおんぶして、本部に戻る。
「えへへ……。竜ちゃんにおんぶしてもらえたなら良かったかなぁ?」
一番の最有力候補の桜は今回はリタイアです。




