まさかの最終戦!?
「僕の仲間は全員倒されるし、石は投げられるし。そろそろ僕も……怒るよ?」
俺たちでも分かるほどに相手の気配が変わった。
これは………殺気?
「皆、ゆっくり下がって。桜の後ろに……」
桜が竹刀を構え、相手の男を睨み付ける。
皆は桜の指示に従って後ろに下がるが……
「豊美さん、他にも武器ってありますか?」
「あっはい。警棒、ナックル、木刀、弓、矢の先はありませんが、木の棒を射つことは出来ます」
持ってき過ぎだろ……。てか、どこにそれがある……。
「木刀を下さい。」
「………竜ちゃん?」
「はい、竜」
「ありがとうございます。大丈夫だ桜、安心しろ。秋の救出で皆ばっかりに任せられないだろ。だから今は俺も一緒に戦う。桜が勝てるかどうかって話だろ?だったら勝てるかも知れない曖昧だ、なら、俺が頑張って桜をサポートしたら勝てるって事だ」
「……うん。分かった」
桜が俺の言葉に頷いてくれた。
「ははっ、僕も甘く見られたなぁ。良いよ、二人でおいで。あと、一つ『逃がさない』って言ったのは全員だからね」
後ろで作戦を立てているのを聞きながら俺と桜は武器を構える。相手も身体を動かし構えをとる。
相手は武器を持っていないのか?
てか、この二人と俺では何と言うか……オーラ?が違う。
「あれ?何だろうあの構えは?」
相手の構えを見ながら桜が呟いた。
「ああ、僕のは我流だよ。」
うわっ、格好いい。
男が一度は言ってみたい台詞の上位『俺は○○流だ。』『○○流儀△△△!』みたいなやつ。
○○流が我流ならなお良し。
「竜ちゃん集中して」
「ああ。すまん」
俺はもう一度相手を見て集中し直す。
ジリジリと居心地が悪い空気が流れる。
そして男が動き出した……
「ぐっ……!」
はずが、いきなり男がよろめいた。
その瞬間に桜が竹刀を離し、相手に近づき、腹に飛び蹴りをし、倒れた男の顎を蹴りあげた。
男は白目で泡を吹いて倒れた。
……へ?
「大丈夫だった?」
男の奥を見てみるとパイプ椅子を持っている智也の姿が………。
「何してんの?」
こっちが冷や汗だらだら流している時にパイプ椅子を持って何をしてんの?
「皆が竜を助けに行ってるのに、僕には竜救出隊の迎えなが来なかったから、近所の人に車を出してもらって来たんだよ」
ああ、そういえば智也が居なかったな。
「だからって何でパイプ椅子?」
「いや、入ったら何故か一ヶ所だけ異様な空気の流れを感じたから行ってみたら今にも戦いが始まりそうだったから手助けにと思って近くにあったパイプ椅子でヒョイッと……」
智也が上から下に物を叩き落とすような仕草をする。
「多分、こっちに集中し過ぎて智也君に気が付かなかったんだね。助かったよ、ありがと」
手を払いながら桜がこっちに来る。
「まあ、確かに助かった。ありがとうな」
「うん。どういたしまして」
「でもな智也……。」
「うん?」
「いい場面を取るなー!!」
今から俺と桜が格好良く敵のボスを倒すところだったのに!




