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わたしと運勢の管理人(改)  作者: 椎名忍・四谷伊織
_妖狐
12/15

妖2

 翌朝、白い姿はヒビの入った鏡の前に立っていた。


 「僕の予想が外れてなければヒットするだろうね」


ここ最近の運の動きに共通点を見つけたらしい。


・突然不運に見舞われる事。

・依頼人の周囲に運を吸収する人間や物が無い事。

・依頼人達の生活圏が全員近い事。


 以上の事は三木谷洋子も該当しており、かつて彼女の物だったこれに聞いてみようと、少年は言い出したのだった。


 「鏡ってすごいね…」

 「まあ、この子だからこそ出来るんだけどね。一般的な鏡じゃあ…難しいだろうね」


 朝食後の片付けを終えた助手は洗濯機の音を聞きながらその様子を見守る。


 「ツチ、前に衣羽から食べた"力の痕"残ってる?」

 ((あ? んー、多分…ある))


 少しの間を置いてミキの手の平から、青い米粒程の破片が飛び出た。


 「”消化”早いね。さほど強い力じゃあないのはわかってたけど…」

 ((ふんっ、よっぽど弱いヤツなんだろ))

 「…まあ、だといいんだけどね。」 


 ニヤリと笑う彼の姿が鏡に映る。

そうして米粒を表面にあてがうと、いつもの橙色の光が漏れ出した。


 衣羽はこの一週間で、彼のチカラについて多少知識をつけた。

時刻によってチカラの強さが変化するようだが、基本的にはミキ一人で十分で、弱体化する時間や難しい術の使用時にツチの力を上乗せするらしい。


 現在、白蛇が力を貸している様子も無ければ、スケッチブックに術式すら描いていない。


 (今回のは簡単なのかな? )

 ((いや、あの鏡の力があるから必要ねーんだよ))


 独り言ならぬ”独り心の声”のつもりがツチの耳には届いたらしく、答えをくれた。


 (……なるほど)


 気づけば橙色は少年と鏡を包んでいた。 深く息を吸い込むと、詠唱が始まる。


 「朦朧もうろうたる事象、鏡面に写りしまこと、我に告知せよ」


 青い粒は鏡に溶けるように消える。その表面がゆらゆらと波打ち出すとミキはおでこを付けた。

まるで、何かを聞いているようだった。部屋には澄んだ空気と静寂が流れる。


 僅かな音さえも許されないような雰囲気に、衣羽は自然と呼吸が浅くなった。


 「……きつね…」


 彼がそう呟いたと同時だった。


表面のヒビがみるみる全体に広がり出す。

全てを覆い、鏡としての機能を完全に失ったのは、ミキが自身の力を収束させた時だった。


 「力を使い果たした…って感じだな」

 「…うん。そうだね。もしかしたらコレを教える為に残っていたのかもね」

 「よっぽど自分の"主"が大事だったんだな」


 ”生気を感じられない”とわかったのは、残った今の姿を目の当たりにしてからだった。

それまでは”生きていた”事を今更ながら衣羽は実感した。


 「洋子さんに被害がなければ、よろずの神が宿ってもおかしくはなかっただろうね」

 「丁寧に弔ってやらないとな」

 「うん。そうだね」


 そうして、どうやら一段落したらしいミキがソファへと腰掛けた。


 「ねえ、衣羽。昨日、"狐"を見た? 」

 「……狐…? 」


 むしろ今まで見たこともない。施設のあった山奥にも狐は出なかった。

 

 「………あっ…」


しかし、ふと思い当たるものがあった。


 「あのあかい神社…! 」


その単語にミキの瞳も興味を持った。


 「稲荷神社だったかも…」


 鉄骨の中で見たあか

鳥居に掲げられていた文字の記憶を呼び起こす。


 「…あか…そっか。そこだ。そこだよ、きっと。」


 実際、彼の頭に流れてきたのは朱色に包まれた狐だったそうだ。

 答えが見え始めた事に表情を明るくした。


 「うん。よし。行こう、そこに」


 いつものパーカーを握り締めた少年はそう言って立ち上がった。





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