まさかの智也への信頼度!?
「で、どっちに行けば良い?」
豊美さんのお父さんが俺の方を見て言う。
選択肢は2つある。その中から1つを選ばないといけない……。
その中から俺は………
「廃墟の方を行きます!秋からのメールで『助けて』とありましたが、ナンパならそんな事を言わなくても付いて行かなかったら良い話だけど、秋は連れていかれた………。誘拐まではいかなくても、そっちの可能性が高いと思います。」
「分かった。ホテルの方は家の奴を行かせとく。じゃあ、またとばすからな。」
車のスピードが一気に上がる。
飯田さんの予想場所を手伝ってくれている執事やメイドに送り、ホテルの方に向かってもらった。
廃墟の方は豊美さんのお父さんに位置を教え、一応豊美さんにも送っておいた。
こちらの選択は正しかったのか、間違いなのか……。
「あと3分で目的地に着く。何か支度があるなら今のうちにやっとけ!」
支度は要らない……。
俺はそっと心を落ち着け、息を吐いた。
「りゅー君、今言うのは何だけど、あの時はありがとね。じゃあ、頑張って秋ちゃんを救うよ。」
あの時………?
「ああ。」
「止まるぞ!何かに掴まれ!」
豊美さんのお父さんの声で俺と泉は互いに支え合う。
ブレーキを勢いよく踏み、車が大きな音を出しながら止まった。
車がちゃんと止まったのを確認して
「行くぞ」
「…うん」
俺と泉は車を降りた。
そこの建物は、周りに何もなく、薄暗い場所にひっそりと建っていた。
ガラスは割れていたが、隠れたりするには十分だろう。
てか、あれ?
「何で皆がここに居るの?」
何故かそこには学校の友達が数人いた。
「いや、智也くんからここら辺に出来るだけ人を寄せ付けないでって言われて……。」
「うん。俺たちも」
どうやら近くに居た友達を事情を言わないで見張りを頼んでいたようだ。
あんまり理由も分からないのに皆が動いてくれるのは智也の人柄の良さのおかげだろう。
さすがモテ猿君だ。
「砂川に一上が来たら後は任せて良いって言われたから俺たちは帰るな」
あんまり皆を危ない目に会わせたく無かったから、この指示は助かる。親友はいつも俺の気持ちを分かってくれるな。
「ああ。ありがとな」
「じゃ!バイバイ!」
5人ほど居たメンバーが帰って行く。
皆の背が見えなくなるのを確認して俺と泉は廃墟を見る。
「すまんが俺はここで豊美たちの到着を待っとくから付いて行けん。もし、何かがあったら大きい声で叫べよ」
豊美さんのお父さんが運転席から顔を出し言う。
「はい。分かりました」
俺は頷き、廃墟の前に行く。
秋がここに居ますように。と願い、扉に手を伸ばして開ける。
「行くぞ泉。」
「うん。」
女子の泉を連れてきて大丈夫なのかと思ったが、その判断は泉に任せることにした。着いてきてくれて嬉しいし……。
土足で床を踏み、中を探索する。
この部屋には居ない。ここの部屋にも……。
「りゅ、りゅー君」
泉が声を抑えながら俺を呼んだ。
「どうした……?」
「あそこの部屋から声が聞こえる。」
泉が指したのは少し離れた部屋だった。
俺は足音をたてないように近づき、全感覚を耳に集中させる。
『すぅ~、すぅ~』
これは呼吸音?
俺は気付かないようにゆっくり扉を開く。
「……!」
そこには手足を縛られ、布で声が出しにくくされた秋の姿があった。
「秋!」
「秋ちゃん!」
俺と泉は同じタイミングで叫び、秋の元に走る。
秋の目がゆっくりと開かれる。
「お、おひぃいひゃん?」
布のせいでうまく喋れなさそうだ。
俺は急いで布を外し、秋の身体を見る。
ゆっくりと近付いてくる足音にも気付かないぐらい焦っていた。
「秋ちゃん、大丈夫?」
「いじゅみしゃんも……。」
口が乾いているせいか、恐怖や不安のせいなのか、布を外した今でも舌がうまく回っていない。
「あれ?お前らは誰だ?何でそこ居る?」
誰かが扉の所で首を傾げながら見ていた。
「「「……!」」」
俺は瞬間的に秋を抱っこにて逃げようと思ったが、唯一の逃げ場所に敵がいる。
そいつは目をギラ付かせて俺たちを見ている。
恐怖のせいで声も出てくれない。
……………………。




