まさかの心情!?
私は……、私は…………りゅー君が、一上 竜の事が好きだ。大好きだ。
昔も、今も……そして、これからも。
いつもりゅー君の隣に居れたら良かった。
いつも私の横で笑っていてくれたら良かった。
勉強を教えてもらえる時間があれば良かった。
たまにで良い、りゅー君と食事を共にする事が出来れば良かった。
……なのに、なのに!
いつの間にか、私とりゅー君の周りに居る人が増えていた。
いつの間にか、りゅー君の隣には襠田 豊美が居て。
いつの間にか、りゅー君と共に笑い合ってる板橋 桜が居て。
りゅー君に教える側として、飯田 灯が居て。
食事の時は皆がいる。
りゅー君は妹に溺愛している。
だけど、妹だからと安心して行動していかなかった。
そして、いつの間にか……周りには沢山の人が居た。
見ていなかった物を久しぶりに見てみると、私の居場所には別の人が居た。
私の居場所が無くなってくる。
りゅー君が別の人と付き合う?
──嫌だ!
りゅー君と会えなくなる?
──嫌だ!!
りゅー君が私の事を見なくなる?
──嫌だ!!!
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
そんな事になったら、誰も許せれなくなる。
自分も、りゅー君も、板橋さんも、襠田さんも、飯田さんも、砂川君も、秋ちゃんも、誰も許さない。
それが怖かった。
自分が何をするのかが分からない。
でも自分を止める事は出来ない。
だから、私は焦っていた。
そして、私は同じ過ちを犯してしまった。
りゅー君への告白だ。
りゅー君に告白をするとは決めてなかった。
でも、板橋さんと肝試しに行った時、いつも通りに喧嘩した。
その時にりゅー君の話になった。
りゅー君の話をしている板橋さんは私と同じ様に笑顔だった。
板橋さんもりゅー君の事が好きなのだろう。
その事は、分かっていた。……分かっていたが目をそらしていた。
しかし、改めて自覚すると、大量の恐怖に襲われた。
怖かった。不安だった。
板橋さんがりゅー君に告白してりゅー君が了承したら私はどうなるのだろう。ちゃんと前を向けるのか。
分からない。
私はそのまま、不安だけを残し、一回目の肝試しを終えた。
みんなに何も悟られないように、いつも通りに振る舞った。
りゅー君にも、同じだ。
そして、二回目の肝試しになった。
りゅー君とだ。
私は普通を振る舞った。
でも、限界だった。
りゅー君と二人っきりなり、りゅー君の顔を見ていた時に不安が襲い掛かってきた。
そして、告白をしてしまった。
ほんの一部を言って、告白をやめたが、あれはもう告白だ。
時間は巻き戻らない。
した事はしたで確定してしまう。
私は逃げる様に話を切り上げたが、りゅー君はきっと色々な事を考えただろう。
寝る前も、帰りの車の中も元気は無かった。
見ていて簡単に分かるほど。
だが、きっと何も変わらないだろう。
ただ、私も、りゅー君も今を苦しめられるだけで。
答えは分かっている。
きっと、自分も好きだと言ってくれるだろう。
…………ただ、恋じゃないだけで。
泉は自室のベッドに転がっていた。
学習机から竜とのツーショット写真を取り出し、胸に埋めた。
「りゅー君、大好きだよ。……大好きだよ。りゅー君にも、この気持ちを知って欲しいよぉ」
瞳から流れる涙を拭こうとはせず、泉はそう呟いた。
誰も居ない自室で、誰も居ない家で。
泉は竜の写真を抱きながら泣き続けた。
彼を思い、彼に思われない、心臓を握り潰される様な痛みに耐えながら。
今まで彼に見せれなかった姿を表して。
彼女は眠りにつくまで泣き続けるのだった。
これは、海旅行から家に帰ってきてすぐの話。




