まさかの観覧車の中で!?
「ねえりゅー君」
「うん?」
俺たちは観覧車に乗り、少し気まずく黙っていたが、しばらくすると泉から話しかけて来た。
「何か久しぶりだね」
「何がだよ。」
俺たちは別に今日久しぶりに会った訳でもないし、昔二人で観覧車に乗った訳でもない。
「えーと、こうやって二人で話すことが、かな?」
「登校中とかで二人だろ」
「あはは、でも何か久しぶり」
よく分からん。
泉は外の景色を見ながら微笑んでいる。
「まあ、泉が久しぶりだと思ったら久しぶりだろうな」
「えへへ、何がか分からないけどね」
「まぁな。」
たしかに高校に入ってから泉と二人だけで話すことは少なくなったしな。
登校中も桜や豊美さんとよく会って話ながら登校するし。
「なあ、また今度二人でどっか行くか?」
泉と二人で出掛けたのは学年生徒会に入る少し前の時の事だったと思う。
しかし、最後には色々あって、素直に楽しめたかと言うと、そうではない。
だから、たまには泉とどっかに行きたい気もする。
「いいの?」
「ああ、別に良いぞ。何処か行きたい所はあんのか?」
「うーんと、動物園とか、水族館、映画と…お買い物!」
「多いな…。」
何回も遊ばないと駄目になるぞ。
しかし、泉の嬉しそうな顔を見ると、それでも良いかもなと思えてしまう。
「もうすぐで一番上に着くよ」
俺も外を見てみると確かにそろそろで一番高い所に着く。
「天に昇ったな」
「そうだね。ねえ、隣に座っていい?」
俺の目の前に座っていた泉が聞いてきた。
「良いけど、何で?」
「むー、そう言うの女の子に言わせない!」
そ、そうなのか?
「まあ、写真を撮りたいから、かな?」
「ツーショット写真を、か?」
うわ、言ってて恥ずかしい
「うん。チューショットでも良いけどね」
「うん?チューショット?」
何だそれ?
「良いから、はいいくよー」
いつの間にか立っていた泉が俺の横に座る
「ちょい待て。ち、近い。」
「写真に入らないから我慢、我慢。」
我慢我慢…って少し泉に失礼な気がする。
俺は笑い、ピースする
「はい、チュウ」
その瞬間、泉が携帯のシャッターボタンを押すタイミングと同じタイミングで頬にキスをしてきた。
そのキスはこの前のナンパの後のキスの一瞬とは違い、ゆっくりと味わうようにじっくりと数秒かけてキスしていた。
泉の唇の柔らかさが伝わって来るほどに…。
俺はいきなり過ぎて何も出来なかった。
「へ?」
「これがチューショットだよ」
泉が小悪魔的な笑顔を見せて俺の前の席に戻る
「うん。上手に撮れてる」
携帯の写真を見ながら言う。
しかし、顔が赤い。
「お、おい泉…。何だったんだ?あれ…。」
「これの事?」
泉がさっき撮った写真を見せながら言う。
「ちょ、消せ、いや消してくれ!」
「嫌だよー」
俺は手を泉に伸ばすが、避けられる。
これ以上何を言っても意味が無いと分かっているので軽く息を吐く。
「まあ、何でも良いけど、あんまり人に見せるなよ」
「えー」
「えーじゃない。」
「はーい。分かりました」
本当に分かっているのかな?
「ねえ、二人で行きたいところが決まったら言うね」
「うん?ああ、わかった」
俺は軽くうなずく。
それを聞いた泉は微笑み、外の景色を眺める。
「綺麗だね」
「だな。」
泉の顔を見てみるとまだ顔が赤かった。
それを見た俺も少し赤くなってしまい、外の景色を見る。
そこからも少し喋りながら観覧車の中では少しずつ時間が進む。
約15分の時間だったが、俺には…いや、俺たちには短くて、逆に長く感じられた。




